能力やスキルはちゃんと使いこなしましょう。
彷徨うだけ。
結局のところあの泥沼の魔物の正体は不明のままだった、触手しか見えてないから仕方ないんだが、今考えると本体さえ見えれば【看破】で名前位は判っていたかも知れない。
だからと言って俺やアイビーの石化への耐性を試すような危険を冒す気にはなれないが。
未だに自分の能力やスキルを上手く把握しておらず使いこなせていないという事だ、素直に反省しておこう。
『なあアイビー、君は自分が見た魔物の強さとかをある程度でも判別できるのかい?』
(見た魔物、というよりその魔物から放たれる魔力や気配を元に判断して居ます)
ん? それってアイビーにも【気配察知】かそれに似たスキルが発現している? 森の氾濫でかなりの魔物の因子を摂り込んでるし実際かなりの数を倒しても居る、レベルはなくとも経験で能力が上昇して行くのがこの世界だし、なによりアイビーは特殊な存在だ、俺並に変化を起こしていたとしてもおかしい事じゃない。
(あとは御主人様から放たれている気配とでも言うものでしょうか)
そういえばアイビーは翠様の気配も捉えていた、そして普通は神々の神気とでも言うべき物を受けて意識を保っている方が難しいとも言われた、そんな物騒なモノ撒き散らしながら登場しないで頂きたいものだが、普通はそんなホイホイ地上に顕現する事もないからいいのか? その割に黄色様は像が出来たらまた来るってやってくる気満々だったような気がするが。
いや考えが変な方向に向かった、アイビーのことだ。
『アイビー、ひょっとして気配を探る様なスキルが発現した?』
(ハイ! もっとお役に立てるようにと考えていましたら【気配探知】というスキルが!)
見えない尻尾がブンブンと振られているところを幻視するほど嬉しそうな反応、しかし【気配探知】って俺の持つ【気配察知】より上位じゃないだろうか?
ちょっと失礼してアイビーを鑑定してみる。
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名前:アイビー 魔樹の眷属
所持スキル
【花術※】【蔦術※】【鞭術※】【知覚】【感受】【解体】【気配探知】
保有能力
【念話】【鑑定】【全視界】【悪食】【伸縮】【再生】【毒生成※】【蜜生成※】
【庭園】【吸血】【成分調整】【硬化】【隠蔽】【偽装】
特殊能力
【ストレージ】【ステータス】【分離結合】【擬態】【分体操作】【魔樹同化】
※は複数の技や効果を持つスキルや能力
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間違いなく【気配探知】だ、【気配察知】が相手が出す気配を探るだけなのに対して、この【気配探知】は特定の気配だけを探ったりも出来る便利なものだ、と思った所で何が原因なのかに思い至る。
これはあれだ、俺がレーダーに頼っている弊害じゃないだろうか。
俺の視界の中には感知したものを表示するゲームで言うレーダーのようなものが半透明のまま常時存在している、魔力や空気振動を感知できるようになってからは任意に簡易3Dマップ表示にも出来る様になったし、見ようと思うだけでサイズを自由に調節できる。
この画面、探知情報だけかと思っていたら色んな情報を組み合わせて表示しているようで、一度目撃したら表示にも名前が表示できるし俺が敵だと認識すれば敵性として表示される。
表示アイコンも色々と変えられるので人種なら人形っぽく、ゴブなら常に敵性の真っ赤なゴブ顔アイコンが表示されたりする、他は基本目視されるまでただの光点表示だ。
何が言いたいかというと、これを見るだけで周囲の状況が大体判ってしまうのだ、そのせいで特定の気配だけを探ったりする必要が殆ど無い、結果経験が足らずスキルは下位のままなのだろう。
【解体】も増えているがこれはもう魔石の抜き取りや素材剥ぎ取りをやりまくっている結果だとしか考えられない、魔物によって魔石の位置は殆ど決まっているが基本体内にあることが殆どなので結局バラす必要がある、【暴風熊】のように額に魔石があるタイプの方が珍しい。
