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あれだけやったけどしっかり見られていたようです。

こんな筈じゃなかった。

 <汝ヲ資格アル者ト認ム>


 森に響いていた<囁き>にも似た声だが、これは俺のイメージではもっと機械っぽい、出逢ってすぐの頃のヌシ様に似たイメージを受ける。

 苔生し傾く巨木が形造る自然のアーチ、一見するとそうとしか見えない、いや()()()()()()その場所に、綺麗に誂えて作られたかのような表面を磨かれ黒光りする石製の両開きの扉が現れていた。


 (御主人様(マスター)これは一体なんでしょう、先程の声は森の()と似た感じを受けましたが、こちらに干渉してくる感じはありませんでしたし)


 『紛れもない扉ではあるけど……アイビーの【鑑定】にはどう出ている?』


 ([扉]とだけ、詳しい材質などは不明のようです)


 やはり普通の鑑定ではその位か、だが俺の【鑑定】にはもう少し詳しい情報が書かれていた。


 『これは[封印領域の扉]と言うものらしいよ、領域って言う位だから扉の向こうに空間があるのは判るけど、何を封じているやらだね』


 生前の知識(お約束的展開)から考えるとこの先にある物はいくつか想像がつく、こっちの世界で本当に()()が当てはまるかどうかはまだ分からないが。


 『とりあえず資格ありって扉を出したんだから先に進んでみればいいのさ、いきなり戦闘になる可能性もあるけどね』

 

 入ってボス戦、それも無くはないと考えてはいるがその可能性は低いだろう、もしそうなら扉を出す時点で試練だなんだと言って来てる筈だし、扉もこんなにのっぺりとしたものではなく恐らくはもっとそれっぽい物を用意する筈だ。


 扉の前へと進む、高さにして5メートルはあろうかという両開きの黒い扉が音もなくゆっくりと開いていく、何かの結界のようなものが在るのだろう、入り口に光のカーテンのような物がかかっていて中の様子は覗けなくなっている、扉が動きを止めるのを待って中へ、特に抵抗を感じることもなく光のカーテンを抜ける。

 中は光に包まれた空間、前方に出口であろう同じ扉が開いているのが判る、俺達が中に入った時点で役目を終えたと言うことなのか、背後の扉は音もなく閉じ光の中に滲むように消え去る、ここは空間を繋ぐ移動通路でとりあえず見えている出口まで進まないと帰還もできないのだろうと判断する、ここに閉じ込めるというつもりでは無さそうだ。


 通路を抜け、出口と思われる扉を抜けると、また森だった。

 森の扉を抜けた先が王宮とか街だったら面白いかなとふと思ったが流石にそんな事はなかったようだ、第一そんな所にいきなり出たら襲撃と間違われてしまうだろう。


 探知を最大にして周囲を確認してみる、20メートル程の森の中の広場の中央にいま出てきた石造りの門と扉だけが存在している、見えている森の中も結構明るく、深層部分の人を寄せ付けない苔生した原生林的な雰囲気とはまた違う、やや開放的な樹海のような雰囲気、あの門のギミックから考えてもおそらくはこっちこそが本当の深層部だろう、あの声が言っていた何らかの<資格>を有する者だけが侵入を許される場所、だとすればここは……。


:~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ホードウェル王国中央防衛都市ホードリア、この街は現在の王都ホードレルへの流通の要所であり大森林災害の防衛拠点でもある、建国当初は王都として発展を続けていたが大森林の侵食が進み、一度大森林の氾濫を抑えきれずに被害を受けたことから防衛都市として外壁を強化されたという経緯を持つ。


 「建国当時、森はまだここから数日の距離であったと言う、それが今や半日とかからぬとはな。」


 午前中から読み続けた今回の森の氾濫についての規模や被害を纏めた各種報告書から目を離し、やや疲れた目を押さえながら男は忌々しげに呟く。

 細身では在るがしっかりと鍛えられた身体は未だ若手に混じって訓練をこなす程元気だ、細めで彫りが深く引き締まったその顔立ちは鋭い目も相まって猛禽をイメージさせる、髪には白い物が多く混じる様になったがそれが逆に一層男の雰囲気に合っている、とはこの男の妻やメイド達の言だ。

