↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私を追って人間堕ちした神様〜真面目令嬢は、天然わんこに執着されています〜  作者: 焼きそばこっこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/11

神様だ。

「何様かというと…神様だ」

そう堂々と答える、あの美しい顔立ちは確かに神がかっているかもしれないが、何を言っているのか、第一王子も、ティアラ嬢も、私も、誰も理解できていなかった。もしやあの冷静な顔の裏側に意外と、青少年にありがちな‘チュウニビョウ’なるものが隠れている…?


「王さまはぁ、かみさまなんですね!すご〜い!かっこいい〜!」


先程まで、ヒュリオス陛下の顔に見惚れて一言も発していなかった彼女が、ここぞとばかりに猫撫で声をあげる。


「確かに、王さまとぉーってもかっこいいから、神さまみ…むぐぅ?!」


突然、ティアラ嬢の口が縫い付けられたように開かなくなった。


「むー!!むぐぃー!?」

「君は少し黙っていてくれ。今はこの男と話したい。さて…………」


ヒュリオス陛下が急に話すのをやめた。完全に停止している…突然どうしたんだろうと思っていると、群衆の方から、すいません、すいませんと腰を低くしながら、薄幸そうなメガネの側近らしき人が出てきた。

そして「陛下…!タナカ・レオンハルト第一王子です!」と囁いた。


(ま、まさか王子の名前を忘れてたの?!)


群衆にはギリギリ聞こえていなさそうだが、第一王子には確実に聞こえているだろう。顔を赤くして、ブルブルと震えている。


「あぁ。レオンハルト第一王子。初対面の貴殿に言うのもなんだがこの国を私の国に吸収してもいいか?」


(……そんな、市場で『このりんごもらっていい?』くらいの軽いノリで言われても)


国王陛下と王妃殿下は第一王子の世話の心労による療養中で、現在この国のトップは名目上は第一王子なのだ。おかげで、このバカを制御する人間がいないために婚約破棄という事態になったわけだが。


「良いわけがないだろう!我が国の舞踏会に水を差して…どこまで愚弄すれば気が済むんだ?!」

「あぁ。そうか。…なら侵略するぞ?」

「やれるものならやってみろ!勇者の召喚された我が国を甘く見…」


「今から。」

王子の言葉を遮るように、腕を横へ広げる。それと同時に、王宮全体が神々しい光に包まれた。一帯が子供を抱く母の温もりとも、囚人を閉じ込める檻の冷たさとも言える異質な空気に包まれる。

会場中からどよめきが聞こえる。


「私は神だ。大概のことはできる。それこそ、この場の群衆を全員洗脳し、貴殿を捕えさせることも可能だ。つまるところ、全国民による反乱、と言ったところだな」


先程までは、ヒュリオス陛下が自分は神だと言う話に現実味がなかったが、初めて見るこの光を見て、それが冗談ではないことに嫌でも気づいた。上からは金粉のようなものが舞い落ちてきていて、手のひらでそれを取ると、シュワシュワと温かい空気を発して溶けていく。


「う、うわぁぁぁ!」

会場のいくつかの場所で悲鳴が聞こえる。群衆の集まるそこへ急いで走り寄ると、床に倒れ込みもがき苦しんでいる貴族が数名。よく見ると、彼らに当たった金粉は、まるで炎のように肌に焦げをつかせていてすでに彼らの身体中に穴と痛々しいコゲができていた。

私は彼らのもとに駆け寄った。


「大丈夫?!今すぐ治療班を呼んで…」


そう言おうとした瞬間、耳に小さな風と共に、声が聞こえた。


『彼らは放っておいていい。悪さをしていたから少しお灸を据えただけだ。死にはしない』

「しかし!あまりにも苦しそうです!早く医療班を呼ばなければ…」


それでも、これほど苦しそうな彼らを放ってはおけないと、体を動かそうとしても、体が思うように動かない。


『君は強情なところがあるからな…大丈夫だ。彼らの火傷はただの幻覚だ。この金粉が全て振り終われば自然と消える』


そういえば、床で悶え苦しむ彼ら以外の、私や周りでの人々は目の前に降っている金粉に触れても、ほんのり暖かさを感じるくらいで、痛みはない。

どう考えてもこの世のものじゃない。本当に彼は神だとでも言うのか。

焦げた匂いをさせながら焼かれていく貴族たちを見て、第一王子も開いた口が塞がらない。


「そ、そんなばかな…!」

「…先ほど彼女に不快極まりない暴言を浴びせていた輩だ。やろうと思えば、今降ってる金粉全てを、アレにしてしまうこともできる。この舞踏会に集まっているのは…か、か…カンテン?の要人ばかりだろう?カンテンにどれほどのダメージを与えられることか…」


