グライアの死
「それにしても、すごかったわね。あのメドゥサを倒してしまうなんて……これが、エスカローネの真の力なのね?」
「ええ、そうみたい。この金色の光が私の本当の力よ」
「まさか、あのメドゥサを倒すとは思ってもみなかったよ。やはりおまえは我々悪魔の脅威になったね。そうじゃないかえ? 対悪魔用生体兵器『ヴァルキューレ』?」
そこにグライアが姿を現した。
「!? グライア!? 対悪魔用生体兵器とはどういうことなの!?」
「フン、真の力に目覚めてしまったんじゃ、隠しても意味がないね。あたしが知っていることは教えてあげようじゃないか」
「グライア、質問に答えて! 『ヴァルキューレ』とは何!?」
「フン。言った通りの意味さね。あんたは対悪魔用の生体兵器なのさ! アーダルベルト・ゴットフリートによって『作られた』存在なんだよ! 実の娘『エカジェリーナ』をベースとしてね!」
「そんな……ウソよ! だって私のお父さんとお母さんは!」
「どれだけ愛情を注がれても、真実は変わりはしないよ! エルフェンクランツ夫妻はあんたの実の両親じゃない! あんたはそれを知らずに生きてきたわけさ、その20年をねえ! あっははははは! なんて間抜けな話だい! 自分のことを知らなかったんだからねえ!」
グライアは高笑いした。
「それじゃあ、この力は……?」
「それこそ設計されたものなんだよ! 光の力を増大されているのさ! だからこそ、あんたの命をあたしは狙ったんだよ! その力は我々にとって脅威となる――ゆえに死んでもらわねばならない! そういうことさ、すべてはね!」
グライアは一通り話し終えた。
エスカローネにはショックだった。
今まで自分が信じてきたことが、根底から覆された。
特にショックだったのは自分が作られたこと、そしてエルフェンクランツ夫妻が本当の両親でなかったことだった。
エスカローネは力なくハルバードを落とした。
「フン! 今がチャンスさね!」
グライアは水晶球をかかげた。
すると、透明な壁がエスカローネとシュヴェスターたちのあいだに発生した。
「エスカローネ!」
アンネリーゼが壁を叩いた。
「呆然としているところをやらせてもらうよ! 思い知りな! このあたしの最強の技を! 冥凶闇黒雷!」
エスカローネの上下に魔法陣が出現した。
それぞれが回転していた。
アンネリーゼがさらに壁を叩いた。
「エスカローネ、目を覚まして! 今の話がショックだったことはわかるわ! でも自分を見失わないで! 私たちはいつでもエスカローネのそばにいるのよ! そして、思い出して! 私たちがどれほどあなたを愛しているかを!」
アンネリーゼが訴えた。
「エスカローネ、気を確かに! まだあなたは死んではいけません! ブルーダー・セリオンを思い出してください!」
ベアーテが訴えた。
「エスカローネ、私はあなたといっしょにいられたことを光栄に思います!」
マリアが訴えた。
「私たちはずっとエスカローネのことを見てきたよ。だから、エスカローネの存在が揺らぐことなんてないよ!」
シャルロッテが訴えた。
「たとえ、あなたが軍人でも、あなたはシュヴェスターです、エスカローネ!」
アウラが訴えた。
「まだ死んではいけないわ! あなたを愛してくれる人がいる限り、自分の存在が揺らぐことはないわ! セリオンさんもきっと同じ気持ちよ!」
アンネリーゼが語った。
「みんな……ありがとう! 今、思い知ったわ。私がどれだけみんなから愛されているのかを! そして感じたわ! みんなとの強い絆を! たとえ私がどんな存在であっても、私を愛してくれる人がいる限り、私の存在が揺らぎはしないわ! グライア、私はあなたを倒します!」
エスカローネはハルバードをグライアに向けた。
そして強い意思の瞳をグライアに向けた。
「ちいっ! 持ち直したかい! あのまま呆然としていればよかったものを! まあ、いいさ! あたしの準備は万端だよ! 逝きな! 冥凶闇黒雷!」
グライアは冥凶闇黒雷を放った。
大きな雷の球がエスカローネに向けられた。
「ゴルデンリヒト! リヒト・ヘレバルデ!」
エスカローネはハルバードに金光をまとった。
リヒト・ヘレバルデは雷の球を受け止めた。
「リヒト・シュトース! 光の突きが放たれた。
それは雷の球を突き破り、グライアまで届いた。
グライアの腹を貫通した。
「ぐぎゃああああああああ!?」
「私は生きるわ! 私を愛してくれる人たちと共に! さようなら、グライア……」
「まさか……このあたしが……」
グライアはあおむけに倒れた。
グライアは死んだ。
グライアは黒い粒子と化して消えた。
透明の壁は消失した。
「エスカローネ!」
アンネリーゼが駆け出して、エスカローネのもとにやって来た。
そしてエスカローネを抱きしめた。
「エスカローネ! エスカローネ! 本当に、本当に、心配したんだから! もう、忘れないでよ? 私たちがあなたをどれだけ大事に想っているのかを……」
エスカローネもアンネリーゼを抱き返した。
「ありがとう、アンネリーゼ。ありがとう、みんな。私は幸せよ。だって、みんなが私を愛してくれるから……」
「あなたに言わねばなりません、エスカローネ」
ベアーテが神妙な顔で言った。
「ベアーテさん?」
「私はムッター・テレージアの命を受けてあなたのことをひそかに調べていました。あなたを疑ったからではありません。あなたの存在を知る必要があると、ムッターは思ったのです。あなたは自分を知らなければなりません。それを通して、確固たるアイデンティティーが築かれるでしょう」
「ベアーテさん……はい!」
そこに緊急警報が鳴った。
「ちょっと、いったい何!?」
アンネリーゼが言い放った。
当艦はグライアの死により、自爆いたします。繰り返します。当艦は……
「まずいわ! 今すぐに退避しましょう!」
エスカローネが言った。
シュヴェスターたちは大急ぎでリューベヒ湖まで退避した。
外に出て、林道を進んでいる途中に、ゴルゴン号は爆発した。




