ローザリントとアイトラ
エスカローネとセリオンが山の高台まで行くと、そこにはアイトラとローザリントがいた。
「お久しぶり、狼さん。ウフフフ、会いたかったわよ」
「アイトラか……」
「また会えたな、エスカローネ。我が姉妹よ」
「ローザリント……」
四人は山の高台で対峙した。
「さあ、では戦いを始めましょうか? 狼さん、こっちよ。ウフフフフ」
「エスカローネ、ローザリントの相手は任せた」
「ええ、行って、セリオン!」
「フン! 好きにしろ。来い、エスカローネ!」
ローザリントは大鎌を構えた。
エスカローネはハルバードを構えた。
エスカローネとローザリントの戦いが始まった。
戦いは武器と武器のぶつかり合いから始められた。
エスカローネは積極的に接近戦を挑んだ。
「くっ!? 小娘が! 接近戦で私を圧倒するか!?」
エスカローネはリヒト・ヘレバルデでローザリントを追いつめた。
「光牙!」
ローザリントが光の力を鎌の刃に収束させた。
エスカローネは武器の形を変えた。
「リヒト・アクスト(Lichtaxt)!」
エスカローネはハルバードの斧部に光の力を集中させた。
二つの技が互いにぶつかり合った。
「なっ、何!?」
ローザリントの大鎌の刃が破壊された。
エスカローネはローザリントに迫った。
ローザリントが両目を閉じる。
エスカローネはローザリントの前でハルバードを止めた。
ローザリントは目を開けた。
「……なぜ、殺さない?」
エスカローネはハルバードを降ろした。
「私にはあなたを殺すことはできないわ。だってあなたは私の姉妹だから」
ローザリントはエスカローネを非難するようなまなざしを向けた。
「私はおまえを殺そうとしたんだぞ? なら何を手抜くことがある? さあ、私を殺せ。おまえにはその権利があるのだから……」
ローザリントは再び目をつぶった。
「ローザリント……なぜあなたは死に急ぐの? なぜ、生きようとしないの?」
「私はおまえに負けた。ただの非力で無能な存在だ。そのような罪をカンザキ様はお許しにならない。私は罰としてカンザキ様の愛を失うのだ。カンザキ様の存在、そしてその愛こそ、『娘』である私のすべてなのだ。私はそれなくしては生きていけない。いや、生きていく意味もない。カンザキ様は私の『父』だ。そのお方から見捨てられたら、私は生きていけないのだ……」
「カンザキの愛は偽物よ。目を覚まして、ローザリント! あなたは真実の愛を知らないのよ! 真実な愛はあなたを大事に想ってくれるものよ!」
エスカローネはローザリントに訴えた。
「フン……どこまでも甘い姉だな。ならば自分のことは自分でケリをつけるとしよう」
「ローザリント!?」
ローザリントは左手で腰につけていた短剣を抜くと、そのまま自分の腹を突き刺した。
血が滴る。
「何をするの、ローザリント!?」
「フッ、自分の手で、もう価値のない生を終えるのさ……さらばだ、エスカローネ……」
そう言うと、ローザリントはばたりとあおむけに地面に倒れた。
エスカローネはローザリントの横でしゃがんだ。
その手を握る。
「これで……これでいい……もはや私はすべてを失った。このまま死にゆき、地獄に落ちていくのさ……これが私の救済だ」
「違うわ、ローザリント! 死は救済じゃない! 私はあなたを救ってみせる!」
エスカローネはローザリントの傷口に手を持ってきた。
「ゴルデン・リヒト!」
そして癒しの光をローザリントに送った。
「……何をするつもりだ?」
ローザリントの傷口がふさがっていく。
「やめろ! 私を癒すな! このまま、死なせろ!」
「ローザリント、私はあなたを救ってみせる! 私はあなたを愛したいの。だって、私たちは二人きりの姉妹だから。アーダルベルト博士やカンザキのことなんて関係ないわ。あなたが苦しいなら、私も苦しみたいのよ」
「フン……勝手にしろ……まったく、どこまでも敵に甘いな……敵の死は喜ばしいだろうに……」
「あなたは私の敵じゃない。愛すべき、私の姉妹よ」
エスカローネの回復魔法によってローザリントは癒された。
ローザリントの傷は治った。
ローザリントは顔をそむけた。
彼女の目から涙があふれていた。
「ザンクト・エリーザベト修道会――そこに行くといいわ。そこにならあなたに必要なものが見つかるかもしれない」
「余計なお世話だ……う……ううう……」
エスカローネは立った。そしてセリオンのもとへ向かった。
ローザリントをもう振り返らなかった。
セリオンは積極的にアイトラに斬りかかった。
セリオンの斬撃が、アイトラの鎖鞭によって防がれる。
しかし、戦いはセリオンがアイトラを圧倒していた。
武器破壊は今回はできない。
互いの武器と武器のぶつかり合いだ。
アイトラは攻めには強かったが、守りには弱かった。
「こ、このっ! 近づくんじゃありませんわ!」
アイトラは狼狽した。
「どうやら、接近戦では鞭の力を発揮できないようだな。この戦い、もらった!」
「妖鞭!」
桃色の闇がアイトラの鞭を包み込んだ。
アイトラはセリオンに対して、妖鞭で攻撃した。
「甘い!」
セリオンは光を大剣に収束した。
セリオンの大剣が光輝く。
「光輝刃!」
セリオンは光の大剣を出した。
アイトラの鞭を押しのける。
「くっ、大蛇!」
くねってうねる鞭がセリオンに襲いかかった。
「見切った!」
セリオンは光の粒子を大剣に集めた。
光子斬を放つ。
アイトラの大蛇はセリオンの光子斬によって叩きつけられた。
アイトラが瞠目した。
その隙をセリオンは逃さなかった。
ダッシュして接近し、セリオンはアイトラを斬りつけた。
アイトラから鮮血が噴き上げた。
「そ、そんな……」
アイトラはばたりと倒れた。
血が周囲に流れる。
致命傷だった。
「カンザキ様……申しわけありません……」
そい言うと、アイトラは桃色の粒子と化して消滅した。




