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あの時あんな事を、なんて後悔はよくあります。

学芸会の樹は動いてはいけないのです。

たまに発言が許されるらしいですが。

 男衆が【小鬼(ゴブリン)】の死体を引き摺って行く、胸から魔石を取り出し、しっかりと頸を落とす、ついでに片方の耳を落とす、やはり斧が便利らしい、さっき投げてたよなそれ、耳はよくある討伐証明部位とかそんなのだろうか?

 [魔術士]は他の人達と情報交換をして居るようだ、[奴隷]のおねーさんも声は聞こえてたようだし、時折首を傾げているが何か気になっているんだろうか、怪しかったと言われてるんだったらゴメンナサイするしかない。

 [猟師]のお嬢さんはしきりに周囲を警戒してはゴブリンの死体を草原の方に運んで纏めている、気配とかを探るのがあの中で一番上手なのかもしれない、[猟師]ってくらいだし、でも俺には気がつかない、不思議だ。

 [商人]のおっちゃんは他の[奴隷]と荷台を片付けたり馬車を街道に戻したりしている、馬は馬車とかの専用種だろうか、足腰がどっしりとしている、サラブレッドじゃなく道産子かモンゴル系って感じで力強さを感じる、踏まれたり蹴られたりしたら痛そうだ。

 [魔術士]が魔術で地面に穴を開けている、【小鬼(ゴブリン)】の死体を埋める? 俺の感覚だとそのまま地面に呑み込ませた方が早そうだけど、まあ手出し出来ないから遠目に眺めているだけだ、目を離した隙に全部土に呑み込ませるいたずらとかやってみたいけど流石に我慢だろう。


 2時間ほどゴソゴソやっていたが他に通りかかる者も遭遇するモノも居らず、結局彼女達はまた馬車で移動して行った、今度は皆馬車に乗って走り去ったところをみるとここに来た時は警戒していたらしい。

 そういや[魔術士]ちゃんは記録の魔石を手に持って難しい顔をしていたが、起動した様子はなかった、何か気になったんだろうか。


 (素材の魔石が珍しかったのではないでしょうか? あれは中層の【森林鬼(フォレストオーガ)】の物でしたので)


 そうなのかね? 中層ではそんな珍しい物でもないけど、でも考えれば森の中で人に出会った事がない、あれ? ひょっとしてここの人達って殆ど森に入らないんだろうか。


 (【小鬼(ゴブリン)】相手にあれだけ苦戦しているようでは森の中ではただの餌かと)


 納得だ、厳しいようだが確かに彼女達ではキツイかも知れない、いや彼女達の実力がこの世界レベルでどの位かよく判らないんだけどな、なんせ初めて遭遇した生身の人種だったし。

 思ってたよりも早くこっちでやろうとしてた事が片付いてしまった、とりあえずこの世界の人と接触して森の氾濫の危険性を伝えるつもりではいたが、思ったより上手くやれたんじゃないだろうか。

 怪しい存在が森にいるなんて噂は流れそうな気はするが、しばらく姿を見せなければ大丈夫だろう、人の噂もなんとやらだ。


 移動は暗くなってからにしよう、流石に動いたら目立つ位置にいるので警戒を、来るときはあまりしてなかった気もするが、しておこう。

 日暮れまでのんびりだ、葉をくすぐる様にそよぐ風が心地良い、森の奥ではなかなか感じられない明るさと風、ちょっと贅沢をしている気分だ、樹になってからこうした部分の感性に変化が出ているのを感じる。


 ─ 汝を歓迎する、まつろわぬ魂持つ存在(モノ)


 ─ 我はうつろう存在(モノ)、まつろわぬ存在(モノ)、姿無き翠


 ─ 自由で在れ、新たな器持つ存在(モノ)


