その思考内容に意味があるのか判断出来る存在は沈黙していた。
少し短めな休憩回。
目を覚ますと雨に濡れる知らない森の中だった。
意識が落ちる前は森の浅層外縁部、という位の認識はあったんだが、今のここは景色が一変している。
周辺の樹が俺ごと蔦に覆われてしまっていてもう何年もここにこうして存在していたかのような状態だ、まあ鑑定するまでもなく注視したとたん視界内のどこを見ても[アイビー]と表示されている、どうやらアイビーが偽装ネットのように周辺に拡がって俺自身を目立たなくしてくれているようだが、こんな状態生前に葛に飲み込まれた森とかの写真で見た気がする。
『おはようアイビー、俺が気を失ってからどの位経過した?』
(御主人様もうお身体の方は大丈夫ですか? 御主人様が森に戻られてから約半日が経過しています、罠に捕らわれていた魔物は全て処理済ですが、私では穴をどうする事も出来ませんでしたので穴はそのままにしてあります、回収できた魔石は様々ですが全て【ストレージ】内へ入れてあります)
ストレージの情報を確認してみる、これはコンソールに追加された、と言うか統合された機能の一つで、ストレージ内の物を一覧として見ることができる、名前や【ぬしぺでぃあ】の情報を元にした検索やソート機能、便利なところでは条件をつけて検索した結果を自動で複数にフォルダー分け出来たりすることだろう、内部がどうなっているのかは判らないが使うのに便利になる分には何も言うことはない、完全に便利なPCにストレージ管理ソフトが付いた感覚だ。
試しに俺が入れたものとアイビーが入れたもので条件をつけて検索したら普通に分けて表示できたので中身を確認してみるとアイビーの放り込んだ魔石だけで300個以上もあった、そして不思議なことに魔物の死体が完全な姿で放り込まれている。
俺が魔物の死体をストレージに仕舞おうとすると入口の大きさ制限があって、全身をそのままで、というのはまだ出来ない、それが出来ているのだ、【暴風熊】や【森林鬼】のような大きなものまで全身が揃っている、これは回収サンプルとしてもありがたい、ストレージの入り口問題が解決するまでサンプルはアイビーに回収を頼むのもありかもしれない。
『アイビーが集めた魔石だけでもかなりの数だな、それでも魔物の数が減ったように見えなかったのが凄いけど』
(群れるタイプの魔物が多かったというのも原因かもしれません)
『なるほど、どれだけの範囲から集まったのかは判らないけど群単位だとすればあの数も納得か、特に浅層の魔物は群れる傾向が強いみたいだし』
【小鬼】を筆頭として森の浅い層に住み着く魔物は家族単位や群単位で行動する物が多い、この森が群単位でも賄えるほど餌が多いというのもあるだろうが、弱い魔物が少数で生きていける程優しくもないと言う事もあるだろう、なんせ油断すると俺みたいなのが襲ってくる。
周辺を確認しても探知には何もかからない、森に雨が落ちるだけである。
アイビーに偽装を解いてもらうと見慣れた森へと様子が変わる、どうも俺を隠そうとするあまりアイビーが深く覆い過ぎていたようだ、割と広い範囲で周辺の樹も巻き込んでいたし変なのが近づいた所で今のアイビーを相手に何かできるとも思えないので問題にすることでもないが。
ゆっくり、と言うよりのんびりと森を進む、途中に転がってる死体や棘板の残骸等は回収しておく、後で纏めて処分しよう、冒険者が見たら素材の剥ぎ取りとかするんだろうか? 今後のことも考えて剥ぎ取りとかもしておいたほうがいいのかもしれない、いろいろな事に使えそうだし。
アイビーに回収をお願いすると蔦を網状にして被せてそのまま収納していた、俺の魔手の動きとか見てやってみたら出来たらしい、実は俺より優秀なんじゃないだろうかこの子、俺のほうが添え物になる日が来そうな、下克上されちゃうのだろうか。
