幕間8
暗い。ただひたすらに暗い。
何も感じない。そこには何の感情もない。
「あなたはだあれ?」
音だ。音が聞こえる。
「ねぇ、あなたはだあれ?何をしてるの?」
声。これは声。
「アナタハダアレ」
「私!?私はアプロテ!あなたは!?」
「アナタハ」
「ん〜。どこから来たの?」
「ドコから」
「何でこんな暗い洞窟にいるの?」
「くらい?」
「なんかふよふよだね?私のこと見える?」
ミエル?みえる。見える。
見たい。
「きゅっ!」
「ん?どうしたの?見える?」
「見え、る」
光。光とこれは色。
暖かい?色。
「あなたはだあれ?」
「あなたは……」
暖かいきれい、同じなりたい。
「え!」
視界が持ち上がり、視線がアプロテと同じ高さになる。
「驚いたわ!それがあなたの本当の姿、なの?」
アプロテの姿を元に、アプロテの思考から割り出した姿を重ねた。
「アプロテと同じ姿?」
「そうね!同じに見えるわ!性別は違うけども……服はどこから出したの?最初の黒く丸い姿は何だったの?」
「同じ!」
「……まぁいいわ。また遊びに来るわ」
アプロテがいなくなると、急に自分の周りが寂しい物に感じ始めた。
今までは感じたことのない寂しさ。
1人の時は気にならなかったのに。
次の日、アプロテは食べ物を持ってきた。
真っ赤な丸い果物。
「これ食べると、元気になるし、頭も良くなるのよ」
「しゃくしゃくおいしい」
アプロテは毎日のようにやってきて、いろんな事を教えてくれた。
「今日は何を教えてくれるの?」
「そんなに毎日教えることはないわよ。今日はゆっくりする日なの」
「アプロテ疲れてる?」
「う〜ん、最近忙しいから」
次の日、アプロテは来なかった。
来ない。アプロテ来ない。いない。
前は平気だったのに。いや、知らなかったと言うべきか。
暖かさを知らなかったから、寂しさも知らなかった。
1人は、寂しい。
次の日、アプロテは普通にやってきた。
「昨日、来なかった……」
「あぁ、うん、忙しかったのよ」
「忙しい?」
「そう、私も力がたまってきたから、いろいろ任されることが増えてきたの」
「1人は寂しい……」
「あらら。そか〜。でも、これから忙しくなるから、これない日も増えると……そんな泣きそうな顔しない!会えなくなるわけじゃないから」
「でも、1人は寂しい……」
「う〜ん」
アプロテが腕を組んで考えるようにうんうんとうなる。
「そうだ!私も使徒を持てるようになったのよ!」
「しと?」
「そう!本当は私の事を地上に喧伝するための使者なんだけど、感覚を共有できたりして便利らしいわ!」
「便利?さびしくない?」
「そう、離れていても、感覚を共有できたりするらしいの!だから、あなたさえ良ければ、私の初めての使徒になって!」
「……なる。アプロテと一緒がいい」
「なら、明日は儀式の準備をするわ」
翌日、アプロテに手を引かれるまま、小川のそばへ連れられていく。
「さぁ、まずこの水を浴びて。そう。それで、これを飲んで」
アプロテにいわれるがママに儀式を進める。
「汝…え〜っと、そういえば名前を聞いてなかったわ」
「名前?」
「そう、あなたの名前」
遙か昔に何かいわれた気もするが、今はそんな物を持ってはいなかった。
「ない」
「う〜ん、それは困るわね……よし、私がつけて上げる。それでいい?」
「アプロテに名前付けてほしい」
「分かった。儀式が終わったら、つけましょう。きっと気に入るわ」
そういって儀式を続ける。
「それで最後に……目を瞑って」
一通り何か食べたり飲まされたりした後、額に手を当てられる。
目を瞑ると、柔らかい感触が口に伝わる。
その瞬間、凄まじく激しい激流が体に流れ込むような衝撃が走る。
「これは?」
驚いてアプロテに問いかけたが、アプロテは意識を失い地面に倒れている。
「アプロテ?」
しゃがみ込み、アプロテの体を揺するが、反応がない。
よくわからないが、アプロテの体から強く感じていた暖かいエネルギーが少なくなっているのが分かる。
「どうしたの?儀式はこれで終わりなの?」
「アプロテから離れろ!この化け物!」
いきなり、巨大な何かがぶつかってきたような衝撃で吹き飛ばされる。
数メートルは飛んだだろうか、意識が飛びそうになる頭を手で押さえ、何とか体を起こして声のした方を見る。
そこには、アプロテがいた。
いや、アプロテより幾分体つきががっしりとしていて、髪の毛も色は同じだが柔らかそうな長髪ではなく、短かく直毛だ。
そして多分男だ。
「だれ?」
「そこから動くな!」
動かないアプロテの所に戻ろうとしたら、またさっきの何かで吹き飛ばそうとしてきた。
だが、今度は目の前の男が腕を振るのが見えたので、その衝撃を受け流すことが出来た。
「なっ!?きさま!」
「ねぇ、あなたは誰?アプロテはどうして動かないの?」
「何を言う、きさまがやったのだろう!この化け物め!」
「僕じゃないよ。それに化け物じゃないよ、僕は……僕は――――」
「ラフエル、あなたはラフエルよ……」




