ただ会話しているだけのようです。
(御主人様私達をここに運んだのはやはり?)
『気配を感じていたのかい? 今回のは黒様だね、アンデッド化していた創造者達の一人を倒したら確認にやって来た』
(そのアンデッド化していたという創造者達には身体があったのでしょうか? 地下の探索中に飾り付けられたベッドに横たわる人種と思われる骨を一式発見しましたが)
『ああ、ならそれがもう一人っぽいね、恐らくその死体の名前はナーシアと言う女性の筈だ、俺が相手したのはアグレイという男の方でね、彼女をなんとか蘇らせようとしていたらしい、死体をそのまま放置していたというのなら既にその頃からおかしくなっていたのかもな』
(骨になるまで放置された死体でそんな事が可能なのでしょうか?)
『神々にちゃんと聞いたことはないけど多分無理じゃないかな? アイツ自身もそんなスキルとか持ってなかったし、特にアイツがやろうとしていたのは自分が造った新しい身体に彼女の魂を呼ぶという行為だ、それはもう死者の復活とか言う話じゃなく別の何かだよ』
そう、その行為はむしろ俺に行われた転生という手段に近い、アグレイ自身にそういう考えかあったかどうかは今となっては不明だが、この世界において死後消滅しなかった魂は黒い子様が全て管理している以上ナーシアの魂を宿す事に成功する事は絶対になかっただろう、彼女を騙る別の何かが憑依しなかったのはここが<楽園>として閉鎖された世界だったおかげではないだろうか。
そしてアグレイの魂は俺に吸収されてこの世界の魂の循環からも外されることとなった、あのままにしていても森を蝕み世界に悪影響を与えただけだろうから別に同情とかするつもりもないが。
(創造者達が居なくなったと言うことはこの<楽園>を管理する者が誰も居なくなったのですよね? 今までも放置されていたとは言えあの人形達はどうなるのでしょう)
『俺も気になっているからこのまま確認しに行こうと思っている、それとこの<楽園>というか箱庭に関しては今後俺が管理する事になった』
(御主人様が? やはりトップだった創造者達を倒したからでしょうか)
うん、多分勘違いされてるね、箱庭のボスの交代劇みたいな物と思われてる気がする、やはりってなんだよアイビー、それが自然の掟だみたいに言わないでほしい。
野生の動物や魔物の縄張り争いであれば正しいんだろうけど、アイツは既に管理放棄して趣味に没頭してたしな。
俺の場合管理しろと命令してきたのがやんごとなき御方とその子供達っていうのが規格外なだけ、ってこれ業績不振の地方の支店に中央から店長送り込まれるのと同じ構図では……いや変なこと考えるのはやめておこう。
『それもあるんだろうけども、この森は世界に魔力の循環を促す大事な所になっていたらしくてね、創造者達に荒らされて森がダメになってしまうより俺の住処ということにして維持したほうが良いだろうと神々が決定したらしい、さっきの黒様もそれを俺に告げるのも理由にあったようだよ』
(それで何故飛ばされたのでしょうか? このまま管理するのでしたらあの地にあった施設は必要だったのでは)
『ああ、この箱庭を造って制御していたのは人の手で造られた制御核でね、未完成な上にあまり程度の良くない代物だったらしい、それで神々が制御核を自分達で用意していいかとこの世界を創った創造主、神々の父であり母である存在に相談したら、俺を管理者とするのならと俺に合わせた完全な制御核を用意してくださったと黒様から聴いている』
(…………黒の神は本来その姿どころか声すらも眷属を使っての間接的なものばかりと知識には有るのですが……先程から聴いていると黒の神が直接御出でになって私達を転送したのですね)
あぁ、眼はないはずなのにアイビーの視線がジトい。
俺としては神々には毎回直接逢っているし、黒い子様の眷属と言われてもあのメイド服を着ている姿しか浮かばないんだが、あの姿で祈っている人の前には普通出てこないよな。
『あの地は既に力を使い果たしたように枯れていただろう? あの施設が創造者達の暴走で魔力を余計に使いすぎていたんだよ、なので今神々の力で淀んでしまった土地の浄化をすると言われてね、どちらにしろあの施設は人種用に作られていたから俺には入れないところもあったしな。 今盛大に上がったあの炎は恐らく赤様の浄化か再生の炎だろう、土地の浄化処理が全て終わるまで飛ばされたって訳だな』
(……御主人様が神々に直接祝福を受けたというのは以前聞いていたのでまだ理解ができたのですが、いえそれでも神々が直接接触してくるというのは異常な事だと思いますが……今サラリともっと凄い事を言われた気がします、御主人様に合わせた制御核を神々より更に上位の世界の創造主が用意したと)
『そうだね……加えて言うなら俺がここに生まれるように神々に手配したのもその方だ、この姿で生まれるとは誰も予想してなかった様だけどね』
アイビーには言っておいていいだろう、他の世界やヌシ様については特に言う必要も無いけど、以前人だった辺りまでは教えておいて良いかも知れない。
(ひょっとして御主人様は世界の創造主の御子様でいらっしゃるのでしょうか?)
