隣室
深夜の静けさは変わらない。だが、二日前の夜より少し冷たく、風が鋭く感じた。
夜風に当たろうと、吾妻はベランダに出た。火を点けたばかりの煙草から、細い煙が上る。
ほぼ同時に、左右の窓が開いた。
「あ、龍臣君と龍一お兄様」
反対側から、やけに明るい声が飛んできた。
「宗親クーン!」
吾妻は一瞬、目を丸くした。
「は?(何なんだ、この賑やかさは…。いつの間にか名前で呼び合ってるし)」
軽薄さが近い上に喧しい二人に挟まれた部屋である事を、今改めて思い出す。どうでもいいが、二人の関係が気になり、訊くタイミングを探す。
「やっぱ宗親クンも、そう思うよな」
「やっぱりそうですよね!」
「お前等五月蝿ぇッ。俺を挟んで話すな」あまりの騒がしさに、ため息が盛大に漏れる。「名前で呼び合って、やけに仲良いな」
吾妻の顔が、ライターの灯りで灯される。視線は双方に向いておらず、新しい煙草の先端に向いていた。
「三日前だっけ、宗親クンとコンビニで会ったの」
「連絡先交換して名前知りましたね」
単なる偶然の出会いか、と、吾妻は納得した。
「あ!今から龍臣ん家で男子会しようぜ」
「龍臣君駄目?」
「はぁ…もう好きにしてくれ」
ただでさえどちらか一人だけでも騒がしいのに、この二人が外で知り合ったとあっては、これからの日常は更に騒がしくなると思い、ため息が出るばかりだった。
──最悪だ。
だが、この騒がしさはうざったいものではなかった。




