嫌われたわけではない、と思います。
ステータスから消えたアイビーはぷるぷるクネクネしている。
消えたアイビーを探せ!
いやそんな大仰なものでもないんだが、ステータスから消えたのなら本体を確認してみればいいじゃないの? という謎の声に導かれてアイビーを鑑定してみる。
【アイビー】
あるぇ? そこは何かお約束的なものがあるんじゃないの? 鑑定したら全く別の種族に進化してましたとかさ? 鑑定結果何も変わってないよ? じゃあステータスにいるはずのアイビーはどこ行った?
『アイビーさんやちょっといいかね?』
プルプルからくねくねに変わったアイビーの動きを見ながら声をかけてみる、何やら流れ込んでくる感情が声をかけちゃいけないんじゃないかという気にもさせるがそこは仕方ない。
(は、はひっ! ま、ご主人様! 何か御用でしょうかっ)
『あーごめん、邪魔してしまったかな』
一人で妄想爆発させてるところに声をかけるとかしたくなかったんだが、もう少しで日も暮れる、行動を起こす前に確認位はしておかないとだめだろう。
(問題ありません、何かお手伝いすることでも出来ましたでしょうか?)
『アイビー、君に確認してもらいたい、君は今自分自身を鑑定できるかい?』
俺にはステータスという能力があって、自分を鑑定すると例のステータスが表示される、だがあれは特殊能力らしいので他者に簡単に発現するものでもないような気がする。
ただしアイビーはずっと俺と繋がっているせいで俺の影響をかなり受けている、いやメンタル的な意味じゃなく、能力的な部分でだが、ならアイビーにもステータスは発現しているかもしれない、鑑定は発現しているようだしおかしいことではない。
(これは……)
そう言ったきり、突然アイビーとの意識の接続が切れる、鑑定するとアイビーと表示されるが文字が暗くなっている、ゲームかよ! いや解りやすいしこの能力仕込んだのが誰か考えればこうなっても違和感ないけどさ、ハイ、元の知識は当然俺ですとも。
アイビーは全く動かなくなった、呼びかけにも応えない、意識の接続が切れたということは気絶しているか一時的に行動不能状態になっているのだろう、原因は……おそらく自分を鑑定したこと。
視界内に何かが点滅する、感知範囲を表示しているレーダーの下で何かカーソルっぽいものが点滅している、意識を向けてみると文字が表示される。
<個体名【アイビー】より許可申請が出ています、許可しますか?>
初めて見るメッセージだが、アイビーから許可の申請? 今まで会話で済ませてそんな事したことも無かったがどういうことだろう? 直接聞いてみたいがアイビーはいまダウン中だ、その状態で申請を出してきたということは回復に必要なことだろうか? 相手がアイビーなら悪い事にはならないだろう、とりあえず許可の方向で、これ選択ボタンとかないけど思考に反応するのかな?
<個体名【アイビー】よりの申請を許可しました>
またもメッセージ、思考制御で行けたらしい、何を許可したのかも解ってないが、多分アイビーが目覚めるには必要な事だったんだろう、と思いたい。
はっ、宿主変更許可とかだったらどうしよう! 俺捨てられちゃうの? いやいやいや多分そんなことは……でも頼り過ぎで呆れられてる気もするしなあ、もう少しアイビー大事にしよう。
アイビーが沈黙してしまったらまた俺一人だ、久しぶりのぼっち状態、もう少し暗くなったら移動を開始するとしよう、いつアイビーが目を覚ますかわからないが森の異変は待ってはくれない。
脚を引き抜きウニョウニョと運動、随分と柔軟性が増したんだぜ? 抜いたあとの穴はちゃんと魔法を使って埋めておく、毎度やってることなのでスムーズだ、いや自分のステータス確認してからもっとスムーズだ、これはあれか、ステータスを見たり鑑定するまで効果が確定されないとかいうどこかのかわいそうな猫さん理論なのか?
俺の種族の確定とか見るとあながち間違ってもいなさそうな気もしてくる、ひょっとしてアイビーのダウンもそれが原因だろうか?
