第33話 贈り物(おっさん視点)
おっさん視点です。
こいつ、本当にそれにするつもりか。
台の上には輪っかや葉っぱの形をした飾りもある。色のついた石を紐に通しただけのものもあった。それを端から眺めた末に、コータの手が持ち上げたのは、銀色のハートだった。
二つも。
「これ、同じのですか」
「そうだよ。紐の長さも揃えられるけど」
「お願いします」
店の女が奥から紐を出してくる。コータは二つを並べ、片方をひっくり返した。裏までしっかり見ている。欠けていないか確かめているらしい。
『レイナにやるのか』
「うん」
『二つとも?』
「片方は俺。お揃いでつけられるかなと思って」
そうか。お前もつけるのか。
昼飯のあと、レイナたちと別れて一人で出かけると言うから、明日行く飯屋でも探すのかと思った。寄ったのは飾りを売る店で、俺は最初から当てを外している。
目の前で女がハートへ紐を通す。
俺が代わりに選ぶなら、たぶん隣の細い輪っかにする。コータはそっちを見もしない。紐が通ると持ち上げ、二つが並んで揺れるところを眺めていた。
いや、こいつのいた世界ではハートに別の意味があるのかもしれない。
『コータ、その形は……』
「変かな」
手が止まる。
ああ、たぶん同じだ。
変だと言って別のものを選ばせることはできる。だが、そうしてやりたいかと聞かれると、何とも言えなかった。
「恋人っぽいかなって思ったんだけど。こういうの、買ったことなくて」
声が低くなる。店の女が布を探している間に、もう一度二つを重ねた。
「一緒につけてたら、嬉しくないかな」
俺に聞くなよ。
そう言おうとして、やめる。
ここへ入る前、コータは財布を開いていた。宿代を払ったあと、どれくらい使えるか数えて、それから店を二軒回った。最初の店で俺が何か言う前にも、自分で選んでは戻している。
それで、この二つだった。
俺にはレイナが何と言うかは分からない。気に入るかもしれないし、二人でつけるのは恥ずかしいと言うかもしれない。
ただ、コータが明日これを渡したいのは分かった。
『いや。お前はそれでいいと思う』
「ほんと? ありがとう」
褒めたと思われた。
コータが代金を払い、女が二つを同じ布へ包んでくれる。コータは袋を開け、中のものを寄せてから、包みを一番上へそっと置いた。
「よし。あとはどこ行くかだな」
景色が通りへ向き直る。
『そこはまだ決めてねえのか』
「これ買うのに思ったより時間かかった」
もう昼の客も減った通りで、飯屋の看板を探し始める。
通りの先では店先に出た男が肉を焼いていた。俺はそっちへ行こうと声をかけた。
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