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もう一度魔王様に会いたい  作者: んまい棒
第一章
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第23話

 嫉妬心を隠そうともしないルナリアだが、練習することには変わらないようで所定の位置に駆けていった。フランツの手を引いてだが。


「それで、私は何をすればよろしいのでしょうか?」

「ルナリアが先ほど見せていた防御の魔法を使うので、それに向かって魔法を当て続けてください。強さは徐々にお願いしますね」


 私とルナリアの距離はおよそ5m程度といったところだろうか。魔法の練習としてもやや近い気がするが、この練武場で他の人の事も考えるとこのくらいがせいぜいなのかもしれない。


「すぅ、はぁー。行きます。≪プロテクション≫!」


 一呼吸置いてルナリアが使ったのは先ほど練習していた魔法。見るのは二度目だが、この魔法の美しさには目を見張るものがある。


「では、始めます……『射貫け』」


 使ったのは試験の的当てでも使った初歩的な魔法だ。鋭く形どった氷塊をただまっすぐ飛ばすだけ。およそ2位程度の魔法だが、貫通力という面では悪くない程度の威力だ。


 しかし、飛ばした氷塊はルナリアのガラスに触れるとキンッと甲高い音を発して地面に落ちてしまった。しかし、この程度は予想の範疇だ。2位程度の魔法で絶対防御の魔法が崩れては魔族どころか魔族領の獣にも勝てない。

 その後も何度か同じ魔法をぶつけてみたが、魔法が揺らぐ様子はない。


「では、次。『矢の如く』」


 先ほどの氷塊を矢の形にして飛ばす魔法。たったそれだけで貫通力と速度が上がる。

 同様に何発か当ててみるが、それでもルナリアの魔法が揺らぐことはない。


「……フランツ様と練習したときは5位階まで防げました。あまり手加減しすぎても魔力の浪費にしかなりませんよ」

「そうでしたか。それでは、相応の魔法から使わせていただきますね」


 魔法は1~10位までの段階で分けられており、一般的に学校を卒業した時点で6位まで使えれば優秀とされる。どうやらフランツは学生の時点で(何歳か知らないが)5位階も使えるという事は将来有望ということだろう。


「『剣轟』」

「……え?!」


 作り出したのは5m程の巨大な剣。私とルナリアの間合いを無いものにしてしまうほどの大きな剣を小枝でも振るうかの速度で振り落とす。普通ならこんな巨大な塊は動かすだけでも無理なのだが、込めた魔力と技量があればそんな物理的法則をある程度無視できるのが魔法の良い所だ。

 魔法の難度で言えば3位程度だが、圧倒的質量と速度から繰り出される威力は5位階にも匹敵する程。


「え?! ちょっと、≪プ、プロテクション≫!」


 あまりの大きさと速度に驚いたのか、ルナリアは魔法を貼りなおした。

 剣とガラス面が接触し、破裂音にも似た甲高い音が練武場に鳴り響く。ルナリアは目を見開いて防御が壊れないように魔力を込め続けている。

 しかし、数秒の後にパキッという音と共に美しいガラス面が崩れた。


「きゃあああああああああ!」


 防御が崩れ、巨大な剣がルナリアに向かって襲い掛かるが、当たる前に魔法を解除する。


「解除しましたよ、ルナリアさん。少し強すぎたようですね、申し訳ありません」


 恐怖からかへたり込んでしまい、肩を揺らして呼吸をするルナリアに聞こえているか分からないが、謝罪をしておく。流石に耐久力を見る程度の練習で怪我をさせてはいけないと分かっているので、砕けそうになった時点で解除するつもりだったが、思ったよりもルナリアの防御魔法が耐えたので一瞬だけ遅れてしまった。

 少し遠くから見ていたフランツも驚きからか目を見開いて固まってしまっている。


「……大丈夫ですか?」

「ひっ?! あ、あ、大丈夫……です」


 起こすために近寄り手を伸ばしたが、どうやらやりすぎて怖がられてしまったようだ。一応手は取ってくれたので起こす。


「すみません、やりすぎてしまいました。5位まで防いだと言っていたのでこのくらいならと思ったのですが」

「フランツ様の5位階魔法を防いだのは嘘じゃありません! 嘘じゃ、ないんです……」


 防げなかったことに落ち込んでしまった様子で俯くルナリア。


「フィオラ嬢、覚えておいてほしいのですが、魔法の位階とは威力を指し示す尺度になってはいますが、単純に威力だけを見て定められている物ではないのです。魔法の複雑さや要求魔力量等も考慮して定められています」


 衝撃から戻ってきたらしいフランツがこちらに寄って説明してくれる。


「フィオラ嬢は先ほどの魔法をどの程度だと思って使用しましたか?」

「えぇと、威力だけなら5位階くらいになるかと思い使いましたが……」

「そうですね。位階を定めるのであれば5位階相当だと思います。しかし、気を付けていただきたいのは氷や土属性の質量を生み出す魔法の威力は使いようによってはそれ以上になることが往々にしてあります。確かに魔法の構造事態は単純そうでしたので威力と差し引き4,5位階程度になると思いますが、純粋に威力だけ見るのであれば6位階であってもおかしくありません」

「そうだったのですね。すみませんでしたルナリアさん。私の認識が甘かったようですわ」

「……いえ、大丈夫です。練習にお付き合いいただきありがとうございました」


 残念ながら練習を続けられる状態ではないだろう。恐らくそれなりに自信のあったであろう魔法をあっさりと崩されたのだ。

 それに辺りをちらりと見ると、他にもいた生徒たちは手を止めてこちらを見ていた。その視線にどんな感情が込められているのかは分からないが、恐らく褒められるものではないだろう。


「それでは、またお会いしましょう。魔王討伐、応援しておりますね」


 別れの挨拶も端的に終わらせ速足に練武場を去る。少しの時間ではあったが、聖女の現状を知ることはできた。

 あの程度では全く話にならない。5位階を防いだというなら若い魔族位なら善戦できるかもしれないが、それ以上はない。圧倒的に練度が足らない。時間もないというのにあの程度では、この先が心配でしかない。


「勇者は軽薄、聖女もあの程度。時間もあまりない。本当に魔王様を討伐する気があるんだか疑問になるな……」


 それでも、彼らには魔王様の元まで行ってもらわなければ行けないのだ。私がもう一度会うために……。

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