壁を崩して溝を埋めようと思ったら予想以上に魔物の死体が詰まっていた、ので更に<泥濘>化させて土に飲み込ませ、<粉砕>を使って処理し、埋め戻しながら【発酵】を使う、とりあえず死体を粉砕処理しておかないと今度はゾンビ大氾濫とか笑えない事態が発生してしまいそうだ。
落とし穴の方はもう酷い有様だった、作ったの俺だけど、懐かしの【魔咬蟲】と【咬蟲】のバイト蚯蚓コンビが集まってきてたのでまとめて穴の中に<炎槍>複数の炎の槍を目標に撃ち込む、を叩き込むがここで問題発生、自分の赤の力が上昇してたのを忘れてました。
普通は赤い筈の炎の槍がなんだか青白い感じに、まあ今回は穴の中に撃つんだしいいかと思いつつも白様のジト目を思い出す、威力は落ちるが赤い炎の<火槍>の魔法を造っておくべきだろう、いっその事一度全部の魔法の設定を見直して見たほうがいいのかもしれない。
なんとなくで造ってしまった魔法が結構ある、使えてしまっているからいいが、一度しっかりと設定を組みなおさないと面倒の元かも知れない。
とりあえずそんな事情は穴の死体には関係ないので次々に撃ち込み、飲み込み粉砕発酵埋戻しの繰り返しである、雨の中この辺の地下の温度が上がったせいで地面から蒸気が上がっているがすぐ冷えてくれるだろう、多分、燃える程の温度ではないからきっと大丈夫だ。
燃えるほどの温度で思い出すが、そういえばボスが湧いたあの場所はどうなったのかが気になる、埋戻しも終わるので明日にでも行ってみよう、今日のところは葉を作り直してゆっくりしよう。
さっきから無言になってずっとクネクネしてるアイビーも労ってやりたい、本体に繋がる蔦がまた少し大きくなってる気がするのは成長したという事だろうか? かなり戦闘もしたようだし大きさを戦闘向きに最適化したんだろうか?
アイビーは俺と違って生粋のこの世界産のイレギュラーだ、今後どう成長していくかは俺も気になる、出来れば彼女にも世界を敵に回すような事はしないでほしい、敵が多いって疲れるばっかりで碌な事がないんだし。
歩きながら以前より少し厚めの葉を生み出して枝の隙間を埋めていく、と言うか普通に厚めなのが生えてきた、これ落葉させるたびに丈夫な葉になったりするんだろうか? 既に魔力を流すと硬化して剃刀のようになる事は確認している、強度がないからほんとに弱い相手にしか使えないが、俺の樹としての種別は針葉樹ならぬ刃葉樹になるんだろうか? 既に陣妖樹ではある気がする、下手に言葉に出したりしないほうがいいのかもしれない、俺の存在がどこで確定されるか判ったものじゃないのが怖い、【混沌の種】1例目の竜とかどうやって種族名確定させたんだろう? 原初の竜って呼ばれてるだけあって子孫が竜として確定したからそう呼ばれるんだろうか?
だとしたら俺も黒い子様に言われたように子孫を残せば確定する? だが想像してみてほしい、俺みたいなウネウネした奴が徘徊する世界、それは異世界は異世界でもコズミックホラーに片足突っ込みそうな気がする、銀の鍵とか持ってないと普通は行けない系の。
そんな世界にはしたくない、癒しが無くなってしまう、そういえば最近あの毛玉にも遭遇してない、結局正体がよく判らなかったが、今回の氾濫は大丈夫だったんだろうか? 何らかの意思はあったようだし声の影響を受けている可能性もある、もっともあの小さな姿では森の氾濫に参加するというより完全に巻き込まれる形だろうが、無事であってほしいと思う。
ちょっと切ない考えになったせいか気がつくと魔手を伸ばしてアイビーをコチョコチョしていた、喋りだす前は結構こうやって撫でてあげたりしていたが、喋るようになってからこういう触れ合いは減った気がする。
今やアイビーは癒しというより頼りになる相棒であり秘書みたいな存在だ、ってことは触れたらセクハラ?パワハラか?クネってた幹をコチョコチョしてた手を引っ込めて葉を整える程度にしておく。
これが原因で下克上とかされたら笑いものだろうが、よく考えたら元の世界ではたまに聞く話だった、コワイコワイ。
(!~~~!!♥)
アッ!




