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そして半年が過ぎた、らしいです。

第2章の幕開けになります。

 中央大陸の更に中央に位置するところ、そこにその森はあった。

 周辺の国々や住民によって呼び方は様々、ただひとつ共通しているのはどの地域でも<大森林>といえば普通はこの大陸中央の大森林の事を指す。

 其れほどまでにこの大森林は巨大で、強大で、凶悪な事で知られている。

 周辺部を伐採しなければ森林は瞬く間に広がり、やがて大陸を飲み込むだろう、とまで言われるほどだ。

 実際森林に国土が隣接している周辺の各国は国家事業としてこの森の周辺に拠点を築き、伐採を行っている。

 それでもせいぜい出来る事は森の拡大を止める程度、更には数年に一度は森から大規模なモンスターの氾濫が発生し、周辺の村や国の拠点すら呑み込まれる事がある。


 過去何度か周辺の国が己の国の威信をかけて森へと軍を進めた事がある、しかし結果はどれも惨憺たる物であった、道を切り拓くのに苦労し、拠点を築くのに苦労し、築いた拠点を昼夜を問わず襲撃してくるモンスターに苦労し、やがて維持する事が出来ずに放棄する事になった。


 故に人々はこの地をこう呼称する、【魔の大森林】と。


 だが全てが悪い事ばかりではない、この大森林も周辺部を含め、浅い層ではそれなりに資源も豊富で、伐採される樹木も材木や燃料として利用でき、森のモンスターから採取される魔石は森の外の物より純度が高く、魔術を使う者達が高値で欲するのだ。

 そうなると一攫千金を夢見てハンターや傭兵が現れる、無秩序になりがちな彼らを纏めて管理する為、周辺国は結託して彼らを纏めるギルドを作り上げた。

 出資各国の狙いとしては魔術に使われる魔石を一国に独占させない為、森の利権を独り占めさせない為であったが、組織としては上手い事これが纏まり、登録している者達からすれば魔石の鑑定や仲買を探したりの余計な面倒が減って、手軽に魔石を金に換えられるという事で好意的に受け入れられ、発展していった。


 そんなギルドのひとつの役割に森へと出入りする各人から情報を集め、氾濫に備えるというものがある、ギルドが出来、如何に人が纏まろうとも未だに森の氾濫は警戒すべき事に違いは無く、僅かな前兆も見過ごす事は許されなかった。

 そんな周辺のギルドに、ここしばらく報告が上がり続けているひとつの事実があった。


 <大森林外縁、周辺部にかつて無い規模でゴブリンが目撃されている>


 ゴブリンが森の周辺で確認される、それ自体は珍しい事ではない、連中は貪欲で、自分達が有利であるようなら動物だろうが家畜だろうが、おまけに人だろうが襲いかかるのだ、そして繁殖可能なら次々に増える。

 少数ならば問題は無い、ただそれがかつて無い規模で確認されている、という事が問題だ。

 森の氾濫の兆候なのか? 内部でなにか異変が起こったのか? 詳しい事は解らないまま、とりあえず警戒を強め、ゴブリン討伐の依頼を増やす事にするしかなかった。




 人々が警戒を深める大森林の奥の一角、そこにぽっかりと50メートル程の円形の空間があった。

 地面は整備されたかのように綺麗に均され、一面背の低い草で覆われている、勿論内部に背の高い樹が生えていないので空も良く見える開放的な空間となっている。

 かつてここに生えていたと思われる樹は今は広場の片隅に無造作に転がされ、勢いある草に覆われつつある、野生動物が巣をつくったのか地面には草に隠れる様にして掘り起こされた穴が見えている。

 そんな広場のほぼ中心に高さにして約3メートルほどの樹があった、細く枝分かれした触手のような無数の根を地面に下ろし、広く生い茂った枝葉を広げる、幹の表面はびっしりと蔦に覆われてこれまた蔦から伸びた葉に覆われている。

