G.
私の猫が、何かをかじっていた。ご飯の時間でもないし、おやつもあげてないのに、一心不乱に何かにかぶりついていた。
それは、一匹の虫。
世界のいたるところに棲み、日本に住んでいれば多くの人が目にするであろう、ごまんとどころか億・兆単位で分布している虫。
人間の生まれるはるか昔、およそ三億年前から存在している生きた化石。
たとえ身体を裂かれても一週間は生存したり、飲まず食わずで一月は耐えられたりするものもいる。
人間をかんだり、垢や髪の毛を食べたりもするらしい。
一般的な種は二秒で三メートルを這うと言われている。それを三センチとすれば、現在は百七十センチの私が、一秒で八十五メートル走るのと同じ。
まさに瞬間移動してるみたい。
とりあえずそれの残骸を捨てて、部屋の掃除をして、うちの猫を風呂場に拉致。歯磨きした上で全身くまなく洗う。
食べてしまったものはしょうがないとして、病原菌を媒介するんだから、部屋はアルコールとかで除菌したほうがいいかもしれないなんて考えていたら、部屋の隅に大量の死骸……。
あんた……どんだけ食べてんのよ。
しかし、私の家にこれだけ棲んでいたとは――。
――一匹いれば三十匹いると思えというのも、案外事実かもしれない。
私は、何もしない。
ゴットファーザーが駆逐してくれるから。
彼が留守の場合は、やむを得ず、プラスチックのバットを叩きつける。
潰した感触さえわからないくらいに思い切り。
残骸はテイッシュを被せて、殺虫剤まぶして、ティッシュを被せて、ティッシュを被せて、捨てる。外のゴミ箱に。
スプレーかけて床を吹いて、駆逐が完了する。




