第42話 持って使うもの
並んだ剣は見た目ほど同じではなかった。
一本目を持ったあとで二本目に替えると、先が重く感じる。長さは大して変わらないのに、振り終わりを止めようとすると手首に力が入った。
「重いか」
鍛冶屋の親父さんが聞く。
「重さというか、先へ持っていかれる感じがして」
「じゃあ、こっちも持ってみな」
渡された三本目は握りが細かった。指を回し、店の裏に設けてある場所でゆっくり動かす。振り下ろすより、もう一度構える方が楽に感じた。
テオが横から覗く。
「それ、よくない?」
「俺もそう思ってた」
「さっきのは戻すとき肩まで動いてたよ」
レイナに言われ、もう一度持ち替えてみた。確かに、二本目だと腕だけで戻そうとして途中で窮屈になる。
初めて剣を持ったときには、こんなことも分からなかった。どれも剣で、全部重くて、刃を自分へ向けないようにするだけで忙しかったのだ。
「これにします」
値段を聞いてから財布を開いた。安くはない。けれど、買ったら今夜の飯に困るわけでもない。
親父さんが今の剣も見せてくれと言うので、鞘ごと腰から外して渡す。
「手入れはしてるな。これは下取りに出すか」
すぐには返事ができなかった。
リンダムのギルドで渡された剣だ。抜こうとして、ハロルドさんに止められたのもこれだった。
「……それ、ちょっと待ってもらっていいですか」
「いいよ。持って帰るなら包む」
親父さんは卓の端へ剣を置いた。俺は礼を言い、足元の袋を開く。
「あと、相談したいものがあるんです」
布をほどくと、小さな金属の容器が出てきた。関さんのところを出てから、ずっと包んで運んでいたものだ。
親父さんは受け取る前に、何が入っているのかと聞いた。
「今は空です。空気を詰めておいて、あとから出すもので」
「空気?」
俺は関さんの店で盾だけ飛んだことと、腕へ固定したら肩を痛めたことを話した。今度は自分も一緒に前へ出たい。相手を押して、仲間が斬る場所を作りたいのだ。
「腕の先だけ引っ張られたんだな」
親父さんが俺の左腕を取る。肘を曲げさせ、肩を押さえてから、盾を構えるように言った。
「押すとき、どこまで伸ばす?」
「このくらいです」
「そこまで行く前に、体もついていかないと駄目だろ」
言われたとおり、腕を前へ出してみる。腕だけならすぐ伸びきるのに、足を出せばまだ前へ行けた。
親父さんは紙を出し、俺の腕を見ながら線を引く。肘の辺りに容器をつけ、空気を後ろへ出す。腕から肩を覆う小手にして、背中へも帯を回す。盾は別に持ち、押すときの姿勢に合わせて支える。
「これで動けるかは、合わせながらだな。作って渡して終わりにはできん」
「途中でも来ます。しばらくこの町にいるつもりなので」
俺はレイナを見る。彼女も紙を覗いていた。
「向こうへ行く前に、ちゃんと使えるか確かめたいね。宿も延ばそうか」
「うん。出る日、また四人で考えよう」
費用を聞き、宿と食事に残す分を数える。材料の一部に手持ちのものを使えないかと尋ねると、親父さんの目が卓の端へ動いた。
「あの剣、使ってもいいなら、金具に回せるところはある」
置かれた剣を見る。
「そのまま残らなくなるが」
「……はい。それでお願いします」
持って帰る場所はある。それでも、次も仕事へ持っていけるなら、その方がよかった。
「俺も欲しいな、それ」
テオが紙へ顔を寄せた。
「お前、そっちの手でも剣持つだろ」
「片方だけのときに」
「その剣、片手で振るの?」
エマに聞かれ、テオは背中の大剣を見た。
「……今は、両手かな」
親父さんは笑いながら、まず一つ動くようにしようと言う。俺もそうしてくださいと頭を下げた。
店を出る前に、明日の狩りへ持っていく盾も選んだ。木の表に金属を留めた小盾で、腕に通す帯をその場で合わせてもらう。今度は借り物ではない。
新しい剣を腰へ戻し、古い剣を卓へ置いていく。
戸を出ると、テオが早速、見せてよと手を出した。
「その辺で振るなよ」
「持つだけだって」
俺は鞘に入れたまま渡す。受け取ったテオが軽いなと驚き、エマも握りを見ようと隣へ寄った。
さっきまで使っていた剣のことは、まだ気になる。
それでも、新しいのを早く返してほしいと思っている自分もいた。
お読みいただき、ありがとうございます。
「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけたら、ブックマークや☆からの評価をいただけるとうれしいです。
感想も楽しみにしています。




