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悪魔の尖兵がテンプレ異世界で茫然とする  作者: papaking
スリー・サイデッド・ストラグル
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廃城に集う者

しばらく後、声のないざわめきはそれ以上近寄って来ることなく、いずこかへ去った。

「動く死体ってやつでしょうか……なんでしたら一匹攫ってきましょうか?嫌ですけど……」

「今は無理しなくてよい」

フロンドで情報収集することを優先しよう。

そもそも、動く死体など連れていて他人に見られたら大変な事になる。

「……元気がなさそうでしたね」

アリスがぽつりと言った。

「何がだ?」

「動く死体が。よろよろしてましたし」

死体だからな。

しかし、ある意味傾聴すべき意見かも知れぬ。

カートの手紙やリーティカの話と比べ、運動能力が低過ぎるような気はした。

これが何を意味するかはまだわからない。

「進んでくれ」

私はフェイを促した。


そのまま数時間馬車を進めると、光が見えてきた。

フロンドの街にしては近すぎる。

「揺れています。松明かな」

フェイが霧を見透かした。

近づくと、それは果たして松明の光で、村はずれに集った男女が掲げていると分かった。

「とまってくれーーーぇ!」

何人かが道に飛び出して我等の行く手を阻んだ。

「どうしましょう。どいてもらいますか?」

フェイが何気なく怖い事を言う。

「力づくはよせ。普通の村人だ。それがしが話を聞いてみよう」

我は兜と面頬を外し、止まった馬車から下りた。

フェイとアリスが目を光らせて付き添っている。

「これは、若殿様。御行を横切りまして、誠に申し訳ございません」

止めたはいいが、予想外に豪華な馬車にどうしていいか戸惑っているらしき若者達の間から、白髭を伸ばした老人が小走りに歩み出て泥の中に跪いた。

「村長かな」

どうも貴族か何かと勘違いされているらしいが、誤解を解くのも面倒だ。

それに、誤解させておいた方が話を聞きやすいだろう。

「ははーっ。この村で頭役をやっております。誠に申し訳なく、すぐに道を開けますゆえ……」

「それがしはこの国の貴族ではない。そこまで大仰にすることはないぞ」

嘘はついていない。

我は老人の腕を引いて立たせてやり、カートの父の名を出した。

もちろん、カートに許可は取り、手紙も出立前に書いてもらってある。

我等は友人の父を訪ねる旅人というわけだ。

気楽な身分ということがわかれば話を始められると思ったのだが、手ずから立たせてやったことで感激されてしまったらしく、強引に村落の中に案内されてしまった。

「この国では貴族の権威が強いのだな」

「いや、どこでもこんなもんですよ?」

「ヨーハン様みたいに遠慮ない方が珍しいんです」

世間知らずみたいに言うな。


我等は村長宅に落ち着くことになった。

馬車も引き入れている。

「粗餐ではございますが」

村長は恐縮しながら出したのはハムの大切れと鶏の冷肉、保存用のかたいビスケットと酸味が勝ったワインなど。

肉もあまり食べないであろう農民達にしては豪華だが、歓待しておきながら全て冷たい食物だ。

「今日はかまどに火を入れておらんのかな」

我は食べながらなるべく非難めいた口調にならぬように聞いた。

「は、はあ……まことに……」

「いや、不平を述べているわけではないが。何か困ったことでもおありかな」

今も村長宅は人の気配がなく、給仕は村長本人がつとめている。

遠くから何かを叫ぶような声とすすり泣きが聞こえてきた。

「動く死体のことなどで、お困りかな」

我が重ねて聞くと、村長ははじかれたようにこちらを見た。

「ご、ご存じで……」


その後、饒舌になった村長、隠れていたらしいその妻と娘に話を聞くことができた。

彼らはフロンドの王都や周辺でおこった騒ぎについては全く知らぬという。

二週間ほど前から街道の往来が減り、他の村落からも出入りが無くなって不安に思っていたところ、昨日になって村はずれの共同墓地に穴があき、埋葬してあった死体が消えているのに気がついたらしい。

しかも、最後の死体に至っては穴から出ようと悪戦苦闘している最中であり、村人の視線の中、白昼堂々村を横切って森に消えた、と村長の年増の娘は身を震わせて語った。

それから村人総出で消えた死体の探索と墓の監視を続けているが、これと言った成果はあがっていないそうだ。

「まさか、他の村や都でもそんなことがあっただなんて……気が遠くなってきましたわ」

村長の娘はそういって我の腕を太い両腕でがっちりと掴んできた。

貴族の若様を射止めようということか。

このような事態にあってもたくましいことだ。

アリスとフェイがにこやかな顔のままギリギリと音を立ててワインの入った素焼きのコップを噛んでいる。

殺気を出すなというのに。


「それで」

我はさりげなく娘の腕をふりほどいて訊ねた。

「その死体というのはバラバラに歩いておったのかな」

「いえ、概ね北東……森の奥に行ったようでございます」

我らが会った怪しい影もほぼその方向に向かっていた。

目的地は同じなのか。

「何かそちらにあるのかな」

村長は首をかしげた。

「特には……何十年も前に誰も住まなくなった廃城があるくらいで。しかしずいぶんと遠うございますよ」

「城?」

「本当の貴族様が住まれていたわけでは……とかく、悪い評判の絶えない男たちが棲みついていたようで」

なるほど。強盗貴族ロバー・バロンの根城というわけか。


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