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もう一度魔王様に会いたい  作者: んまい棒
第一章
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第19話「面接」

 実技試験が始まってから時間にして2時間といったところだろうか。複数人同時に行っているので人数の割には早い方だが、ここまで休憩らしい休憩はない。他の受験者が受けている間は待機となっているので、その間に水などを飲むことは許可されているがその程度では休憩とは言えないだろう。

 誰もが疲労の溜まり始める頃合い。心の中では休憩を欲しているだろうが、試験は続く。


「全体で進める試験は次で最後となる。これが終わった者から、各属性ごとに部屋に案内されるので、それぞれの試験官の指示に従う事。

 では、最後は領域系の魔法を使ってくれ。条件として、範囲はこの室内全域。持続時間は5分。効果の程度は指定しない」


 領域系魔法とは、魔法の影響を周りの環境に与える魔法の総称。その魔法が使えるかどうかで実力に線引きされるほど重要視されている物だ。魔法自体は簡単に使えるのだが、簡単なのは自分の周りに限った時だけ。広くなればなるほど魔法が不安定になり、効果も薄くなりがちだ。

 部屋の広さは大体100×50mくらいか。領域系魔法の合格基準としては最低限な所だろう。本来であれば外で何km以上もの範囲に影響を与えなければ意味がないらしいが。


 実技を行う受験者以外は一旦廊下に出て窓から中の様子を伺う。効果は指定がなかったので、得意な者は派手に、そうでなければ地味な効果を選んでいるようだ。

 土埃を発生させて視界を奪う、部屋の温度を上げる、暴風で試験官ごと宙に浮かせる、土砂降りを発生させる。

 ヘルマンは水と火の複属性らしく、自分で出した水を蒸発させて部屋を蒸風呂状態にした。


 私は領域魔法は得意ではない。何故ならそこまで時間がなかったからだ。創造系の魔法や、一般的な攻撃系統の魔法は練習した。しかし、領域魔法を練習したのは1つだけ。

 床を氷で覆って滑らせるだけだ。ケインであればダイヤモンドダストを作ったり、床から氷の棘を無数に生やしたりできるのだが、そこまで時間は取れなかった。

 重視されている割には効果が地味な物ばかりな気がするのは私だけだろうか?


「よろしい。では、別室に案内するので試験官の誘導に従うように」

「お疲れ様でした」


 規定時間を過ぎたので魔法を解除する。案内をしてくれたのは水の担当試験官の人だ。

 そこはソファと長机が置いてあるだけの、簡素な部屋だった。


「さて、それでは最後の試験を行います。そのあと簡単な面接がありますが、最後まで気を抜かずに受けて下さい」

「わかりました」


 行われたのは試験官が作った形そっくりな物を作り出す事。三角錐や四角錘など簡単なものから始まり、歪んだ球体、抽象化された動物、複雑に絡み合った紐、剣、鎧等々。

 氷魔法と相性のいい創造系統だったので、特に苦戦はしなかった。


「ここまでにしましょう。本職であれば良かったのですが、生憎氷属性の教師はまだこちらに戻って来ていなくてですね。もしかしたら本来のよりも少し難しかったかもしれませんが、十分な再現度でした」

「ありがとうございます」

「では、最後に簡単な面接を。フィオラさんの事情はおおよそ聞いております。記憶を失っていたのですよね。魔法はどのように勉強を?」

「兄に教わりました。元々魔法は得意だったようなので、特に苦労はしませんでした」

「ケインさんは魔法も上手ですからね。では、今回試験を受けようと思ったのは?」

「親に勧められたのと、学校に興味があったので」


 それと、勇者と聖女の現状を自分で見たかったので。


 簡単な質問と言っていたが、色々なことを聞かれた。受かったら何を学びたい、何を成し遂げたい等々。勝手に雑談のような感じで人となりを聞かれるのかと思ったが、普通に面接だった。


「では、最後に。ご自身が風属性を持っている事について、心当たりは?」

「……ありません。今回水晶で判定してもらって、初めて知りました」

「そうですか。では、面接は以上です……と言いたい所でしたが、お帰りになるのは少々お待ちください。今、ケインさんを呼んできます」


 そういえば、試験の後に話をするとか言っていたか。何を聞かれることやら……。


 数分後、試験官と一緒にケインが入室してきた。どうやら、特に説明もされていないのか困惑しているようだ。


「それで、なんで私まで呼ばれたのですか?」

「事実確認のためですね。ケインさんは、フィオラさんの属性はご存じですか?」

「はい。氷属性ですが……」

「他には?」

「他、ですか? すみませんが、フィオラは氷のみのはずです。何かあったのですか?」

「実は、魔力測定の際に、風属性がわずかに混ざっている事が確認されました。このことは知らなかったと?」

「風属性?! 初めて魔力に覚醒した際に測定に行きましたが、その時は氷属性だけでした! 何かの間違いでは?」

「そうですか……。まさかとは思いましたが、後天的な属性でしたか。何か思い当たる事はありませんか?」

「……ありません。そもそも、後天的に属性が増えるというのは聞いたことがありません」

「後天的に属性が増える事例は、ない事はないのです。ですが、報告されている事例の中では派生属性、或いは派生属性だった人が基本属性を得るというものだけです。全く違う属性を得るというのは聞いたことがありません」

「そうですか……」

「お話はここまでとしましょう。ケインさんも嘘をついている様子ではありませんし、原因が今すぐわかるわけでもありません。複属性持ち自体はわが校としてもありがたいことですので。それでは、本日はお疲れ様でした。結果は3日後にご連絡致します」

「あ、お疲れ様です。ありがとうございました」


 これにて面接終了。想定外の出来事はあったが、これで無事試験が終わり気付かぬ内に力の入っていた肩から力が抜ける。


「想定外なことはあったが、一先ずお疲れ様。今日はゆっくり休んで、結果が出るまで王都観光でもしよう」

「観光ですか? 楽しみです!」


 道中に少しだけ見た街並みは綺麗なものだった。整備された道、様々な形の建物。どこも綺麗で王都と言われるだけの場所だった気がする。


「デートプランは任せてくれよ。いろんな所に連れて行ってあげる」

「デートプラン?」

「あー、デートの計画って意味だね。他国から流れてきた言葉なんだけど、王都の方で流行りの言葉だね。いろんな国から観光客とか商人が来るからいつの間にか浸透してたんだ」

「そういうこともあるんですね。まぁ、プランとやらはお任せします。記憶がないので、何も知りませんし」


 長い一日だった。篩にかける為とは言え、あの量の試験を一日でこなすのは大変だった。慣れない事ばかりだったので、体力というより精神的に疲れが溜まっている。

 今日も早く休もう……。


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