 どう見ても普通の樹の筈なのに、周囲の状況を見る限りどう見ても普通とは思えない、そんな樹が風に葉を揺らしている。


 『良い天気だねぇ、光合成もはかどるってもんだよ』

 (肯定します、本来植物とはこう在るべきだと()も思います。)

 『何か含みのある言い方だね?』

 (御主人様(マスター)の行動に口を挟むつもりはありませんが、本来植物、それも御主人様(マスター)の様な樹木(方々)は普通【小鬼(ゴブリン)】を追い回したり襲撃したりする物では無いのではないかと)

 『ま、それはそうなんだけどね? どうせ放って置いた所で森や植物には殆ど影響は無い存在だし、でも俺の中の嫌悪感って奴があいつらの存在を許せなくてね』

 (なのでつい見かけたら駆逐すると)

 『はっはっは、そういうことだね、でもアイビーも大分言葉を使うのが上手くなったね?』

 (こうして御主人様(マスター)が折を見ては話かけて下さいますから)

 『念話も便利ではあるけど、こうやって会話する事もやっておかないと俺自身が喋る事を忘れちゃいそうでね、そのついでというのも変だけど、こうして話し相手がいるってのは思っていた以上に嬉しいものだしね』

 (()でも御主人様(マスター)のお役に立てているのでしたら望外の喜びです)


 俺は風に吹かれたわけでも無いのにクネクネしはじめる()を見る、別に今まで腹話術とかを使っていたわけではない、さっきまで話していた相手はこの蔦、半年ほど前は鑑定しても【つた】としか表示されなかったこの子である。

 俺から離れないという意思を見せた時から、時折その気分や感情みたいな物を感じる事は出来たもののこうして会話するまでではなかった。

 あれから森を移動し、ゴブを見つけては駆逐し、また移動し、ゴブを駆逐し、俺それしかやってないな! とふと思った時の事だ、気がつくと俺に絡んでいた筈の蔦がゴブを絞めていた、全身をぐるぐる巻きにしてギリギリと。

 なんとなく得意気な意思を感じたので褒めてやると嬉しそうにウネウネとし、それ以降は話かけたり意見を聞いたり、仲間意識が芽生えてしまった、もっとも意見を聞いても基本こっちに反対したりはしなかったが。


 この頃になると念話で大まかな意思を、蔦の動きで身振り手振りと意思を伝えていたのだが、何時までも蔦と呼ぶのも可哀想だと思い、アイビーと名を付けたところ急激に成長、半日で俺の全身を覆い尽くすように蔦を伸ばし、葉もしっかりとした物へとなった。

 そしてなんとその翌日には、俺が【思念伝達】を頭の中での念話と口頭での会話のイメージで使い分けるのと同じ様に、念話と会話とを使い分ける様になっていた、しかも若い女性の声のイメージまで作って(作った訳ではありません)だ、ただ会話がたどたどしかったのでそれ以来余裕があるときは俺とこうして話している、いまでも少し言葉遣いがおかしい時があるが特に会話指導とかはしていない、俺も別にそんな事気にしてないし、話しているだけで経験を積んで最適化がされていく物らしいしそれでいいのだろう、俺への態度や呼び方とかも特に指定したりはしていないし、言った覚えも無い、何もしてはいないのだよ?


 今では身体に巻いてる蔦を鑑定するとどれも【アイビー】とでる、かなり複雑に分岐して俺に絡んでいるんだが名前が固定になったのだろうか? 他の樹に絡まってるのを鑑定して見ても【蔦】であるし、話かけても動き出す気配もない。

 (()御主人様(マスター)の薫陶を受けて成長しておりますから! 他の()達とは違います!)

 薫陶とか、俺そんな立派になった覚えないんだけどな、ヒャッハーしてただけだし、だが恐らくはアイビーも俺に寄生したことで【混沌の実(カオスシード)】としての影響を受けたのだろう、そう考えるのが自然だ、明かに他の蔦とは違うし、割と最初から違ってた気もしないでもないけど。


 随分と変わった成長をしたものだと思う。


登場キャラが増えたよ!

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