ムーロ
「おっ、かわいい姉ちゃんたちじゃねーか」
そこに不良の男たちが現れた。
「……何、あなたたちは?」
「そんな事を言うなよ。なあ、俺たちと楽しいところに行こうぜ!」
「そうそう、こんなところじゃなくて楽しいところによ!」
エスカローネは町でいきなり声をかけて迫ってきた不良たちに不快感を感じた。
目が鋭くなる。
「私たちはミッション中です。あなた方との同行は拒否します!」
エスカローネはきっぱりと拒絶した。
「まあまあ、いっしょに来てくれれば楽しいことを教えてあげられるんだけどなー!」
「私たちの服で私たちの身分がわからないの? 私たちは軍人に修道女よ?」
「別にかまわねーぜ! かえってお堅い職業の女の方がおもしろいぜ!」
「おもしろそー! ぼくも混ぜてー!」
「!? 何だあ!?」
「何だ、てめーは!?」
「おい、こら、邪魔すんじねーぞ!」
そこに一人の小男が現れた。宙に浮かぶボールの上に乗っている。
不良たちはすぐさま罵声を浴びせた。
「!? 索敵に反応あり! この人です!」
「この人が、悪魔の道化師ムーロ!?」
エスカローネは手からハルバード「エスカリオス」を出した。
三人は戦闘態勢を取る。
「あはははははは、そーだよ! ぼくが悪魔の道化師ムーロだよ!」
「私たちはザンクト・エリーザベト修道会のシュヴェスターだよ! あの挑戦状は君が書いたものだね!」
「そのとーりー! ぼくは君たち悪魔の狩人に興味があったんだ! ようやく出会えたね! でも、その前に前座だよ」
ムーロは人差し指を空へと上げた。
「おい、てめー! なめてんじゃねーぞ! 俺たちを無視すんな! !? がああああああああ!?」
「ぎゃあああああああ!?」
「ぐおおおおおおお!?」
不良たちの体が炎に包まれた。
その熱によって、地面でのたうち回る。
しばらくすると、不良たちは動かなくなり、黒い焼死体が転がっていた。
体から、人が焼けこげた匂いが周囲に広がる。
「うっ!?」
エスカローネは思わず鼻を手でふさいだ。
そうしなければはき出してしまっただろう。
「あはははは! あーははははは! やっぱり人を焼き殺すのは楽しいなー!」
「うわああああああ!?」
「きゃああああああ!?」
町中でのできごとに群衆たちは我を忘れて逃げ始めた。
「どう? 前座は楽しんでいただけたかなー?」
ムーロはにやにやしながら答えた。
心の底から彼は楽しそうだ。
「あなたは……人間の命を何だと思っているの!」
エスカローネが口火を切った。
「えーと、カス、ごみ、ちりあくた……そんなところかなー?」
ムーロはとぼけた。
「ここで会えたのはチャンスだわ。私たちがあなたを倒してみせるわ!」
エスカローネがハルバードを構えた。
シャルロッテが弓を引いた。
アウラが杖を出した。
「そんな怒ることないのになー! さてさて! 三対一は卑怯だから、三対三にしてあげるねー! じゃー-ん!」
そう言うとムーロは分身した。
同じ顔、同じ服、同じボールに乗ったムーロが現れた。
「なっ、三人に分身したの!?」
「気をつけてください! みんな同じ強さのムーロです!」
「あっはっはっは! じゃあ、戦いを始めよーかー!」
「散開して! 一人一体を倒しましょう!」
エスカローネが指示を出す。
「わかったよ!」
「O.k.です!」
三人は散開してムーロたちを迎え撃った。
まずはエスカローネとムーロAとの戦いである。
「私はあなたの存在が許せない……私の手で、あなたを滅してあげるわ!」
「あーはははははは! 人を殺していることー? そんなに怒らなくてもいいのにねー! 人の命なんてカス同然なのにねー! ぼくはもっともっと人を焼き殺したくてたまらないんだ! 試しに、君も焼き殺してあげるよ!」
「今まで殺してきた人の無念を思い知りなさい!」
エスカローネはハルバードの斧部でムーロを斬りつけた。
「おっと!」
ムーロはボールの上からジャンプしてエスカローネの斬撃をかわした。
「はっ!」
エスカローネはハルバードの槍部分を使って、連続突きを放った。
ムーロはそれをまるで幻影のようによける。
ある時はジャンプしたり、左右に寄ったり、ボールの上で逆立ちしたりして多彩なパフォーマンスを見せた。
「あはははあはは! 当たらなーーい! 当たらな――い!」
ムーロはボールにしがみついていた。
「今度はこっちから行くよー! 火炎弾!」
ムーロはサッカーボール大の大きさの火弾を撃ちだした。
エスカローネに火炎弾が迫る。
エスカローネは光の障壁を展開した。
火炎弾を防御する。
エスカローネはバックステップでムーロと距離を取った。
ムーロは続けて火炎弾を撃ってくる。
「あっはっはっは! 行け! 行け―!」
それらをエスカローネは障壁で防いだ。
「無駄よ! そんな魔法では私の障壁は貫けないわ!」
「むう……そーみたいだね……でもでもね! これならどーかなー!」
ムーロは両手を空へと向けた。
すると多数の火炎弾が出現した。
一つ、二つ、三つ、四つ……
数が次々と増えていく。
「ジャジャーン! ほら! こんなにたくさんの火炎弾をぼくは出せるんだよー? じゃー、行け―!」
ムーロの多弾・・火炎弾がエスカローネに襲いかかった。
「リヒト・ヘレバルデ!」
エスカローネは光のハルバードの刃で多くの火炎弾を斬って迎撃した。
