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悪魔の尖兵がテンプレ異世界で茫然とする  作者: papaking
スリー・サイデッド・ストラグル
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123/130

終わりの始まり

「尊き御方よ。そう嫌われますな。個人的な見解では、こうやってお邪魔いたすことも長いことはございません。」

「どういう意味だ」

「貴方様の威勢はいや増すばかり。あとわずか、一押しあらばこの世界の輪廻は廻り始め、こうして地上の肉体に拘泥する意味もなくなろうというもの」

「……それがしの属性が秩序に傾いた頃合いを見計らってゲームを終わらせるつもりか」

ジェスターは美しい微笑みを浮かべた。

「お嫌ですかな」

「待っておればさらに秩序側に有利になるかもしれんぞ」

煽るつもりで言ってみたが、ジェスターの顔にはいささかの動揺もない。

「このゲームは貴方様が昇天する時をもって終わるわけではございません。倫理的に静的スタティックな状態におければ望ましかったのですが、そうでなくても競争可能な状態であればまあ、良しとされるわけです」

「ほぼ負けの状態から中立近くまで寄せれば後はほかの世界と同じということか」

ジェスターは優雅に頷いた。

「それに、この世界が混沌の海の中で自立できればそれは大きな波紋を呼ぶかも知れません。エントロビーが局所的に逆転し、沈んだ大陸が浮かぶかも知れません。大きな意味では善も悪もともに負け続けるこの長い長い負け戦。一矢報いることが出来るかも知れないのですよ」

「大げさな」

「さあ、それはどうでしょうか……そろそろ時間ですか」

現実世界で肩に誰かが触れている。

「お起きになったら、最後の一押しを始めてください。従者達に別れを告げるのを忘れないように。英雄的に、聖者のようにね」


我はアリスの肩に頭を寄せて寝ていたようだった。

肩に触れていた、というかかなり乱暴に揺さぶっていたのはフェイである。

「お疲れなんですからそのままでもいいのに」

「ダメ!ちゃんと寝てください!風邪を引いちゃいます!」

二人はあまりにもいつもと同じであった。

我は彼女らの顔を交互に見た。

「ヨーハン様、何かおかしいですよ……」

「あんたが無理やり起こすからよ」

我はぼそぼそと互いを非難したり、心配したりするアリスとフェイに話しかける言葉を持たなかった。

破戒僧には英雄も聖者も縁遠い。

我は代わりにおずおずと二人の背に手をまわした。

抱き寄せるというほどではないが、我から彼女らに対しては初めてと言っていい親愛の仕草であった。

「どうなさったんですか……?」

アリスが妙に真面目な顔で言う。

フェイの方は何故か泣きそうにも見えた。

「すまぬ」


フロンドに馬車が着いてしまうまで、結局二人には何も話さずに終わった。

しかし、彼女らには何か伝わるものがあったのだろう。

ふたりとも人が変わったように無口になり、重い沈黙が我等の上に降りた。

ガラテアはいきなり雰囲気が違った我等に戸惑ったようであるが、よくある男女の諍いと思ってくれたようだ。

その方がありがたい。

「隊長!お待ちしておりました!」

フロンドの検問所では後を任せて来た副官が出迎えてくれていた。

「出迎えご苦労。早急に陛下に報告せねばならぬことがある。伝令を頼む」

「いえ、それが……、死体騒動とは別に伺候していただかねばならない案件が出てまいりまして」

「何だと?」

ガラテアはいまいましげにかぶりを振った。

「この上何の騒ぎだ……。ハイデンベルク殿、感謝の宴は後日とさせていただかねばならぬようだ」

「いえ、それが、ヨーハン・ハイデンベルク様にも是非お越しいただくようにと」

「どういうことだ」

「陛下より直々のお呼び出しということでございます」

「さっぱりわからぬ」

「よい。伺うとしよう。旅装のままで失礼でなければ」

ガラテアは困惑しきりであったが、我にはこれが終わりの始まりであるという確信があった。


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