頑張った俺の戦いは芸として認められたようです。
またも説明。
いい感じでシトシトと雨を振らせていた雨雲も夜明け前には薄くなり、ところどころ星空が顔を覗かせている、恐らくはこのまま今日は晴れていくだろう、この世界に生まれてまだ日は浅いが数日雨が降り続いたという事がない、スコールのような土砂降りもないし雷雨すら非常に珍しい部類だ。
神が実在して力を振るう世界だから天候にも神の手が入ってるのかもしれない。
などと、現実から逃げようとしている思考をそろそろ連れ戻さねばなるまい。
一度閉じたステータスを開く。
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名前:レージ 種族:彷徨う魔樹
所持スキル
【格闘】【投擲】【術理】【属性技】【発酵】【罠作成】【棍術】【槌術】【気配察知】【人形師】【薬物】
所有能力
【念話】【範囲伝達】【振動感知】【全視改】【魔法】【結実】【熟成】【合成】【悪食】【隠蔽】【偽装】【覇気】【看破】【薬効】【再生】
特殊能力
【ぬしぺでぃあ】【ストレージ】【特殊鑑定】【ステータス】【魔操戯】【眷属化】【異界魔法】【並列思考】【コンソール】
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またなんか増えてる。
それだけ【炎獄ノ獣】との戦闘が俺の経験になったという事だとは思うが、それ以上に神々の祝福の影響のほうが大きそうだ。
【魔手格闘】は【格闘】へと変化した、今まで魔手しか使ってなかったのが全身使うようになったからだろうか? 【棍術】【槌術】は間違いなく【炎獄ノ獣】と杭で戦闘した結果だろう、残念それは纏めて杭術だ、とか言われなかったようで逆に安心している俺がいる。
【気配察知】は戦闘経験で得たものか赤の神の祝福の方なのか判断に悩むが使えるなら便利なのでどんどん訓練するとしよう、【薬物】は青様の祝福で出たものだろう、生命や回復を司る神様だし、ただ薬物というざっくりとした区切りが逆に怖い気もする、ここから細分化するんだろうか?
【人形師】はまたも黄色様だろうか、と思ったら翠様の影響で生えてきたスキルだった、魔手で自分を操った事が原因? 彫刻などの芸術は黄色様、芸事とかは翠様の領分らしい、それにはなんとなく納得ではあるのだが、俺の移動や戦闘が芸扱いされてしまった気がする!
【覇気】【看破】【再生】は戦闘と赤様の祝福だ、どこから覇気や看破なんて出てきたのか不明だがスキルではなく身体につく能力らしい、【炎獄ノ獣】と一騎討ちしてたのを赤様が評価してたけどそのせいだろうか、再生は間違いなく赤様が司る物だ、アイビーがかなり高いレベルで使える能力、この世界にレベルは無いがあったらきっと上限近くまで上がってるんじゃないだろうか? 看破の出処は不明だけどタイミングから見て祝福の影響に間違いない。
【薬効】はスキルと同じく青様だろう、合成でつくる成分は基本的に一つか二つの効果で即効性だがこちらは実や葉に上手くすれば複数の薬効成分を付与できる、素材として使うことが前提の能力なようだが、実よりも日持ちする葉向きの能力だろうか、合成と複合できるようなら今までより強力な実も出来そうである。
スキルも能力も増えた、スキルや能力が増えるのは便利でいいんだが、使いこなせなければ宝の持ち腐れだ、しかし上手く使える自信がない、祝福で増えた分とか特にそうだ。
一応本人がそういう行動をしない限りスキルとかは発現しないらしいのだが、俺の場合オマケ感覚で簡単に増えてしまっている気がする。
本来スキル無し状態から発現まではそれなりに熟練が必要な筈なのだ、どう見ても俺はその辺すっ飛ばしてきている、その経験の浅さが怖い。
スキルが増えるという事が自分に身に付いたのではなく、それを上手く身に付けてみせろと言われているような気になってしまうのだ、この考えはきっと間違ってないと思う。
難しく考えた所で何も変わらない、そもそも俺は考えるのが苦手で結局は自分でやるしか道は無い、今回も同じ結論で一人の反省会を終える。
日の出が近いのか大分明るくなってきた、そろそろ移動しよう。