エスカローネはハルバードを振るう。
光の刃が火炎弾を斬り裂く。
「あれー? おかしいなー? さっきの攻撃で殺せると思ったんだけどなー! まーいっかー! ぼくの本気を見せてあげるよ!」
ムーロは両手を上にかかげた。
すると今度は巨大な火球が形成された。
「さー! これで焼け死んじゃえ―!」
ムーロは巨大な火球をエスカローネに向けて放った。
エスカローネはハルバードの力を入れて構える。
エスカローネは光のハルバードで巨大な火球を貫いた。
二つの力がぶつかりスパークが起きた。
刹那に、エスカローネは光の矢をハルバードの先端からムーロを狙って放った。
光の矢はムーロに当たった。
「あぎゃあああああああ!?」
苦悶にうめくムーロ。
エスカローネはこの瞬間を逃さなかった。
「決めるわ! リヒト・シュトース! 光の突きがムーロの体を貫通した。
ムーロの体は浮遊するボールの上から転げ落ちた。
「あれー? おかしーなー……」
ムーロの体は粒子化して消えた。
その場にムーロの仮面が落ちた。
続いてシャルロッテ対ムーロBとの戦いである。
シャルロッテはムーロと対峙した。
「さて、じゃあこちらから攻めさせてもらうね」
シャルロッテがムーロに弓を向けた。
「あははははははー! ぼくを相手にできるかなー? やってみなよ、おねいさーん!」
ムーロはボールの上から挑発した。
シャルロッテは火の矢「火矢」を形成した。
正確にムーロを狙う。
シャルロッテが火矢を撃った。
「当たらないよーだ!」
ムーロはボールの上に立ったまま炎の槍を放った。
「ほいっ! 火炎槍!」
ムーロはシャルロッテの火矢を火炎槍で迎撃した。
シャルロッテは火矢を連発した。
ムーロは小さな火炎槍を次々と放って火矢を撃ち落とした。
シャルロッテは矢を点火した。
燃え盛る炎の矢「紅蓮」を発射した。
「これでどう!」
ムーロは障壁を展開した。
しかし、炎の矢は障壁に突き刺さり爆発した。
爆風が周囲に広がる。
「あれれー? おかしーなー? 障壁を破られたぞー?」
「紅蓮」はムーロの障壁を破ってムーロにダメージを与えた。
「よくもやってくれたなー! 許さないぞー!」
ムーロは中火炎槍を連発してきた。
次々と迫り来る火炎槍をシャルロッテは身をひるがえして回避した。
「そんなもの当たらないよ! これでもくらいなさい!」
シャルロッテは炎の矢を収束した。
膨大な魔力が集められる。
「炎光線!」
シャルロッテは炎の光線を撃った。
「そんなもの、くらわないもんねー! 大火炎槍!」
大きな炎の槍が炎光線と激突した。
ぶつかり合う二つの魔法――威力は炎光線の方が上だった。
炎光線は大火炎槍を突き抜けてムーロに命中した。
「ぐぎゃああああ!? 痛いいいいい!?」
ムーロが苦しみもだえた。
「これで終わりよ! 竜牙衝!シャルロッテの弓に竜の形をした矢が形成された。
竜の矢は口を開け、苦しむムーロに直撃した。
ムーロはもろに竜牙衝をくらい、ボールの上から吹き飛ばされた。
さらに地面をバウンドして倒れた。
「あれれー? おぁしーなー? ぼくが炎勝負で負けるなんてー……」
ムーロは黒い粒子となって消えた。
ムーロの仮面が落ちた。
最終ラウンド、アウラ対ムーロCの対決である。
「なんだか君は弱そうだな―! ぼくの相手ができるのかなー?」
ムーロはボールの下に立っていた。
ひっくり返っている。
「私をなめると痛い目を見ますよ」
アウラは杖を水平に構えた。
「風刃!」
風に刃がムーロの周囲に起こった。
「おっとっと! 当たらないよーだ!」
ムーロは後ろに下がって風の刃をよけた。
アウラは杖に魔力をためた。
「石弾!」
石の弾が直線的にムーロに迫る。
ムーロは障壁を前面に張った。
石の弾は障壁にガードされた。
「あっはっは! これでもくらえー!」
ムーロは両手を下に向け、炎の波「火炎波」を放った。
アウラは迫り来る炎の波を見ても冷静だった。
アウラは杖を両手で持ち、水晶部を前に向けた。
「風衝!」
強力な風の衝撃が発射された。
火炎波に風衝は当たり、はじけた。
「あはははははは! もっといけー!」
ムーロは二つの火炎波を同時にアウラめがけて放った。
双方向から来る火炎波をアウラは前進して炎の波のあいだを抜けて回避した。
「魔風弾!」
アウラは風の弾をムーロに向けて叩きつけた。
ムーロは障壁を展開、ガードする。
「むきー! なかなかしぶといなー! それなら、これはどーかなー!」
ムーロは三方から迫る炎の波を出した。
炎の波は揺らめき、正面、右、左とアウラを追いつめるように発射された。
アウラに危険が迫る。
アウラは風の魔力を最大限に集めた。
「迎撃します! 旋風陣!」
渦巻く風が現れた。
旋風陣は炎の波を呑みこみ、消し去っていった。旋風陣は炎の波を蹂躙した。そのまま炎の波を突破して、旋風陣はムーロに命中した。
「ぐぎゃああああああ! 痛いよー!」
アウラはこの時を逃さなかった。
鋭い石の槍を形成すると、ムーロめがけて撃ちだした。
「石槍!」
石槍はムーロの体を貫いた。
ムーロの体が地面に落ちる。
「あれれー? どうして負けちゃったのかなー……」
ムーロは黒い粒子と化すと、うごめきながら消滅した。
ムーロの仮面が落ちた。