『それは否定するよ、この世界の創造主が直接生み出したのが原初の神々だ、創造主の子と言うのなら神々こそがそうだろう、俺は偶々だが創造主に興味を持たれただけの元は人種としての記憶を持つ魂に過ぎなかったんだよ』
(人種の記憶を持つ? ですが私が知る人という種と御主人様の記憶の人という種に大きな違いが有るような気がします、あ、いえ、だから興味を持たれたのでしょうか)
大きな違いか、俺もそう思う、この世界の人がどんな生活をしているかとか貰った基本情報でしか知らないからな。
どんな国があってどんな物を食べてるかとか全く知らない、人種も多数あるとは知っていてもまだ見たこともない、だからこそ見て回りたい、食事とかは……食べられるような身体じゃないからなあ、何とかならないか考えよう、街に行ったとして全く飲み食いしない奴とか怪しまれるだけだ。
『そうじゃないかな、他に思い浮かばないし、でも今はこの姿だし記憶があるというだけで特に人という種に深い愛着があるわけでもない、彼等の街には行ってみたいし、友好的な関係を結べるならそのほうがいいとは思うけどね、敵対するなら他と同様に相手するだけさ』
自分でも不思議だが、色々と文化や文明には興味はあっても人という存在にはあまり魅力を感じていない、もちろん多種族を見たいのは有るがその反面、むしろ敵対したらいろいろと考えて行動してくるだけ面倒だと思う部分すら有る。
それがこの身体になった影響なのか、それとも俺の本質なのかはよく判らないが、人と交流とかするとこの考えも変わるのかも知れない。
(…………)
アイビー先生が長考に入ってしまったので人形達がいた施設に向けて移動を開始する、覇気はアクティブにしておいていいだろう、今はあまり戦う気分でもないしアイビーも邪魔されたくはないだろう。
アイビーも頭の回転がもう蔦とは思えないレベルなのだが、いい加減な主の眷属なのでしっかりしないといけないと思っているのか、いろいろと考え過ぎる部分も見られる。
会話の相手が俺だけしか居ないというのもあまり良くないのかも知れない、とは思うが簡単に眷属を増やすわけにも行かない、眷属化は相手の魂をこちらに縛る行為でも有るようだしね。
あの人形とかアイビーのいい仲間になれそうな気もするんだが、あれは自我を持っているんだろうか? 毛玉は自我に目覚めていた感じだったがまだ幼いようだった、同時期に造られているはずの人形もあれだけの対応ができていたのだから自我に目覚めていたとしてもおかしな事ではない、だとしたら、俺が箱庭の新しい主になったと知った時どう思うのだろうか?
毛玉や人形達の役割も変更しないといけないだろう、もう強者を呼び込むシステムでなくともいい筈だし、箱庭の運営に俺達以外の手も必要だ、制御核で出来ることも把握しないといけないし、ちょっとのんびりするはずだったのにやることが山積みだな!
レージとアイビーは念話での会話です、なので会話してても周囲は静かなものです。
声を出す敵との会話シーンだと第三者には敵が一人で何か言ってるだけのように見えます。