森に漂っていた覆い被さるような重い雰囲気も例の囁きも既に無い、以前と変わらない森のように見える、ただし魔物の数は圧倒的に減っているし森を漂う魔力はやや濃い目だ。
ここから数年でまた森が氾濫する位増えると言うんだから魔物の繁殖力は凄い、特にゴブなんかは異常過ぎる、やはり駆逐推奨だ。
森が氾濫するとそれから暫くはその森の生態系は野生動物がメインになるらしい。
野生動物がこの森に入り、魔力の影響を受ける、場合によっては魔力溜まりに棲み着く、そうすることで魔力を効率良く循環させるための魔石が出来るのだそうだ、魔石が出来た動物は身体能力が上がる等の影響を受け魔物化する、あとは環境に応じて繁殖して更に細分化していくのだという。
これは森に限らず魔力が濃い地域で見られる環境への適応行動なのだと貰った知識の中にあった。
ここで面白いのはこの世界で一般的に人と呼ばれる普人種は森に入っても魔石が出来ない、それどころか魔力溜まりに長く居ると身体に悪影響を及ぼすこともあるらしい、そのへんは環境による適応等もあるという事だが。
そして普人種が亜人種と呼ぶ他の人種は環境により魔石を生み出すことがあり、そうなった存在は高い身体能力をもったり魔力への高い適性を持ち、濃い魔力下でも影響を受けることは少ないのだそうだ。
魔石を持つに至った魔物は高い繁殖力を持つのだが、人種になるとこれが逆になる、魔石を持った亜人種はその魔力の高さ故に繁殖力が下がるという、これは魔力が上がることで寿命が伸びることに影響するのではないかと黒い子様は言っている、他の人種よりも繁殖力が高いとされる普人種でも高い魔力を持つ者は老化が遅くなり、魔石なしでも繁殖力が衰えるという。
魔力溜まりからはその濃い魔力の影響で時折突然変異とでも言うべきモノが生まれたりもする、アイビーなんかもどうやらそうらしい、植物や無機物は普通動かないから影響を受けやすいのかもしれない、変化は様々らしいが、アイビーのような蔦が居たということは意志のある石とかも居そうではある、見分けがつかないから解らないが、だとしたらこの世界の賢者の石は職業[賢者]の博識な石となるのかもしれない。
以前より少し明るく感じる森の中層、以前はここに魔力のドームが出来、中央にボスがいた。
今はドームの名残すら無く、魔力も霧散して周囲と変わりない、丸く抉るように陥没した中央部には奴が成長する時に食い散らかした魔物の残骸が転がり、腐肉に虫が群がっている。
そして奴が成長する時にその中に居たであろう、肉の繭とも言うべき物の残骸が横たわり、こちらも腐肉を狙った虫に覆われている、森の食物連鎖だ、特に何かするべきではないだろう。
鼻があったらこの辺は腐肉ですごい臭いになっているのかもしれない、以前なら嫌悪感もあったかもしれないが最近は頻繁に魔物を粉砕だ発酵だとやっている俺である、臭いもないので慣れてしまった。
他に特に見るべきものはない、アイビーに聞いても特に興味を惹かれるものは無かったようだ。
今日のアイビーは静かでおとなしい、というのも何やらイメージを練って自分の戦闘スタイルを作り上げようとしているようなのだ、勤勉である。
魔物の数が減り森の氾濫の脅威は過ぎ去った、ならばもうこの辺にいる理由もない、訓練しつつ先へと進むとしよう、目指すは森の深層である。
気配を探り、各種探知に気を配り、地面から子供サイズの人型を作り出して一緒に歩くように操作する、森は更に密集して原生林と言った感じになってきた、根も入り乱れ始めている、実に移動しにくい、そして地面が露出していないので人型を操作しづらい、【人形師】のスキルがあるから人形を作ればうまくいくかもしれない、寛げる場所に移動できたら人形を造ることも考慮しつつ土の人型の維持を諦める。
何かの気配は感じるが感知には何もかからない、中層に居たときより更に漂う魔力は濃いが、それだけだ、いくら氾濫で魔物が減っているとは言えどうにも違和感を感じる。
巨木のアーチ、そんな雰囲気の苔生し傾いた巨木の正面に立ったときだった。
静まり返り、鳥の囀りさえ遠くにしか聞こえない場所で、それは突然聞こえてきた。
<汝ヲ資格アル者ト認ム>
はい?
普人種と亜人種、同じ人という種扱いですが色々とあります。