 ─ 汝に風の祝福を


 枝葉の擦れるザァッと言う音と共に周囲の木立を揺らす強めの風が吹き抜けた、今のが翠の神だろうか、既に声と同時に感じた神々特有とも言えるその気配は感じられない、流石は風を象徴とする神らしい慌しさである、もらった知識によると人種の描く肖像画では風になびく半透明のベールを被った無貌の女神に描かれることも多いという事だが、姿無きって位だしさっきの風のほうがきっと正しい姿なのだろう。

 なんにせよ翠の神にも受け入れて貰えたらしい、ありがたいことだ。


 (ま、御主人様(マスター)、今のは一体……気配だけで押し潰されそうな感じがしましたが)


 どうやらアイビーには声は聞こえなかったが存在は感じ取れたようだ、随分と感じ方に差があるけど。


 『翠の神が俺がこの地に生まれた事を歓迎してくれるってさ』


 (では先ほどの気配と風は……)


 『そう言うことだね、翠の神は初めてだけど、この様子だとそのうち他の神々も何か言って来そうだ』


 (普通は一柱の神と接触があったというだけで十分に凄い事だと思うのですが)


 『白と黒の女神からはそれぞれお茶に招いて頂いたしね、白の女神からはこの世界の基礎知識を教わったし黒の女神からは魔力の使い方を直接教わったようなものだし』


 (……は、はぁ)


 珍しくアイビーの困惑した様な気配と声。


 『俺という存在はこの世界では少し特殊らしいんだ、だから神々は俺が世界にとってどういう存在になるかを見極めようとしている、歓迎するって言ってもらえたって事はそれなりに認めて貰えたって事だと思うよ』


 (……)


  とは言え、あのタイミングでどこを認められたのかよく解らないんだけどね、自分の意志でウロウロしてたのが翠の神の気を惹いたかな。

 何故か歓喜の感情を駄々漏れにして小刻みにプルプルしているアイビーは放っておいて少し気になっていることを確認して見るとしよう。


 森でも、さっきの遭遇でも探知系のスキルさえくぐり抜けて俺は見つからなかった、魔法まで使ったというのにだ、ここしばらく確認していなかったが一度見ておく必要があるだろう、俺のステータスって奴を。

 ということで、呼び出してみようステータス、数カ月ぶりに。


==========

 名前:レージ  種族:彷徨う魔樹


 所持スキル

 【魔手格闘】【投擲】【術理】【属性技】

  

 所有能力

 【思念伝達】【振動感知】【全視改】【魔法】【結実】【熟成】【合成】【悪食】【隠蔽】【偽装】


 特殊能力

 【ぬしぺでぃあ】【ストレージ】【特殊鑑定】【ステータス】【魔操戯】

==========


 さて、どこから突っ込むべきだろうか、やはりここからか?

 種族:彷徨う魔樹って、そりゃ確かににさっき彷徨う存在だって名乗ったさ、まさかそれで確定しちゃったのか?

 もう種ではないから【混沌の種(カオスシード)】では確かにおかしいだろうが、自分で存在を名乗ったことがそこまで影響しちゃったのか、そっかー、ソウナンダ。

 しかも微妙にアレンジされてるね魔樹って、魔法使う樹だから間違っちゃいないけど、悪役に一歩近づいた気分だよ。


 能力欄が一つ増えてる、特殊能力らしいが、うん間違いなく特殊だよね、前2つはとりあえずスルーしよう、あれは特殊すぎるし。

 鑑定やステータスまで特殊枠なのか、そういやうちの鑑定はぬしぺでぃあと連動するんだった、そりゃ特殊だ、ではステータスは? いま表示させてるこれって特殊なんだろうか?

