悪魔の道化師
夜の王都フレイヤの一角にて……
人の体が炎で燃えていた。
この人たちは町の不良であった。
「あはははははは! あーははははははは! 人を焼き殺すのって楽しいなー! もっともっと人間を焼き殺してみたいなー!」
悪魔の道化師が言った。
道化師の名は「ムーロ(Muro)」という。
ムーロは宙に浮く回転するボールの上で歩いていた。
ムーロは人を焼き殺すことを快楽としていた。
「あっはははは! 快感! 快感!」
ムーロはボールを回転させるのをやめた。
「さて、と……あとどのくらい人を焼き殺せば、『あの修道会』がぼくを見つけ出そうとしてくれるかなー! あはははははは! あーははははは!」
悪魔の道化師ムーロは人の命をごみのようなものだと思っていた。
ムーロの子供のような小さな体が夜の闇の中、人体の炎に照らされて浮かび上がっていた。
ザンクト・エリーザベト修道会では緊急でエスカローネ、シャルロッテ、アウラの三人がムッター・テレージアの執務室に呼び出された。
「ムッター・テレージア、どういう用件で、私たちが呼び出されたのでしょうか?」
三人を代表してエスカローネが言った。
「至急ミッションを行わなくてはならなくなりました。できる限り早く事件を解決しなくてはなりません」
ムッター・テレージアが真剣な表情でそう告げた。
「至急のミッションですか?」
「それはどのような用件なのでしょうか、ムッター?」
とシャルロッテ、アウラ。
ムッター・テレージアは顔をしかめて答えた。
「悪魔による、人間焼き殺し事件です」
「焼き殺し!?」
エスカローネが大きく反応した。
「犯人は悪魔の道化師ムーロという者」
「ムッター、それはどこで知ったのですか?」
シャルロッテが言った。
「それはこの紙に書いてあったからです。ごらんなさい」
ムッター・テレージアが一枚の紙をエスカローネに手渡した。
「えーと……」
エスカローネは紙に注目した。
シャルロッテとアウラが紙をのぞきこむ。
紙にはこう書かれていた。
「親愛なるザンクト・エリーザベト修道会のシュヴェスターたちへ。平安あれ―! うふふふふふ! 初めまして! ぼくの名前はムーロ、悪魔の道化師だよ! 最近焼き殺し事件が多発しているよね? ジャジャーン! なんとそれはこのぼく、ムーロのしわざだよ! あはははははは! 人を焼き殺すのは、このぼくにとってものすごく楽しいことなんだ! もう何十人も人間たちを焼き殺しているよ! 快楽っていうのかな? もう、やめられないんだ! さて、同修道会のみなさん! このぼくを止められるかな? できるものならやってみてよー! ぼくは夜、王都フレイヤにいるからさー! あーはははははは! それじゃあね!」
「何、これは……!?」
エスカローネが口にした。
ムッターは嫌悪感を隠さずに。
「これは私たちへの挑戦状です! この者は私たちが現れない限り、焼き殺しを続けると言っているのです!」
バン、とムッターが机に手を打ちつけた。
「エスカローネさん、シャルロッテ、アウラ! あなた方にミッションを発令します! このムーロを至急退治してください!」
「はい、わかりました。こんなことをする悪魔は許せません! 私たちの手で倒してみせます!」
「このムーロを倒さない限り、いつまでも事件は解決しないでしょう! 全力で事に当たります!」
「わかりました。ムッター、私もこんな快楽殺人は許せません。絶対に見つけて倒してみせます」
エスカローネ、シャルロッテ、アウラの順で言った。
「頼みましたよ、三人とも!」
ムッターが激励した。
エスカローネ、シャルロッテ、アウラの三人は夜のフレイヤを巡回していた。
「この三人で巡回するのは初めてね」
エスカローネが切り出した。
「そうだね。私たち三人っていうのは珍しい組み合わせだね」
シャルロッテが同意した。
シャルロッテは武器の弓を携えていた。
「私とシャルロッテが組むことは珍しいことではありませんよ。よくいっしょにミッションに出かけるんです」
アウラは水晶の付いた杖を携帯していた。
「ねえ、シャルロッテ、聞きたいことがあるんだけど、いいかしら?」
「何かな?」
「シャルロッテは弓を持っいるけど、矢はないの?」
「ああ、そんなこと。私は魔法で矢を撃ちだすの。私は主に炎属性の魔法を使うんだけど、例えばこう!」
シャルロッテは弓を構えると、火の矢を形成した。
「へえ、すごいのね」
エスカローネはそれを見て驚いた。
シャルロッテは火の矢を消した。
「じゃあ、アウラは何が得意なの?」
「私は風と土の魔法が得意です。あとは回復系の風魔法を修めています」
アウラは淡々と述べた。
エスカローネはアウラの銀髪のロングヘアに見とれた。
「? どうかしましたか?」
「あっ、ごめんなさい。アウラの髪に見とれていたの。なんだかアウラが神秘的に見えて……」
エスカローネは慌てて弁解した。
「うふふふふ。エスカローネは初対面でも同じようにアウラに見とれていたよね。なんだかエスカローネが来た時のことを思い出したよ」
「エスカローネ、私はそんなに神秘的ですか?」
「気を悪くしたら、ごめんなさい。私にはあなたの銀髪がまるで輝いているように見えるのよ」
「輝いている、ですか……ふふふ、ありがとうございます。そういうエスカローネも髪がきれいです。なんだか金色の輝きを放っていいるようで……」
「それにしても、アウラって淡々としていると思わない? 表情やムードが変化しているのはわかるんだけどね」
「私への批判ですか、シャルロッテ? 別にいいでしょう、淡々としていても。それが私なんですから……」
アウラがシャルロッテに抗議した。
「まあまあ、二人とも、そこまでにしておいて! 私たちはミッション中なのよ? 索敵に集中しましょう!」
エスカローネが話題を切り替えた。
「そうだね。ごめんね、アウラ」
「いいんですよ。気にしてませんから。索敵を行います」
アウラが杖の先に魔力を集中させた。
杖の先端からフラッシュが起こった。
先端に光が輝いた。
「今のところ、警戒範囲に反応はありません」
「じゃあ、しばらくはそのまま巡回しましょうか」
そうエスカローネが言った。




