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もう一度魔王様に会いたい  作者: んまい棒
第一章
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第18話「魔法試験」

 筆記試験を終えて休息を終えて今は魔法実技試験の会場。巨大な校舎内を歩いて、開けた場所に案内された。校舎から出た記憶はないが、まるで別の建物かと思うくらい広い。

 筆記試験を受けていたのは全体で40人近くいたはずだが、何人かいなくなっている。


「揃っているだろうか。これから魔法試験を始める。魔法学科以外の希望者は、隣の会場で試験を行う。移動してくれ」


 移動したのは10人にも満たない人数。つまり、残ったのは魔法学科希望者のみという事だ。中途で受ける以上、それなりに実力には覚えがある者ばかりだろうが、この中から受かるのは数人。それほどまでに厳しい基準なのだろう。


「それでは、試験の説明だ。属性により多少異なるが、採点基準は魔力のコントロール、総量、持続時間、一度の魔法に込められる質。それから、こちらから指定する魔法の再現性、威力、影響範囲等々だ。こちらの指示に従って動いてもらうので、集中して行うように。最大限の実力を発揮してくれ」

「「「はい!」」」

「よい返事だ。それでは、まずは申告属性と相違ないか確認する。こちらで用意した水晶に手を当てて、魔力を込めてくれ」


 用意された水晶は透明なガラス玉だった。他の人が行う事を見ていたが、手に当てて魔力を込めると透明だった水晶に色がつく。火なら赤、水なら青、風なら緑、土なら黄色。たまに派生属性を持った人もいるようで、見慣れない色を発している人もいる。


 派生属性はそこそこ珍しいようで、その色が出るたびに少しだけ受験者達がざわつく。

 だが、これまで一色にしか光らなかった水晶を二色に光らせた人が現れ、会場がひときわざわついた。


「おい、あれって複属性持ちか? 初めて見た」

「色的に、水と火だな。あいつは合格できるだろうな」


 水晶を二色に光らせた男性は、大したことはないと言わんばかりの表情で手放す。聞き耳を立てると、どうやら複属性は珍しく、1万人に1人いるかどうかで、魔力量も常人より相当多いらしい。

 試験監督者がヘルマンと呼んでいただろか。翡翠のような綺麗な緑色の髪で、同年代よりも大人びて見える。この後に見られる魔法が楽しみだ。


「静かにしたまえ。次、フィオラ・ルーデン」

「あ、はい」


 試験官に呼ばれた。前に出て、水晶に手を伸ばす。私の場合は氷属性。色は恐らく白っぽい水色くらいになると思う。

 しかし、水晶に魔力を流すとその色は想像にしていない色が混じった。


「水色と……緑?」

「ん? 申告と違うな。虚偽申告かね?」

「い、いえ! 知らなかったのです! 私は氷属性しか使えません!」

「フィオラ・ルーデン……ふむ。事情は聞いている。しかし、知らなかったというのは本当かね? 女神様に誓って、虚偽の申告はなかったと言えるかね?」

「本当です! 女神にでもなんにでも誓って嘘ではないと言えます!」

「まぁ、この場ではこれ以上の追求はしない。試験後に別室で聞こう。今日は同伴者はいるかね?」

「兄が、一緒に……」

「あぁ、ケイン殿と一緒に来ていたのか。では、こちらから話は通しておこう。では、次」


 危なかった……。もしこんなことで失格なんてことがあったら顔向けできなくなるところだった。だが、緑……風属性に関しては覚えがある。大鎌が持っていた属性だ。

 しかし、私にその属性が引き継がれるのはおかしい。血を分け合ったわけでもないし、人間の仮説通り魂が混ざっているわけでもないはずだ。貰ったのは記憶だけ。何故風属性が混ざっているのか、今結論は出せない……。


「では、早速実技を始めよう。向こうに的を用意した。あれに魔法をぶつけて破壊してくれ。どんな方法でも構わないが、他者に影響が出るほどの大規模なものは使用しないでくれ」


 いつのまにか会場の端に用意されていた的。距離にして10m程だろうか。見ただけでは特段、特殊な物には見えないが……。


 受験者達がそれぞれの魔法を放つ。実力者揃いだからだろうか、破壊できない人は今回の試験にはいないようだ。注目を集めていた複属性持ちのヘルマンも、この程度では大した物は使わないようだ。ただの水球を放って破壊した。

 知らずのうちに風属性を持っていた私も、会場の注目を集めていたが、鍛えたのは氷属性だけ。多分、風魔法も使えないわけではないと思うが、知らなかったと言った以上ここで使うのは危険だ。適当に氷の礫を放って壊す。


「ふむ、では次。ランダムに動かすので狙ってくれ」


 試験官がひょいと指を動かすと、的が再度現れ自由に動き始める。


「先ほどよりも丈夫にした。では、始め」


 的は思った以上に素早く動き、受験者たちは先ほどのように一度で当てられる者は少なかった。苦戦している者もおり、そもそも当てられない。当てても、壊せない者もいた。

 しかし、ヘルマンは憮然とした態度を崩すことなく、水球を自在に操って一度で的を破壊した。見事な魔法に会場も少し盛り上がる。

 頑張れば私もあれくらいはできる。だが、それよりも簡単な方法がある。


「『射貫け』」


 的が動く速度よりも早く放って壊せばいいのだ。わざわざ手間のかかる操作をする必要はない。



「そこまでだ。では次、どんな姿でも構わないので、創造系魔法の≪ゴレム≫を作るように。その後、試験官が作る≪ゴレム≫と試合だ。属性は可能な限り合わせるので、順に始めろ」


