この姿で癒しを求めるのは間違っているのだろうか。
熱さましのシートを貼りつつの更新。
周囲から知恵熱ではないかという声が届いていますが
本人も否定出来ません。
見れば見るほど毛玉である、ほんの指先程度の光に小さな羽毛と言うか繊毛のようなものがゆらゆらと揺れ、ふわふわと気ままに飛んでいる。
【鑑定】を使って見てもなにもでない、試しに枝を揺らして見る、僅かに風がおこるが気にした様子も風に押される様子もない。
【魔力視】してみる、光の強さは森で見かける属性魔力より少し強い位、見た目は通常視界と何も変わらない。
謎である。
とりあえず無害そうなのでそのまま眺める、羽とか使ってる様子はないが、と言うよりそんなものすら見えないが、相変わらず自由にふわふわと周囲を飛びまわる。
触れられるんだろうか? ゆっくりと魔力干渉型の魔手を出して、指を伸ばしてみる。 寄ってきた! なんだろう、指を伸ばすとすんすんしてくる子猫にイメージが被る。
指を右に揺らすと右へ、左に揺らすと左へ、皆そろって追うようについてくる、ちょっと可愛くなってきたが魔力が視えているという事の証明でもある。
物理干渉型を伸ばして見る、こっちだとどうだろう、乗っかってきた!? 灰色のサボテンの上に灯る豆電球、絵にしたらこんな感じだろうか。
小さいせいも在るのだろうが重さを全く感じない、彼ら?は魔手の手触りでも確認しているのだろうか?さわさわと表面をくすぐる様な感覚がする。 目の前に指を伸ばして見る。 驚いたように跳び退るがまた興味深げに寄ってくる、眼らしきものも見えないが俺と同じ様に視えているのだろう。
指を登ろうとして失敗したのだろうか、下に転がる様に落ちるもまたふわふわと周囲を飛ぶ。 うん、ご機嫌そうだ。
『~~!』 『~♪』
『~~~~?』 『~!』 『『『~~~~~!!』』』
彼らが喋っているのだろうか? 何かが囁くような声、声?
音が聞こえている、あまりにも自然だったのでそのまま忘れる所だった。
あのとき俺は鳥の最後の鳴声を聞いた、今だってこの毛玉達の囁きが聞こえている。
意識を失っている間に身体がまた最適化を行った様だ、ステータスを確認したが新しい能力もスキルもなかった、ならば声が聞こえるのは基本的な能力、【簡易鑑定】で表示できないくらいレアな聴覚とかではないと思う。 実はこの【環境への最適化】こそが隠されてる最大の能力の様な気がする。
俺の精神も含めて、環境への最適化が行われているんじゃ無いだろうか? 俺が俺で居られるように、姿や環境で自我を失なわない様に、簡単に飛沫の世界の敵となってしまわない様に。
毛玉達が一斉に魔手から浮かび上がる、何か意見の一致があったのだろうか、そのまま揃ってふわふわと音もたてずに森の奥へと消えていった。
鳥の囀る声、葉が風にそよぐ音、何処からか水が沸きだしているのかチョロチョロと流れ落ちる水の音もする、手脚を動かせば草の擦れる音もする。
人工的な音では無く、自然が生み出す、命在るモノ達が生み出す音だ、押し寄せてくる感動に身が震える、毛玉達が飛びたった後放置していた魔手もフルフルと震えている。
嗚呼、世界はこんなにも音に溢れていた!
視覚は良好、聴覚も良好だ、この身体の何処で見て、何処で聴いてるのか全くもって不明だが、そんなものだと納得しておこう、深く考えても解るとも思えない。
よし、移動しよう、この森の情報を集めねば。
繁みを利用して森を移動する、気分はスニーキングミッションだ、途中で他の樹に絡みついていた葉の多い蔦を剥ぎ取り、身体に巻きつけておく、気分的なものだが偽装だ偽装、迷彩服とまではいかないが自分自身がそんな物だ、遠目にはばれ難いだろう、【振動感知】にも少しは仕事してもらうために常時意識しておく、こちらは相変わらず反応が無い。
あの毛玉達が向かった方向、彼らが向かった先に何があるのかが気になる。
俺の脚は思った以上に動きやすいが、丸太越えや小川を跳び越すのには向いていない、そして移動速度が遅い。
頑張っても子供の脚で走った程度の速度だろう、それも平野部で、だ。 森では移動が制限される、何が居るかもわからない状況だし、別に急ぐ理由も無い、警戒しつつゆるゆると進む。
ここまで遭遇した相手といえばいつもの【魔咬蟲】とそのお仲間の【咬蟲】、あとは【森林蛇】、敵も味方もウネウネニョロニョロしたのばっかりじゃねーか! あ、魔力は全て美味しく頂きました。
少し癒し成分がほしいです、もふもふしたのとか、例の毛玉とか、毛玉達以外は今のとこ見つかっても逃げられる気がするが。
こちらの友好的接触のつもりが、相手にとって全くそう見えないというのは何とかして頂きたいものだよ。
え?毛玉の正体じゃなかったのかって?
正体不明の何かですよ!




