ローザリント
エスカローネの実家にて。エスカローネの父シュテファンと、母ハンナは謎の黒服の集団に拘束されていた。
手には手錠をはめられている。
「我々をどうするつもりだ!?」
シュテファンは突然の事態にも動揺していなかった。
科学的な思考に裏付けられた知性が光る。
「私たちをどうする気!?」
一方、ハンナは動揺していた。
黒服、サングラス、黒髪の男たちは二人の質問を黙殺した。
「騒ぐな。私たちの目的はおまえたちを捉えることだ。おまえたちの質問に答えることではない。黙っていてもらおうか」
答えたのは金髪のポニーテール、青い瞳、黒いドレスを着た妙齢の美女。
年は20歳くらいか。
手にした大鎌をシュテファンに近づけた。
大鎌の刃がきらめく。
「君はもしかして、ローザリントか?」
「あなた……」
美女――ローザリントの目が光った。
「ほう……この私を知っているのか。さすがエルフェンクランツだな。
ヴァルキューレ・プロジェクト……」
「それを知っているのか!?」
「ふふふ、そう驚くな。もちろん知っているとも。おまえたちが20年前にしたことだったな」
シュテファンとハンナは顔をしかめた。
「ではエルフェンクランツ博士、我々とご同行願おうか」
「お父さん! お母さん!」
「!?」
そこにエスカローネが現れた。
「エスカローネ! 逃げるんだ!」
「エスカローネ! ここから離れなさい! 私たちのことはかまわないで!」
二人は必死に訴えた。
「エスカローネ、だと?」
ローザリントがエスカローネに興味を向けた。
「あなたは誰!? お父さんとお母さんをどうする気!?」
「フフフフフ、おもしろくなってきたな。私の名はローザリント。ある方に仕える者だ。おまえたち、博士たちを車に乗せろ。先に連れて行け。私は後で合流する」
「はっ!」
黒服の男たちは二人の博士たちを強引に車に乗せた。
「お父さん! お母さん!」
「おっと、そこまでにしてもらおうか?」
ローザリントは鎌の刃をエスカローネに向けた。
「フッフフフ、我が姉妹エスカローネ、会いたかったぞ。心配せずとも彼ら二人には危害を加えはしないさ。彼ら二人には聞きたいことがあるからな。彼ら二人は重要人物なのでね」
「どういうこと? 父と母は普通の科学者よ!」
「普通の科学者? フッハハハハ! これはおもしろい! おまえは彼ら二人が何をしたか何も知らないのだな」
「それはどういうこと!?」
エスカローネはローザリントの言うことをいぶかしんだ。
「フン! おまえがそれを知る必要はない! さてと、武器を出せ! 私と戦ってもらおうか!」
ローザリントは鎌を構えた。
エスカローネはハルバードを出した。
「行くぞ 私の姉妹エスカローネよ!」
ローザリントの体が踊った。
ローザリントは大鎌でエスカローネに斬りつけた。
エスカローネはハルバードの槍部を大鎌に当てた。
「うっ!?」
エスカローネは大鎌から強烈な衝撃を受けた。
顔をしかめる。
ローザリントは大鎌で斬り払った。
エスカローネはハルバードでそれを防いだ。
「ふははははは! 楽しいな!」
ローザリントは大鎌で攻撃してきた。
鋭い大鎌を、エスカローネは巧みにハルバードでやり過ごした。
ローザリントが襲いかかった。
エスカローネがハルバードで攻めた。
二人の武器が激突した。
二人の攻撃が拮抗する。しばらくのあいだ、二人はつばぜり合いを演じた。
均衡は不意に止んだ。
二人は互いに離れて間合いを取った。
「フッ……やるな。私とここまで斬り結ぶことができた人間も、そうはいない。さすが我が姉妹といったところか……」
ローザリントは大鎌を振りかざした。
「我が姉妹? それはどういうこと?」
「ふははははは! それは自分の実力で聞き出したらどうだ?」
ローザリントはニヤリと笑った。
エスカローネは光の力を集めた。
「はっ! リヒト・シュトース!」
光の突きがローザリントを狙う。
ローザリントは身をひねって、エスカローネの突きをかわした。
「フッフッフ……光か。光の力がおまえの専売特許ではないことを見せてやろう! 光裂爪!」
ローザリントは光を収束した。
ローザリントの大鎌に光の刃が四つ帯びる。
「くっ!? リヒト・ヘレバルデ!」
エスカローネはとっさに光のハルバードでローザリントの技に対抗した。
ローザリントの技がエスカローネに迫る。
鋭い、爪のような光の刃がエスカローネに襲いかかってきた。
ローザリントは大鎌を振るいながら、舞い、踊る。
「くうううう!?」
エスカローネは守勢に立たされた。
ハルバードの刃でローザリントの攻撃をしのいでいく。
ローザリントは五本の刃でエスカローネを襲う。
エスカローネは身を守るので精いっぱいだった。
「どうした? 押されているぞ? おまえの刃は私に届いていない……」
ローザリントは動きを止めた。
エスカローネは後ろに下がり、ローザリントと距離を取った。
「まだ、これからよ!」
エスカローネが再び、攻めかかろうとしたその時……
「やめだ、やめだ」
ローザリントが光裂爪を解除した。
大鎌を静かに下ろす。
「? なぜ。武器を降ろすの?」
「今のおまえはまだ真の力に覚醒していない。そんなおまえと戦ってもおもしろくない」
「真の力?」
「そうだ。おまえはまだ自分が何者か知らないらしい。おまえ自身を知れ。すべてはそれからだ」
ローザリントは左手から黒い結晶を取り出した。
左手で持ち上げる。
「? それは何?」
「これは空間転移できるアイテムだ」
「退くつもり?」
「フッ、今度会う時までに、自分の真の力に目覚めているのだな。さらばだ」
ローザリントがそう言うと、黒い膜が彼女自身を包んだ。
黒い膜が消えると、ローザリントの姿はなかった。
空間を転移したらしい。
「ふう……」
エスカローネは武装を解除した。
ハルバードを消す。
「彼女は私の何を知っているの……? 私自身を知れ……私の真の力……エカジェリーナとの関係があるのかしら? お父さん……お母さん……」
エスカローネは呼吸を整えると、実家を眺めた。
心に疑問を抱きながら……




