第十九話
遅くなり申し訳ございません。
第十九話です。
ではどうぞ。
「クロノス、久しぶり! ちょっと背、高くなった?」
「兄さん……この前会ってからまだ半年も経ってないのに、背なんて伸びるわけないよ」
今日はヘリオス様の弟であるクロノス様が学校で休暇をもらったとのことで、実家であるこの屋敷に帰省していた。
ヘリオス様とまた違う、少し明度の低い栗色でサラリとした髪。けれど、顔の輪郭や大きい目などはそっくりである。
「初めまして。ヘリオスの弟であるクロノスです」
「セレナです。初めまして」
私がネメシスであるということは、ヘリオス様との秘密。
クロノス様の前では「セレナ」と名乗るよう事前に打ち合わせ済みだ。
ヘリオス様は天真爛漫という言葉を具現化したような人だが、クロノス様は冷静で落ち着きのある人だなとなんとなく思った。
そして最初の挨拶と言い、口に手をあて細かく笑う所作など、ヘリオス様とは全く違う。
「ネメシス。もしかして、クロノスと私じゃあぜんぜん違うなぁって思ったでしょ。顔に出てるよ。失礼だね」
頭を軽くポンと叩かれる。
わかるくらい顔に出ていたのか。
思わず自分の顔に手をあてて確かめる。
現在クロノス様は、学校がある街では買えないものがあるからと、ここの麓まで出かけている。
「いっただろう。クロノスには次期社長になる使命がある。そのために学校で勉強して、もちろん正しい振る舞いや所作も習う。それと比べて私は、偏差値もそこそこの普通の学校に行って只今青春謳歌中。違って当然だろう?」
そういえば、ヘリオス様から聞いていなかった気がする。
私は彼のことをもっと知りたいが、今日まで彼自身から自分のことを話してくれたことはなかった。
これを機に一つ疑問があった。
「ヘリオス様はなぜお父様の後を継ごうとしなかったのですか?」
一般的に考えて、社長の後を継ぐのは長男の役目である。
今まで殺してきた人たちにもそういう人がいた。
私にもそれぐらいの知識はある。
ヘリオス様はどうしたかったのだろう。
「ネメシス、私ね絵を描くことが唯一の楽しみなんだよ!」
「はい。それは存じております」
あれだけ、毎日絵を描いていれば誰でもそう思うだろう。
「私は長男に生まれたからって、次期社長にならなきゃいけないっていうのがすっごく嫌だったんだ」
明らかに嫌そうな顔を見せつける。
それはなぜだろう。
社長の座に就けば、財力を手に入れるなど容易いことであろう。
この世は財力と経済力。
組織ではそうだった。
「理不尽だって思わないか? 生まれたときから将来どうするかが決まってるなんて。そんなの死んでもごめんだね」
台所でカップにティーパックをいれ、沸いたお湯をカップに注いでいく。
ヘリオス様とクロノス様と私の3人分。
クロノス様がそろそろ帰って来るのを見越して注いだのだろう。
私とクロノス様の分をテーブルに置き、ヘリオス様の分は自分の手でもち窓の方へ歩きなが
ら、ズズッとすする。
「だって、やりたいことをやってこその人生でしょ?」
窓を開け、こちらを振り向きニコッと笑う。
外では太陽が輝き、葉が舞い、花びらが踊る。
そんな美しい光景がヘリオス様と重なって見えた。
なぜ、そう見えたのかはわからない。
彼は夏に燦々とあたりを照らす太陽のよう。
だから、彼の下にいる人達は皆笑う。
幸せになるのだ。
そんな彼の下にいることも出来ない私。
考えてみる。
――――私のしたいことって一体何なのだろう。
第十九話どうでしたか。
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