企業戦士 外伝 秘書室 ―中田翔子― 第6話 裏切り者
今回から外伝として、中田翔子編を始めます。
本編ではすでに“象徴”として語られることの多い中田さんですが、彼女がどのように秘書室を作り、東都を支えていたのかを書いていきます。
企業戦士の戦いには、前線で戦う武官だけでなく、情報を読み、人を動かし、会社を守る文官もいる。
そんな裏側の企業戦争を楽しんでいただければ嬉しいです。
東都建設。
秘書室。
朝。
中田翔子の机の上。
一枚の書類が置かれていた。
社外秘。
来週行われる大型買収案件。
閲覧権限。
社長。
秘書室。
経営企画部長。
以上。
中田。
静かに資料を閉じる。
「おかしい。」
事務員。
「何がですか?」
中田。
「昨日。」
「この資料の存在を知っていたのは六人。」
「なのに。」
一枚の新聞を置く。
見出し。
『東都建設、大型買収へ』
事務員。
顔色が変わる。
「情報漏洩……。」
中田。
頷く。
「社内にいる。」
「白鷹は中ではなく。」
「中にいる誰かを使っている。」
その日の午後。
役員会。
重苦しい空気。
役員。
「誰が漏らした!」
「秘書室じゃないのか!」
「情報管理はどうなってる!」
中田は黙って聞いていた。
そして。
静かに立ち上がる。
「一週間ください。」
役員。
「根拠は?」
「裏切り者を見つけます。」
鷹名。
一言だけ。
「任せる。」
翌日。
秘書室。
鳩山。
「どうやって探すんです?」
中田。
笑う。
「探さない。」
鳩山。
「え?」
中田。
「見つけてもらう。」
数日後。
秘書室から。
極秘資料が三通発送される。
内容は全て違う。
A案。
B案。
C案。
それぞれ。
閲覧者も違う。
鳩山。
「偽物の資料?」
中田。
頷く。
「情報には目印を付けるの。」
「どれが漏れるかで。」
「誰が漏らしたか分かる。」
三日後。
新聞。
『東都建設、海外企業との提携へ』
中田。
新聞を閉じる。
「B。」
鳩山。
すぐ資料を確認する。
B案を見た人物。
一人。
経営企画部主任。
鳩山。
「この人です!」
中田。
首を横に振る。
「まだ。」
「漏らした人と。」
「裏切り者は違う。」
鳩山。
困惑する。
「どういうことです?」
中田。
「脅されたかもしれない。」
「騙されたかもしれない。」
「家族を人質に取られたかもしれない。」
「決めつけちゃ駄目。」
鳩山。
黙る。
その夜。
中田は一人で主任と会う。
主任は震えていた。
「……すみません。」
「娘の手術費が必要だったんです。」
「ある男が。」
「情報一つで払ってくれると。」
中田。
怒らなかった。
ただ。
静かに聞いた。
「名前は?」
主任。
小さく答える。
「李。」
中田。
目を閉じる。
「やっぱり。」
その頃。
高層ビル。
白鷹。
李から報告を受ける。
「主任は落ちました。」
白鷹。
首を横に振る。
「違う。」
「落ちたのは君だ。」
李。
「え?」
白鷹。
笑う。
「中田翔子は。」
「情報を追わない。」
「人を見る。」
「君は。」
「見られた。」
李。
顔色が変わる。
その瞬間。
携帯が鳴る。
着信。
知らない番号。
出る。
「もしもし。」
中田だった。
「こんばんは。」
李。
黙る。
中田。
穏やかに話す。
「次は。」
「あなたとお話ししましょう。」
電話が切れる。
李。
初めて汗を流す。
白鷹。
窓の外を見ながら笑う。
「面白い。」
「ようやく。」
「私のところまで来たか。」
東都建設。
秘書室。
中田は静かにコーヒーを飲む。
鳩山。
「室長。」
「怖くないんですか?」
中田。
微笑む。
「怖いわ。」
「でも。」
「会社を守るって。」
「そういうことだから。」
その言葉に。
鳩山は何も返せなかった。
文官同士の戦い。
ついに。
白鷹と中田翔子。
直接対決の幕が上がろうとしていた。
中田翔子編、開幕です。
今回は秘書室の誕生と、白鷹との出会いまでの流れでした。
本編では名前だけでも重みのある中田さんですが、外伝では彼女の有能さや優しさ、そして東都に残したものを少しずつ描いていく予定です。
鳩山や時任明との関係も、本編につながる形で入れていきたいと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。