 ホードリア現領主、ラースティム=ニルス=ホード公爵は報告書の内容を読み、自分達の無力さを突き付けられたような思いをしている最中だった。

 領軍、傭兵を含む全体の死者34名、重傷者を含む負傷者86名というのは大森林氾濫時の被害としては最低の数字ではある、しかしこれは溢れてきた魔物に対処しただけの数字だ、氾濫時に現れるという首領級の魔物と対峙していたらこの数倍、いや報告書の通りであったならこの街が滅んでいた可能性もあったのだ。


 森に氾濫の恐れあり、という報告と共に傭兵組合からガレリア師が持ち込んだ魔石型の魔道具、その内容には恐怖したが何よりもその技術に驚かされた、そしてそれを氾濫の情報とともに傭兵に託したという<徘徊者>なる術士の存在、話では姿を見せぬまま魔道具を預けてまた森へと向かったという、それほどの力があるなら是非この領に迎えたいものだが未だ人物像は判らぬままだ。

 魔道具と<徘徊者>の情報は王の元へも送っているので王都の方でも該当者を探しているかもしれぬが、ガレリア師や傭兵組合に情報がないのなら見つかる可能性は低いと私は見ている。

 王国と隣国である魔王国との関係が良好なお陰でこの都市は隣国の魔王国からも商人がやってくる、商人やその護衛の傭兵から流れてくる噂というものはあながち莫迦にできぬもの、それらの情報が集まりやすいのが各地に支部を置く傭兵組合だ、その関係者が知らぬのなら王都ですら情報は集まらぬであろう。


 報告書を見直す、そこに記録されている今回目撃された首領級と思われる魔物の姿、過去の記録にも無い大きさの2つ頭の黒い魔獣、そしてその魔獣と敵対していたと思われる樹の魔物。

 黒い獣は炎を吐き、樹の魔物は杭を振り回していたそうだ、樹が杭を振り回すというのがよく解らぬが、【妖樹(トレント)】の変種だったのだろうか?

 その二体の魔物のどちらが氾濫の首領級であったのかは不明とされている、森の氾濫で飛び出してくる魔物は首領級を倒されると弱体化して統率力を失う、今回は二体が同士討ちになったらしく互いに巻き込むように霧と大きな炎の柱が上がった後に氾濫で飛びだして来た魔物の弱体化が確認されている、霧が晴れた後は樹の魔物の残骸と思われる物が遠目に確認されておるだけだ、確認された炎の跡地が熱すぎて観測していた斥候が未だ接近できておらぬのだという。

 黒い魔獣が最後の力で魔力を暴走させたのではないか、と報告書では複数の観測者の意見から推測が添えられている。


 氾濫が二箇所で起こり、別々に首領級が出てきたという話ならまだ記録にも残されている、だが同じ場所の氾濫で首領級に匹敵する魔物が二体というのは記録にない、いや過去にもあったのかも知れぬが、その場合恐らくは生き残りが居ないから記録も残っておらぬと言うべきか。

 氾濫が終わっても居ないのに首領級同士が潰し合っていたというのも聞いたことが無い、通常森の氾濫時は人里を目指して魔物が暴走するが首領級が倒されるまでは互いに襲いかかったりするものではない、やはり森に何かの変化が起きていると思ったほうがいいのかも知れぬ、幸い此度の氾濫によるこちらの被害は少なく、沈静化した今であれば森の調査も進めやすかろう、伐採も急務では在るが森に異常があったのなら今後にも影響するやも知れぬ、領軍と傭兵組合に調査の連携をするよう話しておかねばなるまい。

 傍に控えていた側近に考えを伝える、後は任せておいていいだろう。


 「街に氾濫終息の宣言をだせ、各所の被害確認と物資の支援はもう始めておるな、なら各門の通行も通常に戻せ、ついでに馬と私の鎧を出せ、首領級の戦闘跡を確認に行く。」

 

 事務方の者達が連絡に走る、さて、なぜ入れ替わりでやってきた妻がロープを持って笑顔なのか知りたいのだが? 誰か? おーい!

しっかり目撃されてました。

公爵様真面目な人の筈だったのに気がつくと妙なことに。

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