また、あのヒュリオス陛下の側近のような人が涙を流しながらつぶやく。


「あぁ…陛下…カンテンじゃなくてカンテェーレです…」


第一王子の顔色が青ざめていく。自分が命の危機にあることをやっと自覚したのだろう。


「も、申し訳ない…ヒュリオス…陛下。あくまで僕は、カンテェーレの国王の代理であり、国を他国に明け渡す権利までは持っていない…」


私は少し感嘆した。あの敬意という言葉を知らない王子が、ここまで礼節を持った対応をするところを初めて見たからだ。

しかも、自分の立場をちゃんとわきまえているようだ。それを今の今までできないのが彼の欠点な訳なのだが。


「国王がいないから、この国をくれないのか…。なら、国王のサインがあればいいのだな?」


ちょどよかったと言わんばかりに、眼鏡の側近から一枚の紙を受け取る。


「この夜会に参加する前、偶(・)然(・)、カンテン国王夫妻と会う機会があったんだが、とてもいい方達で、少し話したらよ(・)く(・)分(・)か(・)っ(・)て(・)く(・)れ(・)た(・)」

そう言って差し出されたサインはどう見ても国王夫妻の署名と印であった。そこには、もしカンテェーレの国王代理がその役目を放棄した場合、カンテェーレをエンペリオンに吸収することに同意する、と書かれてあった。

(確かに、両陛下は今回の療養に入る前、流石にこれ以上第一王子の更生が見込めなければ、継承権を剥奪するとは言っていたけれど…。まさか国ごと譲渡するなんて)


しかし、よくよく考えてみるとカンテェーレの今の情勢を知った上で、疲れ果てた国王の心の隙間につけ入って、最後のトドメに人間離れしたあの能力を見せるとは、エンペリオンの皇帝はよほど計算高い男らしい。


「最初から、これを見せれば早かったんだが、一応貴殿の応対を見てみたかった。…まぁ、と(・)て(・)も(・)よ(・)く(・)分(・)か(・)っ(・)た(・)」


表情は全く動いたいないのに、その雰囲気は先ほどより冷え切っている。彼の目は冷ややかに第一王子を見ていて瞬きの一つもない。

「は、はは…は」

第一王子は彼に敵わないことを悟ったのか、口の片端をあげて、途切れ途切れに笑うことしかできなかった。

「安心しろ。カンテンの王族も悪いようにはしない。あぁ…||お前《ロムティアを傷つけたクズ》は別だが。」


絶望から両手を床につけて呻く第一王子は、さながらヒュリオス陛下にドゲザをしているようだった。


——これにて、カンテェーレは消滅した。勇者召喚から約100年のことであった。

その後、自称(?)神のヒュリオス陛下の素晴らしい治世によって、国はカンテェーレ時代よりはるかに豊かな土地へと変化した。そして私も、ヒュリオス陛下の温情で国外追放は免れ、小さな田舎の修道院で平穏な暮らしを…


「ようやく…これで片づいた。マ…ロムティア。ロムティア・ヴァンダル公爵令嬢。」

「…えっ?」


私の今後の穏やかな生活への妄想を遮るようにヒュリオス陛下が私を呼ぶ声がした。目の前を見ると、ヒュリオス陛下が片膝をつき、私に手を差し出していた。その雰囲気はどこかくすぐったくて、懐かしい感じがした。


「私は、君を、妃に迎えたい」

「え…」


唐突な結婚の申込みに、思わず私は顔が赤くなる。第一王子(今はただのレオンハルト)といた時には感じなかったような胸の高鳴りを感じた。あまりにも早い展開のせいで私は、国の幸せとか今後とかそんなのを放り出されて、頭の中はパンクしそうになっていた。


やっとのことで絞り出した言葉は

「わ、私まだ(一応)レオンハルトと婚約してます…」


この国がエンペリオンに吸収されることにはなったが、レオンハルトの婚約破棄は私が破棄しているので、この婚約自体は続いているのだ。


「「「たしかに…」」」


衛兵に捕らえられたレオンハルトと、ティアラ嬢、そして近くにいた眼鏡の側近が揃ってつぶやいた。

こうして微妙な気まずい雰囲気と共に、舞踏会は終わったのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。