幕間7
「くくく、これじゃぁ私に会いに来たのか、戦を楽しみにきたのか、分からんではないか」
俺はまた、あの黄昏時の部屋にいた。体はあまり自由にならない。
俺を覗き込んで楽しそうに笑っているロウレスの姿。
その笑顔だけを見ていると、普通の少女に見える。
楽しそうですね。
「楽しいよ。次にどうなるか分からない物語ほど、盛り上がることはない」
そうですか?こちらとしては、すでにチェックメイトした状態だと思っているのですが。
「ほう、おもしろいことを言う。ポーンを取ったところで、メイトにはならんぞ?」
小国とは言え、一国の王をポーンですか……
「ふふん?元々が妾の兵ですら無いからの」
敵を拐かし、必要が無くなれば切り捨てる。ロウレス様らしいと言えば、らしいですね。
想った後に、何が「らしい」のか、分からなくなる。
「む?その言い方は流石に傷つくと言うものだぞ、想い人よ」
想い人とはまた、思わせぶりな言葉ですね。
「ほう!体が成長したと言うに、記憶はまだ取り戻しておらぬか」
あ〜、やはり過去に何かあるのですね。たまにフラッシュバックのように頭によぎるので、困っています。
「どれ」
ロウレスが俺の真横に座り、手をかざしてくる。
とても甘く良い匂いがしたが、その手のひらはやはり冷え冷えとしている。
「ん?嘗めても良いのだぞ?」
な、嘗めません。
「これは、体の問題じゃな。力を取り戻してはじめて、伴ってくる物だの」
そうですね、アプロテ様もそう言っていました。
「嫌な名前を出すでないわ」
ロウレスが少し嫌そうな顔をして手を引っ込める。
その途端、空間が少し振動したように感じる。
「ほれ、お主があの女の名を出すから、気づかれたではないか」
アプロテ様、ですか?
さらに強く、空間が振動する。
「ふぅ。人の身にあっては寛容になったかと想えば、嫉妬深い事よ。人より先に見つけただけだというに」
空間が連続で振動する。
良くわからないが少し怖い。
「そろそろお暇することにしようかの、良いか想い人よ」
あ〜、はい。
「大事な物を取り戻したければ、必ず妾の所にくるのじゃぞ?」
必ず伺います。ロウレス様の思い通りの形か分かりませんが。
「くくくっ。記憶を失っていてもかわらんのう、良い目じゃ」
ロウレスが俺の顔を覗き込んでくる。
そして、顔を寄せ、俺の唇に重ねようとした瞬間、黄昏の世界が砕け散る。
「本当に恐ろしいのう、あやつは。ではの」
額に柔らかい感触を残し、世界が消えていく。




