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悪魔の尖兵がテンプレ異世界で茫然とする  作者: papaking
スリー・サイデッド・ストラグル
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120/130

予想通り?そうでもなかった

「来ます。さっきのよくわからない奴かも」

フェイが我等の押し問答を遮って言った。

「見えない……。ほんとに何かいる?」

アリスが目を細める。

確かに、物音一つしない。

だが、燐光で浮かび上がる背後の光景がわずかにゆがんで見える。

「隠身しているのか。元からそういうものなのか」

フェイが何本か持っている短剣を無言で投げつけた。

短剣に反応して、声ではない何かが虚空を走り抜ける。

「当たったか?」

「避けられました」

冷静にフェイが言う。

「でも、避けるということは、嫌がってるってこと!」

アリスがにんまりと笑い、竜巻のように剣を振り回しながら突き進んだ。

「うぇぇぇええええええええ!!」

悲鳴があがった。

アリスのものだ。

「やだ!強敵?姉さん、天国から見守っていてね!」

フェイがあわてて我の前に出た。

「ちがあああう!うぇぇぇ……。臭いだけ!勝手に殺すんじゃないわよ!」

「臭い?どんな臭いなのだ?!」

ガラテアが大声で聞く。

「今聞く?それ!ええと……生まれてから一回も風呂に入ってないオッサンの脇の下みたいな臭いよ!」

どんな例えなのだ。

だが、それを聞いたガラテアは至極真面目な顔だ。

「ガス・ストーカーだな。たちの悪い魔法生物で、行き倒れた死体に入り込んで悪さをすることもある。本体は無色透明だが、悪臭で居場所がわかるらしい。嗅いだことはないが、迷宮で鉢合わせした同僚がアリス嬢と同じような下品なことを言っておった」

「下品とか!言い過ぎじゃないの?!」

すまない。アリス。我はそれに抗弁する術を持たぬ。

「まだ奥から来ます!たくさん!」

フェイが警戒している。

声が硬い。かなりの数のようだ。

「ガラテア殿。ガス・ストーカーとやらは、燃えるのか」

「ん?いや、火がつくとは聞いておらんが……基本迷宮にしか出ぬし、火をつけて暴れ回られると困るから誰も試しておらんだけかもしれぬ。普通、退治するときは……」

ガラテアの話は続いているが、時間切れだ。

アリスの剣でもろくに効いていない。

これが多数となれば、ガラテアを守り切れるか怪しくなってくる。

我はガラテアと背中合わせに立ち、フェイを引き寄せた。

「ヨーハン様?」

フェイは頬を染めている。

違う。勘違いするな。そして病み骨の短杖ワンドを抜きながら大声で叫ぶ。

「アリス!火の攻撃魔法を使う!巻き込んでしまうかも知れぬが自力で守ってくれ!」

"大いなる精霊の守りエリア・レジスタンス"

これで、アリス以外の全員が四大精霊全ての加護を得る。

そして。

"無数の火花フルエリア・スパーク"

攻撃魔法というにはあまりにもささやかな火花が城そのものよりも広い範囲に弾けた。


四大精霊の守りでは閃光は防げない。

それがよくわかった。

我は目を押さえて下を向き、頭痛と混乱に耐えた。

単純に範囲の広いだけの"火花スパーク"がこんなに眩しいわけはない。

ガス・ストーカーはよく燃えたらしいな。

「まぶしかったです!」

文句を言うフェイは傷ひとつない。

ガラテアは気絶しているようだが、傷はなさそうだ。

だが、それ以外の全ては綺麗さっぱり吹き飛んでいた。

城はただの瓦礫の山となっていた。

唯一、黒焦げた柱のようなものが我等の前に立っている。

非常に何が言いたげな黒い柱が。

「……もしかして、アリスか?」

柱に口と目がついた。

「ひどい!ひどすぎます!」

アリスの防御力なら大丈夫だろうと思ったのだ。

ままならぬものだ。


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