懐かしい遭遇でしたが困惑のほうが大きいです。
話をあまり進められなかった。
色々と考えては見たものの、結局の所全ては俺が考えた仮説で確証があるわけでもないし、正解を誰かが教えてくれるわけでもない。
とりあえずそんな感じだったよねと頭の片隅にしまっておくことにする、常時考えるような事でもないし。
根を動かす訓練、普通に持ち上げて下ろす、脱力してウネウネさせる、クルリと巻いて溜めを作り一気に伸ばす! 今日も快調である、実はこの根、動き回ると擦り切れてしまうのか時折生え変わっていたりする事に気がついた、根部分にほとんど感覚がないせいで負担が大きくなってるのかもしれない、少しゆっくり歩くようにしよう。
枝を動かす訓練、こっちは頑張ってもウネりが足らずしなると言った感じだが実を投擲する時に動かすのでやはり訓練する、気分はラジオ体操、ただし両手は常に広げたままだ、付け根からグリグリと振り回す、疲労感がなくてよかった。
ちなみにだが、この動きの硬い枝から飛ばす実は当然射程が短いという弱点がある、なので遠距離を狙う際は魔手で掴んで投げるという反則技を使って射程を伸ばしたりもする。
枝に複数の魔手、同時に腕を何本も扱う事に最初はそれぞれに意識を向けていないと頭の中が混乱したものだが、今は普通に手を扱うように特に意識する必要もない、慣れというよりもその変化に頭と身体が適応したような感覚といったほうがいいのだろうか、違和感を感じることもない。
順調に異形種への道を進んでいる気がするね、今更だが。
付近をのんびりと移動しつつ属性魔力を吸収する、これでも一応植物なので以前のような食欲は無い、のだが相変わらず属性魔力を渇望するのは収まらない。
一回の吸収量が少ないのと、現在の総量とかステータスでも表示されないし現在限界量から何パーセント程度の量を持っているのかとかも全く不明だ、赤の魔力が一気に増えた時のような急激な変化でもないと変化が微妙すぎて気が付き難かったりする。
それでも僅かでも成長が実感できた時は嬉しいものだ、射程が少し伸びた、効果範囲が広がった、制御が容易になった、緻密な操作が可能になった、魔力取り込みの恩恵は魔法関連ではそういった部分に変化が現れやすい。
(御主人様、何か小さいものが来ます)
『こっちでも捉えた、というか結構懐かしい気配だな、同じ個体だろうか』
懐かしい気配がゆっくりとこっちに漂ってくる、相変わらず風も吹いていないのにふわふわと飛ぶ綿毛改め毛玉達、大きさは少し大きくなった、と言うより更に毛が伸びて大きく見える様になった感じだろうか。
『~!!』 『~~~!』
『~~?』 『~!!!』
相変わらず何を言っているか聞き取れないが何か言っている、と言うか驚かれてる?
『以前、外の森で君達によく似たモノと遭遇したことがある』
話しかけてみる、やったあとで迂闊にやっちゃまずかったかなと急に不安になる、なんせ声かけ案件で魂を吹き飛ばされた経験者だ、あの頃の記憶が頭をよぎるがやってしまった物は仕方ない。
幸い話しかけて消し飛ぶなんて悲劇も起らず、相変わらず周囲をふわふわしている。
(あの、これは一体何なのでしょう? 私の鑑定では何者か判りません)
『俺の鑑定でも判らないんだよこの子達、以前森の中で何度か遭遇したことがあったんだけど、敵意を感じなかったんでそのままだったな』
うん、相変わらず鑑定しても【???】のままだ、ひょっとすると種族とか確定していない存在なのかもしれない、結構高い思考能力はありそうなのに。
『~~!?』 『~~♪』
『~~~?』 『~~!』
羽音も何もしないが互いに囁く様に話し、ふわふわと俺達の周囲を飛び回る、観察か確認をされている? 魔手でゆっくりと猫タワーならぬ毛玉タワーを作ってみる、以前は喜んでもらえたはずだ。
『~!』 『~~~♪』
『~~♥』 『~♪』
魔手の間を飛び回り、どこで掴まっているのか不明だがよじ登り、コロコロと転がり落ちてはふわふわと飛んでくる、意思の疎通が未だ出来ていないのであの時と同じ個体かなのかどうかは判別できないが、違うのだったらこういうのが好きな種族なのだろう。
