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私を追って人間堕ちした神様〜真面目令嬢は、天然わんこに執着されています〜  作者: 焼きそばこっこ


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9/11

ちょっとまった

エンペリオン皇城。 黒大理石と金細工で造られた堅牢かつ壮麗な城の門をくぐった瞬間、私はどこか視線を感じた。もしかすると、私は歓迎されてないのではないかと気後れしたが、そんな心配は無用だったようだ。


エントランスに整然と並ぶ騎士、執事、侍女たち。 全員が、まるで「あり得ない奇跡」を目撃したかのように目を丸くし、口ぐちにざわめいていた。


「お、おい……見ろよ……陛下が女性をお連れになっているぞ……」

「しかも、その手を……優しく引いておられる……!?」

「そもそも何?!あの超絶美女は! 人なの????」

(超絶美女って…私?…この顔面国宝の隣にいれば誰でも相乗効果で美人に見えるわ…)


使用人たちのひそひそ話から察するにどうやらヒュリオス陛下が女性を連れてくるのはよほど珍しいことらしい。なんの知らせもなく唐突に城に入ってきたのだから、彼らの驚きと好奇心の目も強い。


「陛下! お帰りなさいませ!!」


そこへ、私の認知では「薄幸そうな眼鏡の側近」――モースが、涙を流しながら駆け寄ってきた。


「ああ、無事にご帰還されて何よりです!あの陽キャ神…断りの1つもなく、突然この街に転送してくるものでしたから、陛下が振り回されてないかほんっとうに!心配でした…!」


「いや、彼女には世話になった。一つ貸しもできてしまったようだな」

「それなら良いんですが…して、どうしてこの国(エンペリオン)に、ロムティア様がいらっしゃるんでしょうか…?ご一緒に住むとは伺っておりましたが、私どもも、まさか今日いらっしゃるとは思わず…」


モースは、急に来た公爵令嬢を一体どう扱えというのか、気が気でない様子で、ちらちらとこちらを見てきた。確かに国王が隣国のパーティーに行ったと思ったら、得体もしれない女を携えて帰ってきたとなったら、他の使用人たちも困惑するだろう。


「なんの連絡もなく貴国を伺ってしまい、申し訳ありません…お邪魔になるようでしたらすぐに下城して、民宿にでも泊まりますのでお気遣いなく」



そう言うと、少しヒュリオス陛下は、重ねていた手を腰に回し、自分のほうにぎゅっと寄せ、不機嫌そうな声を上げた。

「彼女は私の大切な人だ。丁重に扱うように」


モスは困ったような笑顔を見せて言った。

「そうは言っても、一国の公爵令嬢をおもてなしできるような準備はまだできておりません…民宿とは言いませんが、城下町の五つ星ホテルの方が充実したサービスを受けれ…」

「「「「「ちょぉぉぉっとまったぁぁ」」」」」


エントランス全員の声が完璧にハモった。


「ここで逃すわけにはいかない」という声が聞こえたような気がした。

次の瞬間、侍女長と思われるベテランの女性が、鬼の形相で侍女たちに指示を飛ばし始めた。それと同時に見るも止まらぬ速さで、人々が動き出す。


「全員、持ち場につきなさい!! 皇帝陛下が初めてお連れになった将来のお妃様よ!! 一点の曇りもないよう、最上級のおもてなしでお迎えするのです!!」


「「「はいッ!!」」」


(なぜか将来の妃ってことになっている…)


◇


案内されたのは、皇城の中で最も景色の良い階にある客室――というか、どう見ても「皇后専用の広間」だった。 歩けばふかふかの絨毯、飾られているのは国宝級の絵画や調度品。


「ロムティア様! お召し替えの準備は整っております!」 「お風呂の温度はお気に召しましたでしょうか! 最高級の薔薇オイルをご用意いたしました!」 「お腹は空いておられませんか!? 専属のシェフが24時間体制で待機しております!」


部屋に入った途端、十数人の侍女たちが怒涛の勢いで群がってくる。 爪の手入れ、髪のマッサージ、お茶の準備。あまりの至れり尽くせりぶりに、私は椅子に座ったまま固まることしかできない。


(カンテェーレで公務の奴隷として働かされていた時と、まるで月とスッポンね)


そこへ、扉がすっと開いてヒュリオス陛下が入ってきた。 侍女たちが一斉に深々と頭を下げる。


「ロムティア。部屋は気に入ったか? 何か不自由があれば、城ごと建て直すが」

「建て直さなくて大丈夫です!! むしろ手厚すぎて、落ち着かないくらいで……」

「そうか…ならば良い…城じゃなくて部屋を建て直しても良いが」

「大丈夫です」


私はエンペリオンの使用人と同じくらいの速さで即答した。

そして、陛下は私の隣に腰掛けた。 こちらを見つめてくる彼の顔面は相変わらず無表情だが、そのエメラルドの瞳は、どこか愛おしそうに私を見つめている。見ているだけで浄化される気持ちになる。


「君には、ここで何の心配もなく、穏やかに過ごしてほしい。」


真っ直ぐすぎる言葉に、胸がトクンと跳ねる。 国王の、不器用で重すぎるほどの優しさ。


(……困ったわね。こんなに甘やかされたら、調子が狂ってしまうわ)


こうして、私のエンペリオンでの「過保護すぎる同居生活」が、賑やかに幕を開けたのだった。

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