会話が成立しているような気はしただけなのかも知れません。
そういや浄化系の魔法とか造ってないなあ、等とぼんやり考えながら前を見る。
こっちを忘れたように熱く愛を語る猫背の骸骨が居る、ほんとどうしようかコイツ。
妄執に取り憑かれてるから説得はまず無理、迂闊に魔法を使うとコンソールや壁に影響がある可能性がある、かと言って奴を放置する気はないし滅する意欲は満ちている。
浄化系の仕組みとかはまだよく理解できていないが幸いなことに神様に知り合いは多いからな、最悪の場合ちょっと頼らせてもらうとしよう、イメージとしては白様だが確か黒い子様が死に関係していた筈だ。
アグレイの身体からは感情の昂ぶりに合わせたものか黒っぽいオーラ? が揺らぎ始めている、ならそろそろこっちに気を向けてもらうとしよう、オフにしていた【覇気】をアクティブにして声を掛ける。
『いい加減少し黙れスケルトン』
効果は十分にあったようだ、ギギギと骨が軋み音を上げるような雰囲気でゆっくりとこっちを向く、口は開いたままだ、骸骨がやると感情が見えない分間抜けに見える。
「喋れるのかい君は、素晴らしいじゃないか! 口は悪いみたいだけど、それだけの力があればきっとナーシアの身体を造るに申し分ない魔力が生成できるよ!」
まだ俺がどうにか出来ると思っているようだ、いや狂っているからこその判断だろうか、こっちの【覇気】に動じている様子はない、こっちに意識を向けさせればいいだけだったので別に問題はない。
『俺を上にあった精霊樹と同じ様に魔力の浄化に使うつもりか』
「精霊樹? そんな名前だったのかいあの大樹は、確かに魔力の浄化に使っていたけどね、樹ならできて当然だろう? 大樹なら処理能力も高い筈さ、君はまだそんなに大きくないけど魔力は十分ありそうだ、ならば後は魔法陣に組み込んでしまえば問題ないよね!」
大樹の部屋にあった魔法陣、アレは大規模な魔法装置の一部、引き込まれた魔力を大樹に通して不純物を濾し取るフィルター代わりか混濁した魔力に指向性をもたせる為のものだった。
施設周辺の土地の活力が奪われていたのはあの合成炉とやらに魔力を送っている装置のせいだろう、大樹が枯れたのがどのタイミングだったのかはわからない、だが既に装置の力が及ぶ範囲の魔力は消費されてしまい土地は魔力を生成できないレベルにまで弱っていた、それでも魔力はこの施設の維持に必要とされ続けあの精霊樹からも魔力を奪い取った。
大体だがそんなところだろう、ゴブの魔石を幾つか放り込んでみたが瞬く間に魔力が吸われて弾け飛んでいた、精霊樹を回収したときも魔力を吸われる感覚がしていた、短時間だから平気だったがずっとあの中に居たら間違いなく魔力枯渇で普通は死滅するだろう。
『やっぱ会話しようとするだけ無駄か』
一応意思確認位しておこうかなとか思ったのですよ、こういう引き籠りに話が通じる筈がないなんて判ってた事なのに。
とりあえず魔手を伸ばして握り締めて拘束する、この状態なら潰すも撚るも叩きつけるも自在だが骸骨の状態では相手がどんな表情かもわからない。
「なんだいこれは、この程度で僕が拘束されると思ってるのかい?」
魔手に持ち上げられながらもやや上擦った声を上げる骸骨、いやそんな簡単に倒せるとか思っちゃいない、思っちゃいないけどとりあえず俺の考え通りならその骸骨は邪魔なのだ、ってことでそのまま握り潰しながら頭から床に叩きつける。
ペキリとクシャリという音が響き、数百年を経た骸骨はあっさりと床に叩きつけられて砕け散る、あの身体じゃカルシウム摂れなかっただろうしな。
「よくも! よくもやってくれたなァ魔物の分際で!」
そして砕けた骸骨から立ち上がってくる黒く靄々とした人影、眼の部分だけが赤く輝く、アレこそが<狂気ノ幻想ニ取リ憑カレシ者>の本当の姿だ。