なんとなく公園で幼児を見守るおじさん、という光景を幻視したが今それ事案になるから注意しないと、野生動物でも子供には過保護だ。
目の前で魔手やアイビーに掴まってはコロコロふわふわしている毛玉を眺めながら考える。
この毛玉達は外でも頻繁に見かけるという存在ではなかった、なのに今またこうやって遭遇して、あの時と同じように遊んでいる、これが外で遭遇した毛玉と同じ個体なら扉を越えられる存在だということだ、恐らくは強さ以外で資格を有している存在だろう、条件はわからない、実は強かったりしたらどうしようか、毛玉の四騎士とか、めっちゃコロコロしてるけど。
アイビーはこの敵意のない無邪気な毛玉にどう対応していいのか困惑中だ。
ひとしきりコロコロと遊んだあといつもだったらそろそろ帰る頃合いかな? というタイミングで毛玉達が何時もと違う行動を取った。
俺達から少し距離を置くような位置で四方に漂い、そのまま周囲をくるくるふわふわと廻っている、俺の頭の何処かで<Option!>と言う声が聞こえた気がしたが無視する、全部視界内だから動きはよく見えている、そしてそれぞれが微妙にふわふわの上下するタイミングをずらしている、丁度俺達の周りで波を作るような上下動。
『~~ー~』 『~ー~~』
『ー~~~』 『~~~ー』
今までと様子が違う、楽しげだった雰囲気から真面目な雰囲気へ、相変わらず何を言っているのか意味は判らないが、時に高く、時には低く、囁く様だが真剣な祈りか詠唱のような気配。
囲まれた内側に何かの力が満ちてきている、魔力視で視ると各毛玉を全て結ぶように魔力が繋がって輝いている、四角の中にXを描く様な魔力、俺達を貫いているが特に身体に干渉を受けている気配はない。
(何をしようとしているのでしょう?)
『俺にもサッパリだけど、この状態でも悪意や敵意は感じないんだよなあ、だから手を出して良いものか一寸迷ってる』
『!』 『!』
『!』 『!』
詠唱の終わりなのか声を揃えるように、でもやっぱり聞き取ることが出来ない何かの囁きの言葉が紡がれ、一気に俺達の身体を光が包み込む。
(ま、御主人様!)
『気を張って意識を強く保つんだアイビー!』
眩いばかりの魔力を伴った光が爆ぜる、直接のダメージはないが魔力振動による脳ごと揺さぶるような感覚と浮遊感、視界が一瞬暗転して次の瞬間見たことのない広場へと変わる。
波打ち揺さぶるような感覚が抜けていく、これはあの毛玉達に強制転移でもさせられたのか?
アイビーはグレー表示、気を失っているようだ。
目の前にはまだあの毛玉達、相変わらず敵意も悪意も感じない、そして奥から一人? いや一体の気配、ここに呼んだのはソレだろうか?
「この者達の無礼をお詫び致します、新たな森の王よ。」
言葉とともに奥から姿を表したのは一体の木の人形、絵画デッサン用の全体がのっぺりとしたアイツのような人形だが全身随分とコケに覆われている、顔の上半分を覆う木のマスクにショートボブのこれまた木でできた髪、何故か片腕で右腕はついておらず歩く動作もややぎこちない、身体が限界を迎えようとしているのか?
『何が起こっているのか理解出来ずに混乱しているのだが、言葉は通じているのか? あと森の王とは? そう名乗った事は無いんだが』
なんせこっちには念話しか会話手段がない。
「問題ありません、そしてこのような姿で申し訳無く思います、もはや自らの修復もままならず半ば朽ちるがままの状態でして、森の王とはその者達が貴方の事を報告する際用いていた名称です、その者達が外の森で他者を王と認めると言うこと自体が珍しいのですが、なるほど試練を超えて自力でこの地にたどり着かれるだけのお力を示されたのですね。」
なんだろう? こっちの話を聞いているようでいて、少しずれてる気がする。
あの毛玉やこの地についても色々と知っていそうだし、とりあえずは話を聞いてみなければ。
話してる最中に壊れたりしなきゃ良いけど。
年度末の多忙で3月中少し更新が不定期になるかもしれません。
ご迷惑をおかけしますが更新は続けますので、お付き合い戴ければ幸いです。




