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もう一度魔王様に会いたい  作者: んまい棒
第一章
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第24話

 ルナリアとは練武場の一件以降出会えていない。何度か時間の隙を見て練武場を覗きに行ってみたりもしたが、フランツの姿も見ていない。練武場はここだけだが、別に魔法の練習ならここでなくともできるし、それ自体は不思議ではない。一番気になるのは他の魔法が使えるのかどうかだが、出会えなければ聞くこともできない。一応他の同級生にも聞いてみたのだが、誰も情報を持っていなかった。

 今日もお昼を済ませる前に一度覗いてみたが空振りに終わった。


 お昼を済ませた午後一番の授業の時間が迫ってきているので、いつもの席に座って時間が過ぎるのを待っている。相変わらず日差しは強いが、空調の効いた教室内は快適そのもので膨れたお腹も相まって少しまどろみを感じていた。


「今日も練武場に行ってたのか?」


 今日も、と言われる程足繁く通っていたわけではないが、そういわれても仕方ないとは思うくらいには練武場を覗きに行っている。そして、ため口で話しかけてきたのはエプシュロン公爵家の御曹司、ヘルマンだ。


「まぁ、否定はしませんわ」

「そうかい。毎日練習をするわけでもなく練武場に向かう理由位そろそろ教えてくれてもいいんじゃないのかい?」

「別に、なんとなくですわ」

「ふぅ、そうかい」


 肩を竦めてわざとらしく溜息を吐き出す。ヘルマンとは同じ中途で入学したのでクラスも同じなので会話をすること自体はおかしなことではないが、何故かこの男は私に話しかけてくる。変にちょっかいをかけてくるわけでもないし、相手は公爵家なので下手な態度を取れずに曖昧なまま居たら、気付けば当たり前のように隣に座ってくるくらいには距離を詰められている。


「所で、ようやく今日から実技の授業があるんだが、俺と手合わせ願えないだろうか」

「私とですか? 私よりももっと適した方がいると思いますよ。それに、何度もいいますけれど、風属性の魔法は練習してないので実質ただの氷魔法使いですよ」

「それでも構わないよ。俺は君と手合わせをしたい。実力や相性を抜きにしても、君がいいんだ」

「……はぁ」


 できるだけ小さくため息を吐く。まぁ、隣に座っているので恐らく聞こえているだろうが、この程度ではもはや何も反応はない。むしろそのため息を同意と捉えたのか、納得したように前を向きなおした。

 このヘルマンとかいう貴族坊は、何故か私にまとわりついてくる。他にも同級生はいるし、魔法の実力で言えば他の生徒の方が多彩で面白いと思うのだが、それでも私の方に興味があるらしい。なんとなくだが、勇者のブルーノと同じような空気を感じる。或いはそう見えるようにしているだけなのかもしれないが、答えは私にはわからない。


「そろそろ時間だ。全員席に着くように」


 試験監督官、もといこのクラス担当のノルデンが教室に入ってきた。

 ほかの生徒には不評みたいだが、私はこれから始まる魔法基礎理論という授業は好きだ。何故なら人間と魔族の魔法に対する理解度や理論には大きな違いがあり、人間は魔族には考えもつかない使い方をする事が多々ある。


 魔族にとって魔法とは本能的に備わっている物なので、手足を動かすようなものなので鍛えはしても何故そういう風になるかなどは考えもしない。理論的に考える必要もなく強大な魔法を使えるようになるからだ。稀に魔力はあるが大した魔法が使えないという魔族もいる。大鎌の男もそうだった。

 それに対して人間は根本から考えるのが常なようで、難しい魔法を誰でも使えるようにと解析し、理論立てて来た歴史がある。まぁ、その発想を開発したのは憎き初代賢者らしいのだが。


 魔力の認識から既に違う。魔族にとって魔力は血のように流れる自然なものだが、人間は魂から漏れ出す超生物的な力だと考えており、その通説が一般的だ。女神が授けてくれた超常的なものだと本気で考えているらしい。

 魔族は他者の魔力を感じ取ることができるが、人間は鍛えても自分の魔力しか感じ取れない。だから魔族は他者の魔法を見て感じておおよそのマネをすることができるが、人間は理論的に解析して模倣する。それが積み重なり、今では条件さえ満たせれば誰でもある程度の魔法を使いこなせるようになった。その歴史の最たるものが『詠唱』と『杖』いうわけだが。


 魔法理論の基礎として、魔法は魔力を込めれば魔法になるのではなく、脳内で作り出した設計図を元に魔力が構築されて魔法となるという物である。つまり、簡単に言えば人間は魔力を操っているのではなく魔法を使うという意思に誘発されて魔力が操られているという事だ。そうでなければ魔力を感じ取れない子供が魔法を使うのはおかしいという。

 魔法の設計図は簡単な物であればなんとなくで成り立つ。しかし、位階があがったり複雑になればそういうわけにもいかず、数値やら配列やらを学ばなければ魔法として発動することもできない。だから人間は理論を学び、魔力を鍛えるのだ。稀に魔力に物を言わせて発動する輩もいるそうだが、感覚で行っているので再現性はないそうだ。

 私としてはそれが普通なので全てを理論立てている人間の方が恐ろしい。まさかたかが≪火球≫も理論立てて効率を求めた実験も行われていたというではないか。人間の執念といえばよいのか分からないが、そこも含めて恐ろしい。


 というわけで、私にとっては新鮮で面白い授業というわけだ。ただ、授業の名前通り基礎的な理論ばかりなので他の人間にとってはつまらないものなのだろう。私も試験の為に勉強したとはいえ、深く考えていたわけではないので授業でじっくり説明を受けるとまた新たな気づきが得られて面白い。


「と、このように理論上は破綻していたとしても低位階の魔法であればその人のイメージによっては成り立ってしまったという結果もあった。これはイメージさえ出来ていれば理論的に考える必要はないというわけではない。位階が上がれば上がる程より強固なイメージと理論が大事であったという実験の足掛けとなったが、最近ではそのイメージだけで成り立つという部分ばかりが風潮されてしまい勘違いしている若者が増えてきている。そんなことに惑わされずしっかりと理論を学ぶことが魔法を使う上で大事な事である。寝るなそこ」


 ノルデンが寝ている生徒を即席の土人形で起こす。体は貧弱で生徒を起こしたらすぐさま瓦解してしまったが、その程度でも≪像≫を作り出すのはそれなりに時間が必要にもかかわらず一瞬で作ってしまっていた。それだけ実力が備わっているという証明にもなる。

「本日の授業はここまでだ。次は実技の為、練武場に集合するように。君らにとっては最初の授業で楽しみかもしれないが、調子に乗って怪我をすることがないように気を付ける事。以上、解散」


 ほとんどの生徒は寝ていなかったが、それでも退屈だったのか思いっきり体を伸ばしたり欠伸をしている生徒もいたが、皆ようやく魔法の実技ということで早々に着替えに行ってしまった。それだけ楽しみだったのだろうか。

 とはいえ、私としては同期の実力を知れるいい機会なのでそういう意味でも楽しみではある。どこかのしつこく付きまとってくる男の実力も、まぁ気にならないわけでもないし、でかい態度に見合う実力であることを願うのみだ。

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