企業戦士 外伝 秘書室 ―中田翔子― 第7話 文官の矜持
今回から外伝として、中田翔子編を始めます。
本編ではすでに“象徴”として語られることの多い中田さんですが、彼女がどのように秘書室を作り、東都を支えていたのかを書いていきます。
企業戦士の戦いには、前線で戦う武官だけでなく、情報を読み、人を動かし、会社を守る文官もいる。
そんな裏側の企業戦争を楽しんでいただければ嬉しいです。
企業戦士 外伝
秘書室 ―中田翔子―
第7話 文官の矜持
東都建設本社。
夜。
社員はほとんど帰宅していた。
最上階。
秘書室だけに明かりが灯っている。
中田翔子。
一人。
資料を整理していた。
コンコン。
静かなノック。
「どうぞ。」
扉が開く。
立っていたのは。
白いスーツ。
白いネクタイ。
白い革靴。
白鷹。
二人は。
初めて向かい合った。
白鷹。
笑う。
「初めまして。」
中田。
「いいえ。」
「やっと会えましたね。」
白鷹は椅子へ腰掛ける。
まるで来客のように。
中田はコーヒーを二つ淹れた。
白鷹。
少し驚く。
「毒は?」
中田。
笑う。
「文官は毒なんて使いません。」
白鷹。
「安心しました。」
静かな時間。
沈黙。
先に口を開いたのは白鷹だった。
「主任は守ったそうですね。」
中田。
「守るのが仕事です。」
「彼は裏切ったんじゃない。」
「追い詰められただけ。」
白鷹。
肩をすくめる。
「甘い。」
「会社は利益で動く。」
中田。
首を横に振る。
「人がいるから利益が生まれる。」
白鷹。
「利益があるから人がいる。」
二人。
真逆だった。
白鷹。
静かに立ち上がる。
「あなたとは考え方が違う。」
中田。
「ええ。」
「だから負けません。」
白鷹。
笑う。
「勝敗は株価が決めます。」
中田。
「違います。」
「最後に笑う社員が決めます。」
一瞬。
白鷹の笑みが消えた。
その時だった。
秘書室の電話が鳴る。
鳩山。
『室長!』
『例の主任ですが……』
『会社を辞めずに済みました!』
『娘さんの手術も会社の制度で対応できるそうです!』
中田。
微笑む。
「そう。」
「よかった。」
電話を切る。
白鷹。
静かに見ていた。
「会社が救った。」
中田。
「違います。」
「会社のみんなが救った。」
白鷹。
窓の外を見る。
東京の夜景。
「……羨ましい。」
中田。
「え?」
白鷹。
すぐ笑顔に戻る。
「何でもありません。」
名刺を机に置く。
今度は。
肩書きが書かれていた。
企業戦略顧問 白鷹
中田。
受け取る。
「ようやく本当の名刺ですね。」
白鷹。
「次に会う時は。」
「敵として。」
中田。
頷く。
「望むところです。」
白鷹は静かに部屋を出て行く。
扉が閉まる。
鳩山が飛び込んできた。
「室長!」
「今の人……。」
中田。
名刺を見つめる。
「白鷹。」
鳩山。
「捕まえなくてよかったんですか?」
中田。
静かに首を振る。
「証拠がないもの。」
「それに。」
「今日は戦いに来たんじゃない。」
鳩山。
「じゃあ何を?」
中田。
少し笑う。
「顔を見に来たのよ。」
「互いに。」
「どんな相手なのか。」
鳩山。
まだ理解できない。
だが。
中田には分かっていた。
これから始まるのは。
殴り合いではない。
企業と企業。
文官と文官。
信頼と策略。
その全てを懸けた。
本当の企業戦争だった。
中田翔子編、開幕です。
今回は秘書室の誕生と、白鷹との出会いまでの流れでした。
本編では名前だけでも重みのある中田さんですが、外伝では彼女の有能さや優しさ、そして東都に残したものを少しずつ描いていく予定です。
鳩山や時任明との関係も、本編につながる形で入れていきたいと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。




