双方棒立ちのままの会談は炎上しそうです。
少し短め
とりあえず目の前のゴーレム? さんに話を聴かねばなるまい、森の王はあの毛玉命名らしい、俺の所に来てもいつも遊んでただけな気がするんだが俺は王なのだそうだ、王様ゲームでもやってたんだろうか。
「お連れの方も目を覚まされた御様子、お連れの方にも非礼をお詫び致します。」
アイビーの困惑と警戒が伝わってくる、状況をうまく整理できていないのだろう。
『アイビー、俺達はどうやら転移させられたらしい、そして目の前に居る方に今から話を聞く所だよ』
(転移……よく判りませんが状態は理解できました)
恐らくは向こうにも聞こえているだろう会話、だが何も言ってくる気配はない、こっちの会話が終わるのを待っているのだろう。
『失礼、おまたせした、ところでなんとお呼びすれば?』
「私達に名はありません、私や同型の者達は皆【人形】と呼ばれておりました。」
うん、それ間違いなく名前じゃないよね、と言いそうになったが我慢する、今は気配がないが同型の者という言うことは他にも数が居るのかもしれない。
『そもそもここは何処で、俺達は何故ここに呼ばれたのでしょう?』
本来であればお茶でも飲みながら、という所だが、この場の誰も飲食不要なうえに座る必要すらない、互いに棒立ちのままというちょっと間の抜けた会談の光景、毛玉達だけが【人形】とこっちの間をふわふわと飛び回っている。
「ここは外の森から新たに来られた方に説明を行うために用意されていた場所です、そしてあの者達は外の森を見て回り、ここに迎え入れるに相応しい力を備えた方を見つけ出すために生み出されました、以前は静かな者達だったのですが……何時の頃からかあの様に気ままに行動するようになりました、お役目は忘れていないようなので特に口出しすることもありませんでしたが、今回はどうやら私の為に無理に皆様をここに御呼びしてしまった様なのです。」
『用意されていた場所、と言うことはもう長いこと本来の目的で利用はされていない?』
「はい、私の記憶ではここが用意されて400年程になりますが、皆様が初めてお迎えする意志ある来訪者となります。」
衝撃の事実である、さらりと言われたが400年間だ、ここで来訪者を待ち続けるだけの役目だったらしい、何時からか毛玉が気ままに行動するようになった、というが長い期間あちこちを移動して魔力の影響を受けているせいで魔物化が進んでいるのではないだろうか?
結局あれから色んな話を聴くことが出来た、400年を生きた記憶、と言ってもこの案内役の【人形】はこの地に配備されてから他に移動した事もなく、記憶はもっぱら皆を創り出したという存在についてという事で集約されるのだが。
【人形】から得た情報をまとめてみる。
・かつてこの地に【人形】達が自分達を創ったという創造者達と呼ぶ男女が居た。
・創造者達は森を封鎖し、<楽園>を造ろうとしていた。
・<楽園>創造の為に外部から選ばれたモノを招く様に扉がある、しかし話が出来るほどの知能を持つ存在は居なかった、あってもあの扉に認められなかった?
・350年程前から【人形】自身は創造者達達の居る所と連絡が取れていない、ただし毛玉達が外の森で見つけた存在を報告するという機能は今でも働いている。
・【人形】はある程度までは自分でメンテナンスできるが新たなパーツを創造したりはできない、材質は【石化妖樹】の加工品らしいのだが350年という年月は流石に耐えられなかったようだ、素材は手持ちであるのだが俺が創った存在でもないので迂闊な手出しも出来ない。
はっきり言おう、この創造者達かなり胡散臭い、【人形】は与えられた情報として知っているだけだが、この<楽園>には恐らく別の目的が在ったのではないだろうか?
どんな<楽園>を造るつもりだったのかは判断材料がないが<楽園>というなら何故森から強者だけを選別してここへ招こうとしていたのか、この地の魔物はそれほど強くないというのに。
聴いていて判ったがあの毛玉達、元はこの地へ強者を招く為の選別者だったらしい、今もそうなのかもしれないが自我が芽生えて妙な事になりつつあるようだ、でなければあの壊れつつある【人形】を心配して無理やり俺を転移させたりしていないだろう、【人形】にただ待つだけでなく仕事をさせてやりたかったのか、あのまま【人形】が朽ちて行くことをなんとかしたいと思っているのか、彼等と話が通じていないのでその理由については不明だが、なんとなく両方とも正しい気がする。
(役目として与えられた仕事を果たせぬまま朽ちていく、と言うのはどれほどの苦行でしょうか)
とはアイビーの感想だ、なんだか共感しているようだけど俺はアイビーを使役した覚えはないよ?
結局の所詳しい部分は未だ不明のままだが創造者達がこの地を管理していたと言う情報は手に入った、やはりここは管理された箱庭だ、それが彼等が目指した<楽園>と呼べる物かどうかは不明だが。
そして推測だが恐らくその創造者達はもう居ない、400年以上生きる存在が管理しているというのなら話は別だが、【人形】達にメンテナンスも施されず何の連絡もないのがその証拠だ、扉を越えてきた存在が居た場合、迎えに出る役目の【人形】が以前は居たそうなのだが、俺達はあの広場に暫くいたがそんな【人形】に遭遇もしていなければ気配も感じていない。
本来ここに来る事を想定されていたのは人類なのではなかったのだろうか、【人形】達の姿は人型をしている、創造者達は異形種ではなく人類だったのだろう、他者を迎えるという場所に普通自分と違う姿や、迎え入れる存在とかけ離れた姿をした存在は配置しないはずだし、魔物に出迎えという習慣はない、俺達なんか全くの想定外に違いない。
だがそれでも毛玉達の持ち帰った外の森の情報は送られていて扉や声は機能している、と言うことは管理するためのシステム的な何かはまだ稼働している。
創造者達による管理は放棄されたがシステムは生きている、というのが感想だ。
創造者達が居た場所は【人形】も詳しい位置こそ知らなかったが、森の中央部分に施設があるのだと言っていた、ならばそこにたどり着ければもう少し詳しく判るだろう。
中央部分に入るには許可が必要だが今は全く通じていないとも言っていた、あからさまに嫌なフラグのような物が立った気がする、得てしてこういう場合変な事態が起こるのだ、防衛システムが動き出したり、既に暴走してたり、この世界でもそうなのか分らないけど。
創造者達が居たという場所が<楽園>の管理室、というよりも何かの研究施設のような印象になり始めたのは俺の前世の知識のせいだろうか?
出来るかどうかなんて全く不明だ、だが出来る事なら【人形】や毛玉達をこの変な管理任務から開放してやりたいと思う、俺達が立ち去る時深く頭を下げていた姿を思い出す、あのまま身勝手な命令に翻弄されて朽ちていくのはあまりにも哀れだと感じた。
創造者達に対する苛立ちが湧き上がるのを感じながら杭装備で魔手を展開する、中央の方向は聞いている、少々八つ当たりしながら向かうとしよう。
【人形】さんはボロボロですが侍女型。




