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もう一度魔王様に会いたい  作者: んまい棒
第一章
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第16話「魔法学院」

 翌朝、ぐっすりと睡眠を取っただろうルシアンの表情は晴れやかなものだった。


「いやぁ久しぶりに憂いなく眠れたよ。朝起きたら実はフィオラが目覚めたのは夢だったんじゃないかと思ったけど、元気そうで何よりだ。報告は受けていたけど、体調はどうだい?」

「健康そのものですよ。お父様も、よく眠れたようで何よりです」

「2年ぶりにフィオラの元気な顔が見れて良かったよ」


 目の下の隈は抜けきっていないが、昨日見た時よりも顔色はいい。


「報告は受けているけど、起きてからフィオラはどう過ごしてたんだい? 記憶がないという事は、周りの人は誰も知らなかったのだろう? 不安じゃなかったかい?」

「不安は、あまり無かったです。周りの人が親切にしてくれましたし、記憶にはありませんでしたが、何故か懐かしさはあったので」

「そうか、それは良かった。ケインの方が先に帰って来てたのだろう? どうだった?」

「昔よりも元気だね。何もかも忘れてしまってはいたけど、根本的な所は変わらないままだね。わんぱくお嬢様だよ」

「ははは、そうかそうか。人間記憶を失った程度では変わらんという事か」


 その後は近況報告会のような事をした。私が目覚めてからしたこと、剣を習い始めた事、ケインに魔法を教えてもらった事、少しだけ勉強をリサに教えてもらったことなど。

 ケインの方も学院での出来事を報告していたが、その中に気になる事があった。


「ブルーノとルナリアの仲間集めは、難儀しているみたいだね。やっぱり、いくら世界存亡の為とはいえ、魔王に立ち向かえるような仲間はまだ集まってないみたいだ」

「そうか……。まぁ、魔王の復活まではまだ時間がある。こればかりは二人の頑張りを祈るしかないのだろうな」

「ちょっと待ってください。ブルーノとルナリアって、勇者と聖女ですよね? 兄さんは二人を知っているのですか?」

「あれ、言わなかったっけ? 二人とも魔法学院に通ってるから、友人だよ。ブルーノは元々貴族同士の付き合いもあった。ルナリアはブルーノ経由で知り合ったんだ」

「そうなんですね……。二人の実力の程はどうなのですか?」

「そっちも順調とは言えないね。魔族の力が未知数なだけに、力が強いにこしたことはないんだけど、やっぱり魔族と戦う機会なんて無いからね。せいぜい魔獣を相手にする程度だけど、近場の魔獣ではもう相手にならないから訓練ばかりなんだ」

「……大丈夫なのですか?」

「今のままでは駄目だろうね。仲間が集まってない上に、実力も上がらない。志願している人はいるらしいんだけど、ルナリアの方が目星を付けている人以外は断っているんだ。なんか、それでは条件がクリアできないとかって」

「条件? 実力とか、特技の事でしょうか?」

「それがよくわからないんだよね。実力のある人でも断っているらしいし、逆に声をかけている人はとても強いとは言い難い人もいるからね。まあ、希望がないわけでもなさそうだから、仲間の方は時間の問題っぽいけどね」


 魔王様が復活するまで残り1年程度だったはずだ。それを考えたらそこまで悠長にしていられないはずだ。今の勇者の実力がどの程度なのか分からないが、とてもじゃないが今のままでは魔王様に会う前に死んでしまう。私が魔王様にもう一度会うためにも、普通の魔族程度は軽く蹴散らせるくらいには強くなってもらわなければ困る。


「まぁ、勇者パーティーの事は彼らに任せるとしよう。それよりも、大事な話がある」

「ブルーノ達よりも大事な話? もしかして、仕事でなんかやらかしたとか?」

「そんなわけあるか。何かあったら今頃こっちに帰ってこれてない。大事な話というのは、フィオラの学校の話だ」

「私の学校?」


 そういえば、普通であれば15歳から高等学校に通うという話だった。リサがルシアンであれば何か考えているといっていたが、本当に考えてくれていたようだ。


「知っているかわからないが、本来であればフィオラも学校に通っているはずの年齢だ。だけど、ずっと眠っていて通えていない。15歳以降であれば入学できるから、来年度でもいいんだが、やっぱりそれだと周りと年齢がずれて何かと過ごしにくいだろうからね。フィオラさえよければ、中途入学試験を受けてみないかと思ってたんだ」

「中途入学ですか。それは、王都の魔法学院という認識であってますか?」

「あってるね。ケインも通ってるし、王都の魔法学院は他と比べて学べる事も多い。中途入学には色々大変だろうけど、一年ずれるよりはいいんじゃないかと思ってね。幸い、まだ1学期終わったばかりだし、まだ間に合うんじゃないかな?」

「そういうことでしたら、行きたいですね。丁度昨日リサから話を聞いていた所でしたので」

「そ、そんな簡単に決めて大丈夫かい? 提案したのは私だけど、大変だよ?」

「大変なのは勉強ですか? それだけであればどうとでもなります。全部忘れている分、脳の容量は空いてますので」

「確かに勉強も大事だけど、魔法はどうなんだい? そっちは覚えてたのか?」

「魔法ですかー……」


 そもそもどの程度実力が求められているのか分からない。勉強の方もそうだが、魔法の実力なんてどうやって測るのだろうか。魔力を測定する装置でもあったりするのか?


