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第十七話

本当にヘリオス様と過ごす時間において、予測できないことが多い。

今だって、ネメシスの服のレパートリーが少ないから一緒に買いに行こう! と急に言われ、一緒にショッピングモールへ買い物に来ていた。

服屋に着くなり、色々な服を取っては戻し、取っては戻しを繰り返していた。

「ヘリオス様。私はいつもの服が動きやすいので、他のは……」

「だめだよ! ネメシスは知らないだろうけど街のほうでは『制服をきた綺麗なお姉さん』なんて呼ばれてるんだよ? だから今日はネメシスに合う服買うの!!」

確かに私の普段着は襟付きのシャツに膝下まであるスカート、首元には紐で結んだリボンがつけられている。

私は服など、なんでも良いのだが。

「はい」


そして、あーでもないこーでもないと言う事約一時間。


「これ、着てみて!!」

渡されたものを受け取り、試着室に入る。

ターゲットとの良好な関係を作れるいい機会なので、何も言わずヘリオス様の言う通りに着てみる。

首元が出た白のサマーニットにデニムミニといった、確かにこのモールのなかですれ違った女性たちにこういう服を着た人が何人もいた。

「ネメシス、着替え終わった?」

「はい」

シャッとカーテンを開ける。

ヘリオス様にとって、この服は良いのかもしれないが、肌面積がやたら多く無防備すぎる。これでは万が一敵から襲われた時に防ぎようがない。


その時、着替え終わった私を見てヘリオス様の顔からサッと笑顔が消えた。


「ヘリオス様?」

「いや、やっぱりこっちにしよう」

これと、これとと迅速に選び、はいっと渡され、シャッとカーテンを閉められてしまった。

一瞬の動作だったため、数秒間カーテンの前に立ったままだった。


今の表情はなんだったのだろう。


少し気にしながら、渡された服を着る。

先程の服とは違い、ハイネックの肘まである半袖に薄手のカーディガン、ワイドパンツといった肌面積の少ない服だった。

「どうでしょう」

「うん、上出来」

ヘリオス様の表情がもとに戻り、安心した。


着たままその服を買い、ショッピングモールを回る。

こういう場所は人が多く、暗殺などには不敵であるため来たのは今回が初めてだ。

天井が無駄に高く、店もこれみよがしに並んでいる。

他の買い物客が笑顔で会話するこの風景は、麓の街と変わらない。



私もあんなふうになれたら……。



そこでハッと気づく。

私は今、周りの人間達のようになりたいと望んでいる。

そんなのは。



「ネメシス、ちょっと画材見てきて良い?」



ヘリオス様が指した店には、筆や絵の具やらがたくさん売られていた。

筆に関しては全部同じにしか見えない。


鼻歌を歌いながら店に入っていくヘリオス様の背中を見ながら考えていた。


ヘルメスも言っていたであろう。

私達は普通にはなれない。

わかり合うことすらもできない。


そこまで考えて私は頭を横に振った。

他のことなど考えるな。雑念はいらない。


私の任務はヘリオス様を護衛し、父親が亡くなればそのまま殺すこと。



彼とはたったそれだけの関係なのだ。



けれど、彼は自分が私に殺されることを察している。


いつ、どこで気づいたのだろう。



行き交う人をなんとなく眺めていたその時だった。



「あっれー? こんなところに綺麗なお姉さんがいるー」

このねっとりした声。耳の中を絡みつくような不快感に思わず塞ぎたくなる。

考えなくてもわかる。


「ヘルメス……なぜここに……」

「なんでって、彼女とデートだよ。今トイレで席外してるけど」

彼女と言っているが、任務のターゲットのことだ。

本当に世の女性たちはなぜこんな男にひっかかるのか意味がわからない。

「それより、お前がこんなところにいるなんて意外だな。こんな服なんか着ちゃって」

そう言いヘルメスが服に触ろうと手を伸ばす。



「触らないでください!」



パンッという音とともにヘルメスの手を振り払った。

驚き目を見開いている彼の瞳には、眉間に皺を寄せ弱々しく威嚇している自分が映っていた。


自分でもなぜここまで拒絶したのかわからなかった。


けれど、ヘリオス様以外に触られて欲しくなかった、ただそれだけ。


「おいおい、一体どうし……」

ヘルメスが言いかけた時、横から彼と私の間に誰かが割り込んできた。

ふわりと舞う柔らかな蒸栗色の髪。手には紙袋を持ち、筆の先端が飛び出している。




「私のネメシスになんの用ですか?」




背中越しにヘリオス様の声とは思えないほど、怒りに満ちた声が聞こえた。


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