日が暮れる、おお星が見える、森だと上空の切れ間から少し見える程度だがここだと地平近くまで見ることが出来る、満天の星空、うむ、静かに深く感動、危ない、眼があったら汗が流れていたかもしれない、移動しよう、まずは森の中を確認しなければ、そして今度来るときはアイビーにも見えるときにしよう。
柔軟性が増した脚、移動速度は大人がのんびりとマラソンする程度になった、これ素早い敵がでたら一方的にやられるしかない、だって樹だもの、動けるだけで御の字だ、普通はそうなんだがこの世界は強くなければいけない、弱肉強食だ、俺肉は食べないしムシャムシャもしないけど。
ならば素早く、右の魔手を伸ばす、まずは1本、目一杯前方に、地面を穿つ、左の魔手を伸ばす、こちらは2本、前方の樹を1本ずつ別々に掴む、幹の中程から上を狙う、後はタイミングをずらしつつ一気に引き寄せる!
身体が魔手に引き寄せられるように宙に浮く、タイミングを合わせて右の魔手を2本伸ばして先の樹を掴む、地面を穿った分はできるだけ元に戻しながら回収、左の魔手で地面を穿つ、樹が地面を這うだけだと思わないでほしい、頑張ればこうやって空中移動? だって出来る。
ちょっと風でガサガサうるさい、風で繭状に防御とか出来ないだろうか? 移動するだけで魔力使っちゃうが高速移動はできるのだ、修行の成果ともいえるがこの姿は絶対に人には見せられない、明らかに異常すぎる姿だ、魔物は見ていても狩るから問題ない。
しかし森の囁きはまだ続いている、というか少し囁きの間隔が短くなってる気がする。
森の中層に以前は感じられなかった圧迫感がある、ここからは警戒しながら歩きだ、それが普通だとか言わないでほしい、移動時間の短縮は社会人に求められるスキルだ、ただし極めると自分の首を絞める事になる、何事も程々が大事だ、なんの話だったっけか?
とりあえず前に見たドームの近くへ、思った通り圧迫感が強い、そしてドームの範囲が前より広くなっている、【魔力視】で確認、ドームの分の魔力が邪魔で中がよく見えない、前より魔力の層が厚くなってるようだ、では新機能のサーモだ、相変わらずドームの中は魔物で一杯だが、うん、予想は悪い方に的中してしまったようだ、ドームの中に物凄い熱源がある、これ燃えてるんじゃないかって位の熱源、それが周囲の魔物を喰らっている。
肉眼では姿を捉えきれない、ドームの魔力と他の魔物たちが邪魔をしてしている、サーモで見ると立ち上る熱気が動いているのが判る、喰い散らかされているらしい周囲の魔物の熱も視える、叫び声とかは聞こえないのが余計に不気味だ。
今は力を蓄える段階なのか、まだドームが壊れるような気配はない、囁き声も相変わらず<集え>だ、少し離れて定期観察するとしよう、気は滅入るが既に人種には警告を発している、他に行く理由もない。
しかしどうするか、中にいるあのボスっぽい何かはやたらと温度が高かった、そんなんがあの量の魔物を喰らって力をつけたら森が燃えたりしないだろうか?
火の属性っぽいよなあどう見ても、俺との相性は最悪だ、それでも戦う必要はあるんだろう、俺の中の何かがそう告げている、出来れば奴の属性魔力をこっちで頂きたい所だが無茶は禁物だろう。
アイビーが目を覚ます気配もまだないし、目覚めに俺の魔力をごっそりと使う可能性もある、繋がってるし、おや? 繋がってる範囲がこっちも広がってるな、再生可能範囲分だけでも俺の内部に取り込めてしまえばアイビーを失う可能性はだいぶ少なくなるんだが、あんな高温の相手をした時に今のアイビーではきっと身体を保てないだろう。
今はとりあえずドーム内に入ろうとする魔物を減らしつつ動きの訓練も兼ねてこちらの魔力を貯めるか、全て止めるのは無理でも少しは奴の成長を邪魔する事が出来るかもしれない。
皆催眠状態でこっちに興味を向けないから一方的な虐殺にしかならないんだけどな。
あれ? 俺のやってることって奴とたいして変わらないんじゃないか?
さあまたプロットがおかしくなってきた!