「まぁ、どうせ他にやることもありませんし、その間に全部覚えなおせばよいのです。なんとかなるでしょう」

「フィオラがそういうのならそうしよう。明日にでも教師を手配するから、勉強はその人に教えてもらいなさい。魔法の方はケインに教わればよいだろう。ケインもどうせこの休暇中はこっちにいるのだろう?」

「そのつもり。フィオラの事は任せて。元の実力を考えれば、特別なことはしなくても大丈夫だと思ってるし」

「ありがとうございます、お父様、兄さん」


 簡単に中途試験を受けれる事になった。話題にしたのだから受けさせるつもりではあったのだろうが、そんな軽く決めてもいいのだろうか。

 いずれにしても、私にとっては都合がいい。合格できれば勇者の実力を見れるし、受からなくても来年が楽になる。他にやることもないし、いい暇つぶしになるだろう。


「所で、その試験はいつになるのですか?」

「学院の長期休暇が大体20日ちょっとだから、今丁度20日だね。今日から忙しくなるよ!」

「20日で試験に合格できるくらい勉強と魔法を覚えると?」

「あぁ! フィオラが合格できるように、一緒に頑張ろう!」


 ケインは屈託のない笑顔で応援してくれる。恐らく、すでに私が合格して一緒の学院に通う事を夢想しているのだろう。

 しかし、あまりにも時間が無さ過ぎる。どこまで求められるのかわからないが、もしかして今日から地獄のような勉強をしなければいけないのでは……?




 そんなわけで昨日までどうやって暇を潰そうかと悩んでいた日常は急に終わりを告げた。

 朝から勉強、昼食を挟んで魔法、そして夕方にはまた勉強といった毎日。何度も投げ出してやろうかと思ったものだが、優しくて妹には甘いと思っていたケインから逃れられなかった。ケインはこちらを思いやっているように見せかけて私に自由な時間を与えてはくれなかったのだ。

 今更必要ないだろうに教師の授業を一緒に受けて、私が勉強に疲れたと感じれば、「勉強は疲れたよね? 軽く体を動かしに行こうか」などと言って外に出たと思ったら魔法。魔法に疲れたと思ったら、「体は疲れた? じゃあ休憩がてら勉強に戻ろう」などと言ってまた勉強に戻る。

 常に一緒に行動されて鬱陶しかったのだが、私の為にやってくれている事だと思うと突っぱねることもできなかった。


 そんな日々も、過ごせばたかが20日程度。忙しければ案外時間の流れも早く感じるもので、気付けば馬車に乗って兄と二人で王都へ向かっている所だ。近いうちに町にでも出かけようと思っていたのだが、結局出来ず仕舞いだ。


「後は試験に合格するだけだね。自信を持つんだ。フィオラはこれまで頑張ってきたんだ、絶対に合格できるよ」

「……ありがとう兄さん。ここまでして落ちたら私は兄さんを殺してしまいそうだから、全力で受けるわ」

「え? 落ちたら僕が死ぬの?」


 軽薄なしゃべり方すら神経を逆撫でてくる気がする。もしこれが100年戦場で生きた魔族ではなく、ただの15歳の少女だったら少なくとも5回は殺していた。過酷な経験というのは人の理性を強くしてくれるのだ。

 正直、自信はある。何に裏付けられた物でもない。でも、今ならどんな試験でも突破できる気しかしない。


「宿についたよフィオラ。大丈夫、今日まで沢山頑張ったんだ。今日は焦らず、ゆっくりと休んで明日に備えよう」


 頭の中で色々考えていたらいつの間にか王都についていた。出発したのはまだ日も登り切っていない早朝からだったが、外はすでに暗くなっている。


「もう着いたのですか? 早すぎではありません?」

「普通の馬車なら4日くらいの距離だね。だけど、今回はギリギリまでフィオラに勉強を頑張って貰うために、父さんの馬車を借りたんだ。風魔法がかかっていて、通常の3倍も早い特別性だよ」

「これお父様の馬車だったのですか? 知りませんでした……」

「それだけフィオラに受かってほしいと思ってるんだよ。父さんも言ってたけど、一年ずれるってのは思ってるより精神的にくるものだからね。中途で合格できるならそっちの方がいい」


 勉強ばかりで全然話もできずに王都に戻ってしまったお父様、ありがとう。

 

 到着した宿は貴族が泊まるに相応しい豪奢な建物。内装も綺麗で、ロビーには貴族らしい姿の人が何人か見られる。


「食事は部屋に持ってきてもらおう。移動で疲れただろう? 明日の為にも、今日は早く休もう」

「分かりました」


 初めての屋敷以外でとる食事は、疲れもあったのだろうが特別おいしく感じた。元気があれば観光もしてみたいが、夜も遅いし、明日は試験だし、何よりも疲れたしでベッドに入った瞬間に眠りについた。


 そういえば、部屋は分かれていないのか……?


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