第十八話
遅くなり申し訳ございません。
第十八話です。
ではどうぞ。
ヘリオス様はその場から一歩も動かない。
私よりも小さい体で私よりも大きいヘルメスの前に立っている姿は、小動物が猛獣に威嚇してるよう。
それよりもヘルメスが同業者とバレれば、ヘリオス様の立場上危険だ。
ヘルメスは私と肩を並べるほどの実力をもつ、殺し屋兼暗殺者。
これ以上組織の情報を一般人である彼が知れば、組織から何をされるかわからない。
……あれ?
「君は……いいや、じゃあまたどこかで会ったら声かけるね」
ヘルメスはそれだけ言って去っていった。
その後ヘリオス様とモール内にあるカフェで昼食をとっていた。
周りには、食事をしている者、談笑している者、勉学に励んでいる者、本を読んでいる者、パソコンのキーボードで何かを打ち込んでいる者と様々。
頼んだサンドイッチがテーブルに届き、食べようと手を伸ばしたときだった。
「ネメシス……さっきの人のことなんだけど……」
体の体温が下がる感覚がした。
伸ばした手が動かない。
でも、どうにかして偽らないと怪しまれるだろう。
「えっと、その……彼は……」
いい言い訳が思いつかない。
けれど、何か……何か……。
私と言葉を重ねるように、ヘリオス様が言った。
「めっちゃ顔、良くなかった?」
「……え」
予想外の返事に、考えていたことが全て白紙になってしまった。
「いや、顔整いすぎて二次元から出てきたのかって疑ったよ! 背も高いし、声もいいし!」
少し興奮気味に話す姿はまるで犬のようで、見えないはずの尻尾が見える。
「でもネメシスぐらいの綺麗な人ならあーゆー人にナンパされても仕方ないのか」
ハアと肩を落とし、机に顔を伏せ、力なくダラッと腕をおろしている。
まさか、ヘルメスが私を口説いていたと勘違いしているのか。
でも、皮一枚だけだが事実である。
ヘルメスの場合仕事病みたいなもので、相手が女性ならいつも口説くような口調になってしまうのだ。
それは同僚である私に対しても同じなのだが、本当に迷惑である。
「でも、悔しいな」
テーブルに運ばれてきたジュースに差してあるストローを咥え、少しずつ吸っていく。
絵を描いていて当分髪を切っていないのか、目にかかるほど伸びた前髪から長い睫毛が顔を出す。
「ネメシスは私だけ見てればいいのに」
頭の中で、ヘリオス様と一緒に行くリストに美容院をメモした時、ヘリオス様はポツッと誰に言うわけでもない様子で小さく呟く。
俯いている彼の表情は伺えないが、声はいつもよりトーンが低い。
なぜ、そんな声で話すのだろう。
いつもみたいに、明るく人を笑顔にするような声で話してほしい。
その少しの違和感だけが、私の中を支配していた。
「私はヘリオス様だけを見ています」
彼は私のターゲット。
私が他に目移りするなどありえない。
ありえるはずもない。
――――彼は私だけのものなのだから。
私がそういった瞬間、ヘリオス様はバッと顔をあげ、みるみるうちに熟したリンゴのように顔が赤くなっていく。
「ヘリオス様?」
「み、みないで!!」
両腕で顔を隠す。
彼の叫び声が静かなカフェに響き渡り、周りの視線が私達を突き刺す。
それがあまりにも痛々しく、その場に居づらくなったためササッと食事を済ませ、カフェを出た。
その後は顔色が戻り、いつもより上機嫌なヘリオス様と帰宅した。
第十八話どうでしたか。
只今、第十九話の下書きを執筆中です。
出来次第投稿します。
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