 ゴレムとは、ある程度の実力があれば誰でも使える魔法の操り人形の事だ。姿は人によって様々で空想の動物、魔獣、巨大にした動物など様々。

 火の狼、風の鳥、絵物語に語られる伝説の騎士を土で作る者もいた。


「≪水龍ウードラゴン≫」


 誰もが注目しているヘルマンが作ったのは水の龍。空想上に語られる、蛇のような体、長い髭、鋭い牙、威厳のある姿。恐怖の象徴として、されどその威厳によって誰しもがあこがれている生物と言える再現度だった。


「立派な物だ。では、試合開始だ」


 試験官の出した水のゴレムは、ヘルマンの巨大な龍に負けないくらい大きい虎。

 双方の試合は壮絶なものだった。これまでの受験者も善戦していたが、示し合わせているのか10分経った段階で勝負を決められている。

 しかし、ヘルマンはそう簡単には終わらせないといわんばかりの気迫と精密な操作で肉薄している。長い体で縛り上げ、鋭い牙で噛み砕く。試験官の虎も負けず、体を膨張させて抜け出し、巨大な爪で体を裂いた。壮絶な戦いではあったが、それでも20分程度時間が経った所で、精密さを欠いたヘルマンの龍は体を飲み込まれ消え失せた。


「いやはや見事な物だ。これは、期待の新人だな。測定では火の属性も持っているはずだが、何故使わなかった?」

「使ってよかったのか? てっきり、そんなことをしたら失格だと思ったのですが」

「構わない。最大限の力を発揮してくれと伝えたはずだが?」

「そうですか。では、次はそうします」


 生意気な態度で試験官と話すヘルマンだが、その態度に相応しい試合をしていた。他の受験者たちの間では、あいつはもう合格だろうという声がちらほら聞こえる。


「では、次だ。氷属性の試験官がいないので先ほどの水属性担当が相手になる。その点を考えて作るように」


 普通に考えれば水と氷であれば氷が負けるはずはない。だが、水属性の作る水は常に渦巻いており、普通とは違う。適当な氷をその中に放りこんだのなら一瞬にして砕けるだろう。


「質問したいのですが、作り出すのは1体までですか?」

「制限はない。自分で大丈夫だと思うのであれば何体でも構わない。しかし、壊れたゴレムを再度作り出すのは禁止だ」

「そうですか。わかりました。……『戦友達よ』」


 一般的に、ゴレムを動かすには常に魔力を流して、指示を送り続けなければならない。そのため、数が増えるほど、動かせる動作部が増えるほど操作が困難になるし、使う魔力も増える。

 しかし、私が作り出したのは装備を着込んだ人型が10体。それぞれが別々の武器を持ち、体格も違う。色がついていれば魔族だとわかってしまうかもしれないが、出来たのは氷一色なのでただの騎士だと周りは思うだろう。


「多いな。大丈夫かね? 壊れたら再度作り直すのは禁止と言っているが」

「大丈夫です。卑怯な事をするつもりはありません」

「そうか。では、始めよう」


 先ほどと同じ試験官。だが、作り出したのは虎ではなく巨大な騎士が一体。


「意趣返しですか?」

「いや? 単にこれが私の一番得意なゴレムなだけですよ」


 こちらのゴレムは一番大きくても2mちょっと。相手の騎士は5mはある。鈍重と思いたいが、魔法は大きいだけで鈍くなるものではない。


 1対10。数だけなら圧倒的。だが、50人で立ち向かっても4人に滅ぼされた経験のある私は、油断なんてしない。

 本来ならゴレムに一挙手、一投足指示を出さなければいけない。これは間違いで、正確には想像を伝えるだけだ。指示を出せと教わるからそうなるだけで、実際には頭で考えた想像を再現させるのがゴレム。人間は複雑に考えすぎている。魔法の基本は、想像力と魔力だけ。

 私はゴレムをそれぞれ操作するなんて事はしない。やるのは、記憶を送り込むこと。その者の癖、戦い方等。まるでそれぞれが自分の意志を持っているかのように動く。つまり、過去の仲間の再現。

 魔力の総量には自信がある。いちいち指示を出していないので、魔力を何度も送り出すことはない。だからこそこの数を作り、動かせる。

 複数体を動かせる者も勿論いるらしいが、それは単純にその者の努力の証だろう。


 油断することなく戦いを進める。相手の動きに淀みはない。しかし、勇者のような理不尽な力はない。やはり数は正義なのだ。

 数人で正面から牽制する。残りで背後から攻める。歴戦の連携で相手を徐々に追いつめていく。やることは単純だが、それだけで相手の巨大騎士は傷ついていく。巨大な騎士も、20分も続ければ形を保てなくなり、消え去る。


「ふむ……。凄いですね。まさか負けるとは思っていませんでした。ゴレムの魔法が得意なのですか?」

「いえ、そういうわけでもないです。単純にコツを知っているだけです」

「ほう、是非教えてもらいたいものですね」

「お断りさせていただきます。感覚派なもので、うまく説明できません」


 過去の戦友を再現するだけです、なんて説明は出来ない。長年共に過ごした仲間達だからできる裏技だ。私としては、空想上の生き物に動きを与える方が困難だと思っている。


「はっはっは! それは残念ですね。それにしても、いい試合でした」


 水の担当試験官はさっぱりした笑顔で会場の端に戻っていった。


「あー言っておくが、合格基準に勝利は含まれていない。負けたからと言って、終わりだと思わないように」


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