エスカローネとセリオンの愛
四人が亜空間から帰還した。
ローザリントは倒れており、ほかの三人は立っていた。
「エスカローネ! 無事だったのね!」
アンネリーゼがエスカローネに飛びついた。
「アンネリーゼ……ええ、私は無事よ」
「エスカローネ、帰ってきたのですね。心配しましたよ」
「ベアーテさん……心配をかけてごめんなさい」
エスカローネは謝った。
「どうやら、ローザリントは敗れたようね。私も人のことは言えないけれど……」
「俺も、エスカローネも戦いに勝った。さて、おまえたちはどうするんだ?」
セリオンが問い詰める。
「うふふふふ。ローザリントは回収させてもらうわ」
そう言うとアイトラはローザリントが倒れているところまで移動した。
それから一つのクリスタルを手の上に出した。
「今回は私たちの負けよ。でもこれは来るべき戦争の前奏曲にすぎないわ。来るべき日は必ず来る。それまで少しだけのあいだ、勝利の美酒に酔いしれるといいわ。それじゃあね、エスカローネさん、そして狼さん」
そうアイトラが言うと、アイトラとローザリントは青い色の膜につつまれ、姿を消していった。
「なあ、エスカローネ?」
「なあに、セリオン?」
「エスカローネを少しだけ借りてもいいだろうか?」
セリオンがアンネリーゼとベアーテに言った。
「いいですけれど……何か?」
とアンネリーゼ。
「ああ、ちょっとしたことさ。時間はそんなにとらせない」
「わかりました。では……」
とベアーテ。
「じゃあ、エスカローネ、場所を変えようか?」
「うん」
二人は研究棟のさびれた場所にやって来た。
「どうしたの、セリオン。あ……」
セリオンがエスカローネを抱きしめた。
「なあ、エスカローネ……俺はエスカローネが望まれて生まれてきたと思う」
「望まれて生まれてきた?」
「ああ、愛されること、必要とされること、共に生きること――これらはみな同じものなんだ。俺はエスカローネの出生がどうあれ、エスカローネがこの世に生まれてきてよかったと思う。なぜなら、俺はエスカローネを愛しているから」
セリオンはぎゅっとエスカローネを抱きしめた。
「セリオン……私もあなたを愛しているわ」
エスカローネは感激した。
十年以上想って来た相手からの告白だったからだ。
そして、愛しい人と同じ気持ちであることを喜んだ。
「エスカローネ、君に聞いてもらいたいことがあるんだ」
「それは何?」
「俺の出生さ」
「セリオンの出生?」
セリオンは真剣に告げた。
「俺は母さんが雷の直撃を受けて生まれた息子なんだ」
「え?」
エスカローネは戸惑った。
理解が追い付かなかったからだ。
「俺の母さんは自然に俺を産んだわけじゃないんだ。母さんは雷の直撃を受けたら、俺を妊娠していたらしい。雷の直後、夢で天使レミエルが現れて告げたそうだ。あなたは『雷の息子』を身ごもりましたと。生まれてくる子供は『神の子』だと」
「そんな……信じられない」
「そう思うだろう? 俺も昔は信じられなかった。その子は『不滅の英雄』になるとも言われたそうだ。あまりに大きすぎて、自分のこととは思えなかった。でも……」
「でも?」
「俺は母さんを信じていた。母さんがウソをつくはずがないと信じていたんだ。だから小さいころ、私生児――マムゼルと呼ばれると俺は怒った。母さんがそんなこととは縁がない人――つまり神に純潔を誓っている人だと信じていたからだ。そうやって俺が周囲のからかいによって暴力沙汰を起こすと、母さんは俺を叱るより、俺をこうやって抱きしめてくれた。いつもそうだった。母さんは心から俺を愛してくれた。母さんの愛を俺は感じた。この人はこういう人なんだってことがよくわかった。俺は幸せだったんだ」
セリオンは自分の過去を、冷静な彼にしては珍しく熱く語った。
「だから、俺はエスカローネを愛することができた。俺はずっと誰かを愛したかった。母さんのことは愛していたさ。でもそれとは違う人、かけがいのない人を愛したかったんだ」
「ねえ、セリオン?」
「何だい、エスカローネ?」
「私はあなたが私を愛しているっていう証が欲しいの……だから、お願い……」
エスカローネは目を閉じた。
「エスカローネ、愛している」
二人の唇が一つに重なった。
セリオンから愛されること、それがエスカローネの救済であった。




