考えなしに混ぜると色んな意味で危険だったりします。
短め
キマイラ、確か本来は神の子で獅子の頭と山羊の胴体そして毒蛇の尻尾を持つんだったか、こんな姿で娘なのかと驚いた記憶がある、ファンタジー系のゲームなんかでは獅子の身体に毒蛇の尻尾、獅子と山羊とドラゴンの頭まで持ってたりする魔物の姿のほうが有名だった。
キメラ、生物学なんかでいろんな生物の因子持った上にそれぞれがバラバラに発現している怪物の事、だったかな、パニックホラーなんかで出てくる色々ミックスされたモンスターはだいたいこのタイプだ。
では今俺達の目の前にいるのは何か、一体は2メートルを越す蜘蛛の身体に【猪頭】の上半身、【森林鬼】の長くずんぐりとした腕には【風刃猿】の特徴である刃状の硬皮が更に硬そうに伸びている、明らかに上半身のバランスが悪い上に眼に輝きがない。
もう一体はもっと訳がわからない、鱗のあるトカゲかイグアナの様な身体から【魔犬】の頭が生え、その両前脚は爪の長さから推測するに【暴風熊】級かそれ以上の熊系、後ろ脚は鱗付きの鰐の様だ、身体と同一の物かもしれない、やはり鰐のように長い尻尾の先端は複数の棘に覆われている、やはりこちらも眼に輝きはないが、アイビーの毒で殺られたにしては眼が濁り過ぎている気がするしまだ両方とも動いている。
【鑑定】を使ってみるが両方共に【???】だ、毛玉達と同じパターン、と言うことは此奴等も創造者達絡みの魔物の可能性がある、どうみても魔物の合成実験か何かやって失敗しましたって感じのパニックホラー系の怪物なんですが<楽園>崩壊した?
(御主人様、この者達に麻痺も毒も効きません)
念話を飛ばしながらアイビーが駆け戻ってくる、連中もあの濁った眼でどうやって見ているのかこっちを捉えているようだ、アイビーが使う麻痺も毒も複数の成分を合成したという特製品だがそれらが一切効かない存在だとすれば、それはより高い抵抗力を持つか……
『アンデッド化してるか最初からああいう形に作られたゴーレムかって所だろうな、ゴーレムだとしたら趣味が悪すぎるけど』
あの濁った目を見るに推定は前者だ、ゴーレムにしては身体のバランスが悪すぎてなんの為に造られたのか解らない。
殴り合いなんかする気にもならないので<土槍>で身体部分を両方串刺しにしてみる、鱗鰐型も腹の方は柔らかかったようで思った以上にあっさりだ。
やはり、と言うべきか痛みを感じている様子はない、それどころか双方共に腕を振り回し身体に刺さった土槍を叩き折ろうとしている。
<土槍>の制御範囲を拡大し全身を貫くようにかけ直して拘束する、再生したりはしないようだがこれでもまだ逃れようとしている、再調整で火力を可変できるようにした<炎槍>で両方共頭を焼き飛ばす、ゾンビ化したら頭部の切断か粉砕、ゴブでも知ってる対処法だ、普通の生物は頭を吹き飛ばせば大体騒がなくなる。
こいつらも姿は異形だが対処法は同じだったらしい、拘束を維持したままとりあえず魔石を抜き出す、特に加工されている様子は見えないがストレージに放り込んでおく、何か違うなら飛沫さんが興味を持つだろう。
死体の方は回収するのもなんか嫌だったのでいつもの様に粉砕処理しておく、魔石は抜いているからこの辺の植物が異形化することはない、と思いたい、魔力量から言って魔物化しても【妖樹】の下位が生まれるか【毒鞭植物】の大量発生みたいなものだと思うけど、そうなったら生存競争激しそうだ。
『しかしこんなのがアンデッド化してるとはね』
(いろんな魔物を寄せ集めみたいな感じでしたが、これを一つの生物として認めて良いものでしょうか)
『どうだろうね、俺の記憶にはこうした寄せ集めでも一つの魔物として扱う存在があるんだが、それと同質の物と言って良いものかどうか悩む所だ、でもあんなモノが自然に生まれてくるとは思えないし何処かで造られているのかもね、やってるのがこの<楽園>にどう関係しているのかは判らないけど、遺産を動かしてるのか動いているのか』
(遺産、ですか? 子孫とかではなく)
『うん、さっきの魔物はまだ腐敗が進んでいなかった、死んで間もなかったということだ、自然に生まれるような奴なら鑑定が可能か大体は同じ姿になる、それでもあんな複数の魔物の特徴を備えた不自然な変化はしないだろう、つまりはそういうモノを生み出す事が出来る所からやって来た、思い当たるのは一つしか無い』
(創造者達が居るという中央の施設)
『そう、だがあの姿は狩りにも戦闘にも向いていないただの寄せ集めだ、造っている者の意思がほとんど感じられない、二体とも失敗作だからと処分されたモノかも知れないけど、もし誰かが居るのだとしたらアンデッド化して動き出すまで放置するというのもおかしな話だ』
(自分が襲われる事がないと思っているか、襲われない場所から出てこないのか)
『確認を急いだほうが良いかもしれないな、あんな失敗作みたいなのがゾロゾロ出てきた所で負ける気はしないけど、もっとちゃんとしたのが出てきても面倒だ』
あの二体の状態から見てこの近くなのは間違いない、最大限に警戒しながら中央部に向かう。
ここの管理者の目的がサッパリ見えてこない。
『こいつは酷いな』
(これは一体……)
あれから1時間程中央部に近づいた時点で森の様子が一変した、それまで普通の森林だった森が淀んだ魔力と瘴気が漂う枯れた森へ、瘴気が濃すぎて薄靄に包まれたようになってしまっている、葉をつけた植物すら見えない、土も痩せてしまっているようだ。
靄の中に特に魔物の気配は感じない、アイビーに確認してみたがやはり気配なしらしい。
『中に進んだほうが良いんだろうけど、これはちょっと進むのに勇気がいるな、長いこと中には居たくない』
(分体で中を見てきましょうか? 影響があっても分体なら影響は殆どありませんし)
『いや、やめておこう、瘴気と淀みが酷すぎて影響が何処まで及ぶかわからない』
アイビーの精神にまで影響があった場合どうしようもない。
<魔衣>身体に纏う魔力障壁を造ったつもりだったが名前が改変された、を使って一応の淀み対策をしつつ荒れ地に入っていく。
土地全体から活力が感じられない、何よりこの土地は魔力が淀んでしまっている、樹が無いから淀みの浄化もできないのは解る、だが土地の魔力まで枯渇しているのは何故だろう。
まるで前世でみた環境汚染の進んだ土地の様……ってまさかそれと似たような事が起こっている?
この世界で汚染物質とか出すものはそうそう無いと思ったが、考えてみれば魔力のバランスを崩すだけでもこの世界は物理的な影響がでる、となれば魔力を枯渇させる何かの影響が出ていると見るのが正しいか。
考え事をしながら進む荒れ地の靄の中に大きなシルエットが浮かぶ。
『どうやらあれが目的地らしいな』
(建物、でしょうか? 石造りで随分と古そうですが)
石造りの砦のような建造物、本来防御の為にあったのであろう外壁部は半壊してしまっている、砦の上部も大分破損が進んでいるようだ。
だがとりあえず接近する前にあの正面の門の前に怪しさ全開で立っている<全身甲冑の石像っぽい何か>をなんとかしないといけない気がする。
扉の横じゃなく前に盾持って立ってるってどう見ても怪しいだろ。
遅くなりました。




