#071 : 竜王☆ハローワークへ
モンスター化した領主を倒した後は、街で盛大な宴が行われた。
サクラ「あっはっはー!酒よー!お酒を持ってきなさーい!」
私は上機嫌で街の人々とお酒を飲んでいた。
エスト『お姉ちゃん!飲み過ぎだよー☆』
辰美「酔った勢いでサクラさんに密着せねば!」
とても嬉しそうにはしゃぐエスト様と鼻息荒く何やら企んでいる辰美。
ジル「いやぁ…あははははは。」
街の人々と楽しそうに会話するジル。
わー!わー!
宴会場のあちこちから歓声が上がる。
私の周りには既に大勢の人が集まっていた。
街の人A「この鬼の姉ちゃん!酒強すぎだろーw」
赤ら顔の男性が驚きの表情で叫ぶ。
街の人B「わははははは!」
周りの人々も一斉に笑い声を上げる。
街の人C「でも!ぺったんこだよな!」
別の男性が私の胸を指差しながら言った。
ズガッ!!!
地面に激しい衝撃音が響き渡る。
私は無意識のうちに何人かをドラゴンスクリューで地中に埋めていた。
わー!わー!
宴会場のあちこちからさらに歓声が上がる。
その時 ── 広場の端で、街の子供たちがサクラの真似をして遊び始めていた。
子供A「オラァァ!ドラゴンスクリュー!!」
子供B「ぎゃー!地面にめり込んだぁぁ!(泥に顔からダイブ)」
子供C「次は天の声役やるー!《サクラは必殺スキルを発動した!》」
子供達 \\ ドラゴンスクリュー //
大人たち「お前らやめろww」
サクラ「……私のDNAが、受け継がれていく……(誇らしげ)」
子供D「サクラ様の必殺技!《ステータスオープンッヌ!》」
子供E「ぺったんこぉ〜♪」
大人たち「お前らやめろぉ!?」
サクラ「…………(悲しげ)」
◇◇◇
……だが、その輪の中にいない者が一人だけいた。
辰夫「……。」
少し離れたところで、辰夫が静かに立っていた。
彼は右手にグラスを持ち、水を少しずつ飲んでいる。
左手は軽く握り締め、時折震えているようにも見えた。
彼の瞳に宴会の灯りが映り、複雑な表情を浮かべていた。
辰夫の持つグラスに月が映り込んでいた。
その月は驚くほど美しく、まるで水面に浮かぶ宝石のようだった。
時折、辰夫の目から零れ落ちる涙がグラスに落ち、月の形を歪ませる。
しかし、すぐにまたその美しい姿を取り戻すのだった。
……何度も。
そう……何度でも……。
辰夫はその光景に心を打たれ、何か大切なことを決意したかのような表情を浮かべた。
彼の目に決意の光が宿り、肩の力が抜けていくのが見て取れた。
── そして。
辰夫はついに決意を固めたのだった。
……辰夫の決意それは──魔王軍ではなく、次に進むべきは “ハローワーク” に行くことだった。
(*この人は竜王 = 竜の王様です。)
──後日。
辰夫は履歴書を前に三時間ほど悩んでいた。
職歴欄に「竜王」と書いて良いのか、
資格欄に「黒炎」「忠誠心」などを書いて伝わるのか。
辰夫「……自己PR、“千年忠誠を尽くしました経験あります”……これは過労死一直線ですな」
《天の声 : 面接官「うちにそんな長期契約ないです」》
辰夫「職務経歴……“魔王軍勤務”。雇用形態……えっと……正社員?」
《天の声:ブラックです》
辰夫「……趣味の欄に“忠誠”と書くのは……やはり重すぎますかな……」
《天の声 : なお、この日、結局一文字も書けなかった》
── いつの日か辰夫はサクラからマグロが儲かると聞き、マグロ漁船に乗る──。
◇◇◇
その日の深夜、泥酔した私は、ジルの家の女子部屋で寝ていた。
するとその時……頭の中に天の声が響き渡った。
《アルコールの量が一定に達しました。サクラは唯一の個体である【酒呑童子】へと進化します。》
サクラ「ん……進化?……むにゃむにゃ……ん……」
私は目を閉じたまま、わずかに眉をひそめながら呟いた。
その後、私は完全に意識を失い、深い眠りに落ちていった。
(つづく)
\\次回予告!//
祝勝会の熱気も冷めやらぬオーミヤの街。
子供たちは「ぺったんこごっこ」で遊び、大人たちは「サクラ酒」で二日酔いに沈む。
一方その頃、竜王・辰夫は机に向かい、履歴書と3時間のにらめっこ。
「資格:黒炎。趣味:忠誠」──果たしてこれで採用されるのか!?
そして泥酔したサクラを待ち受けるのは、鬼族最強伝説【酒呑童子】への進化イベント!
だがそのスキルは──まさかの【酒豪】!?
次回!
#072 : 最強の鬼☆そのスキルは【酒豪】
\\お楽しみに!//