 そう思ってステータスさんを見つめているとそこに重なるように更にウィンドウが開く、なんかデタ。


 【ステータス】 自分や他者の情報を解りやすく表示できる。


 情報少なっ! つまりは今表示されてるこれがステータスという能力の効果なのか? 普通は自分のステータスもこんな感じには見ることができないって事なんだろうか、もしくは他者のステータスがこんな風には表示されないって事か、そっちは鑑定さんも影響していそうだが、色々と情報を集めないと判らないな。

 

 そして見慣れない【魔操戯】だ、間違いなく魔力関係だとは思うが。


 【魔操戯】 幾つもの魔力関係のスキルを統合し異世界の知識と融合した結果誕生した、魔力を自在に操る事ができ、操作にかかる魔力の消費を大幅に減らす。


 魔力操作の上位版みたいなものだろうか? 魔手とかがスキルから消えてるから統合されたのだろう、ひょっとすると俺の使う脳内ディスプレイとかもこれのおかげかもしれない。


 後はまとめていってみよう。


 【術理】 魔術に関する高度な知識を持つ。

 【属性技】 各種の魔力属性を攻撃に上乗せする事ができる。

 【投擲】 物を投げる為の補正がつく。

 【思念伝達】 会話を用いずに自分の思念を相手に伝えられる、映像や単語がよく伝わる為会話ほどの便利さはない。

 【振動感知】 翠の祝福の結果、空気や魔力の振動も感じられる様になった。

 【全視改】 全視界に様々な能力が付与され統合された、魔力視、熱線視、暗視。

 【魔法】 本来魔物が使う属性魔力をそのまま利用した攻撃法を自在に使いこなす為の技術。


 所々で説明さんが投げやりになってる気がする。

 そして自分で思ってたよりなんかすごいスキル覚えちゃってたりする、【術理】さんとか【属性技】さんとか。


 【魔法】さんそんな位置付けだったんですね? 生活魔法ってつまりは属性魔力をそのまま利用するから魔術じゃなく魔法扱いなのか、でもって人種は属性魔力の扱いが上手くないから効果も低いと、なるほどなー。


 そして明らかにされる【思念伝達】の微妙さ、やはり会話風に使うやり方は意思が正しく伝わりやすいようだ、他にこんなやり方してる存在があるか不明だが。

 念話とかになるともっとまともになるんだろうか?


 【振動感知】さんは翠様の祝福でなんか名前変わらないまま進化したっぽい、空気振動まで感知できるってここに俺の聴覚があるんだろうか。


 そして進化したぞと自己主張してる【全視改】、界じゃなく改さんだ、暗視と熱線ってつまりはサーモグラフィーだな、動物や昆虫の眼の能力を得たらしい、これで暗くても大丈夫だ、調節もきくし便利便利、全視界サーモはちょっと酔いそうではある。

 

 【結実】 自分の身体に果実を実らせる事ができる。

 【熟成】 【完熟】が進化した能力、完熟のスピードが上がる他、実の状態で初期発酵まで行うようになった。

 【合成】 【結実】で作る実の成分を調整、合成する。

 【悪食】 本来自分の毒になるような成分でも無害で取り込み自分の糧にすることが出来るようになる。

 【隠蔽】 自分の気配や魔力を希薄化させて他者に悟られ難くする。

 【偽装】 自分の姿が周囲に溶け込むように変装したり、上手く物を隠したりできる。


 大体見たまま思ってたままの能力だ、【完熟】さんは【熟成】さんに進化したらしい、ミルク成分の実とか作ったらチーズの実とか出来るんだろうか? 畑に俺一人いたら食糧事情が変わりそうだな、食べる人がいないけど。

 

 【隠蔽】【偽装】、どうやら見つからなかったのはこの2つのおかげらしい、原理とか全く解らないけどコソコソしてアイビーくっつけてたのが役に立ったんだろうか? 魔力とかも希薄化って他のスキルとも連携取ってるっぽい気がする。


 さて、ここからが問題です。

 俺のステータスから【つた】であったアイビーが消えました。

 他のスキル見ても統合されてるような能力はないしどこに行った?

 いや本体は目の前でまだプルプルしてるけど、あれぇ?

消えたアイビーは一体どこに?

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