素材の剥ぎ取りを意識するようにしてからはアイビーは器用に茨の棘をナイフ代わりにして解体を行うようになった、正直俺より上手いので俺はもっぱら力仕事と不要部分の処理がメインで分担している、俺も猪バラしたりした経験位しかないからそのうちアイビーに教えてもらおう。
レーダーの表示より【気配察知】の方を強く意識しながら森を進む、いつまでも毒々しい所に居たくないしトレント達は俺を見るとジリジリと後退りするように逃げていく、解せぬ。
と思っていたら逃げるのはトレントだけに留まらず、この辺に居る浅層や中層で見かける魔物まで俺を見ると慌てたように逃げていく、一方それを見て上機嫌なアイビーだけが対照的だ、ますます解せぬ。
『アイビー魔物除けとか何かしている?』
(いえ、私はいつものように虫除けだけです)
『虫除けの力が上がって魔物除けの効果がついたとかは』
(ありません、ですが魔物がこちらを避ける原因には思い当たりがあります)
『思い当たる原因?』
(はい、御主人様から放たれる気配が先程からより強くなっています、具体的には先程の泥沼の後から、明らかにあの魔獣より上の強者の気配です、私は御主人様と同一化しているので気配は知れても影響を受けていないのではないかと、眷属ですし)
ん? おや? 自分のステータスを見る、何も変化はない、それでも戦闘後に気配が変化した、という事は何かが経験を積んだということだ、気配を放ちそうな物といえば一つしかない、【覇気】だ。
じっと眺めてみる、こんなのだだ漏れにしたまま生活なんて出来るはずがない、やっぱりだ、能力だけどオン、オフが切り替えられるようになっている、オフだオフ。
修羅の国の住人じゃあるまいし、覇気なんかだだ漏れで移動しても面倒事が起こる未来しか浮かばない、お約束でいけばボス級に喧嘩売られたり変なのに懐かれたりといったところか、勝手な話だがこっちから喧嘩売る分には気が楽だが売られるのは面倒だ、相手は嫌かもしれないが、ゴブなら殲滅だ。
さっきの猪解体発言がフラグになったんだろうか、目の前にでかい猪がいる、前の世界であればどこかの山でヌシでもしていそうな4メートル近い猪、鑑定すると【突撃猪】とでる、間違いなくあの巨体の突進が武器だろう。
猪はその厚い皮下脂肪と力強い筋肉をもち意外と身体能力も高いという厄介な動物だ、それが魔物化しているのならもっと厄介だろう、こっちを敵として襲ってくるのならの話だが。
今の俺は樹であり、相棒のアイビーは蔦である、そしてどちらも隠蔽持ちで相手より気配の察知も探知も先だ、これだけで相手からの先制は減る。
何も知らずに通りかかるところを魔手で捕まえて魔力を抜くだけのお仕事です、最初に少し暴れたが魔手で持ち上げて幾重にも巻き付く、後は吸収用の触手で吸って終了、アイビーがストレージに取り込んでサンプル採取完了だ、飛沫さんの解析が終了していない物はストレージから出せなくなるが今まで1時間とかかったことはない、サンプルは内部で丸々コピーしていても不思議ではないし、クローン化して牧場ができていると言われても信じるだろう。
世界を創造する存在に一般常識を求めてはいけない、何が起こっても関係者が原因なら諦めるしか無いのだ、俺も関係者とか言わないでほしい、今は樹だけど俺はただの一般人です。
薬草を採って森を進み、毒草を採って森を進み、木の実や茸も採って森を進む、ついでに時々魔物も狩る、相変わらず中層の魔物程度だ、俺の想定では氾濫のボス級が出てきてもおかしくなかったんだが、森の氾濫のボスは神々も想定外だったようだし、いまいち強さがどう変化するのかわからない。
扉の声が言った[資格]とは森の氾濫のボスを退治した者、という意味ではないかと俺は睨んでいる、この場所はボスを倒せるだけの力を示した者だけが生き残れる場所、そう思ったのだがちょっと期待はずれ、というか予想よりも魔物の強さが上がっていない、森は更に奥があるし何処かにまた同じように力を示す試練の場所があるんじゃないかと思うのだが。
俺が勝手に勘違いをしていただけなのだろうか?
まさか泥沼のアイツがその存在、そんな訳はないと思うのだが。
そんなまさか、ねえ?
思った以上に筆が進まず。