前世の知識で行けばだがファントムと呼ばれるモンスターは地縛霊に近い怨念ともいう存在だった、そんな種族でありながらスケルトン状態が本体とは思えなかったし、何よりうちの翻訳さんのネーミングセンス的に俺の知識と違う存在をそんな名前で呼んだりする筈がないという妙な信頼感があった。
少なくとも鑑定した時に手持ちのスキルや能力に高位のアンデッドらしい物がなく、【憑依】なんて物を確認した時点であの骸骨はただの依代だって想像はついていたのだ。
『いや、お前もいまや立派なアンデッドな魔物だからな、言っても理解しないだろうけど』
「うるさィ! この身体ではナーシあの身体を造れなィじゃなィか!」
『だったら諦めて昇天? いやこの場合消滅か、しようぜ』
「ウるさィ! ウるさィ! オ前、ナーシあと僕を引き離すつもりだな! これでもくらェ!」
会話になってない気がするのは気のせいだろうか、こちらが樹の魔物と見て火の魔術を使うつもりなのか魔法陣が構築されて赤い魔力が集まっていくのが視える。
なるほど魔物化してるせいで制御の杖や触媒を使わなくても魔術の行使が出来る様にはなってるようだ、アグレイ本人はそんな事気がついている様子も無いけど。
ただ如何せん、戦い方が全くの素人だし人であった時の魔術の常識に囚われすぎている、この至近距離で魔力が視える俺相手に魔術詠唱は悪手でしか無い、魔力干渉の触手を伸ばして魔法陣に触れて干渉、その魔力ごと奪い去る、以前詠唱魔術での戦い方を見た時から思っていたことだったんだが、やっぱり魔手で干渉して魔力を奪うことが出来た、のんびり魔力溜めてるんだものそりゃ手出ししちゃうよね、殴らなかっただけ俺は優しいと思う。
「オま、オまェ何をしたァ! 僕の魔術が霧散するなんてェ!」
あー煩い、というか俺の触手見えてなかったのか、霊体みたいな存在だから魔力も視えてるかと思ったんだが、アンデッドとしてもそういう特性持ってなかったりするんだろうか、ステータスでも視覚系のスキルとか持ってなかった様な気がする、狂乱状態で見えてなかったって可能性もあるから決めつけないほうが良いか。
『えっと、ゴチソウサマ? 出来ればおかわりを希望します?』
ええ、赤の魔力はスタッフが美味しくいただきました。
おちょくり煽っていくスタイル、多分これがああいう慣れていないタイプには一番有効だと思う、そんな事するまでもなく勝てそうな気はしてるんだけど。
「フッ、フザケルナッ! 魔法陣ごと魔術を喰らウとかそんな魔物きィたこと無イぞっ!」
『女のケツばっかり追ってて、自分が未熟だっただけの話だろ?』
「ウルサイウルサイウルサイウルサイ!」
『都合が悪いと大声で叫んで聴かないとか……ガキかお前は』
怒りのせいか燃え上がりそうに赤い眼をこちらに向けて何かの魔法陣を呼び出すアグレイ、当然干渉して根こそぎ魔力を奪う、面倒なのでもう一本そのまま身体に、あ、普通に刺さった。
「ナッ……マリョクガッ、ナンダヨコレッ!」
『この程度のことも知らないのに偉そうにしてたとか逆に尊敬するよ、魔力喰いとかこの森ではそのへんの蚯蚓でも普通にしてくる攻撃だぞ?』
数百年前はどうだったか知らないけどな、多分この辺には居なかったんじゃないかと思う、【咬蟲】が魔物化して魔力に適応したのが恐らくは【魔咬蟲】だと思うし。
このまま霊体型のアンデッドの魔力を吸い尽くしたらどうなるんだろうか、そんな疑問がふと沸き起こる、霊体的な何かが維持できなくなってただ終わるだけ? なんとなくだがそれだと暫くしたら更に妄執を滾らせて復活してきそうな気がする。
やっぱ誰か呼んで浄化してもらったほうが良いんだろうか。
そんな事を考えていたのが油断だったのだろう。
「コウナッタラッ!」
身体に触手を突き刺したままこちらへとダッシュするように向かってくるアグレイ、その姿は俺の身体にぶつかるとそのまま中へと吸い込まれるように消えていった。
『ア゛ッ』
リアルでこんな感じで話聴かない人がたまに
煽る人もたまに




