表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/168

#041 : 竜王任務☆穴を穿て(辰夫スクリュー☆零式爆誕!)

リンド村での生活にもだいぶ馴染んできた。

私は村の散策を日課にしていた。


道ゆく村人から挨拶をされる。

簡単ではあるが、コミュニケーションをとれる。


村人A「サクラさんおはよう!」


サクラ「あら、おはようございます。」


村人B「お!サクラさん!とても新鮮な野菜が入ったから食べに来てよ!」


サクラ「ありがとうございます。是非お伺いさせていただきますね。」


村の子供「お姉ちゃんおはよー!」


サクラ「ふふ。おはよう。」


これがとても気持ち良いのだ。


──


散策の途中、村長に呼び止められた。


村長「あ!サクラさん!少し良いですか?」


サクラ「おはようございます。村長さん。なんでしょう?」


村長「実は……村の北の山に火竜が棲みつきまして……」

「村の狩人達が仕事にならないのです……」

「火竜を退治していただくことはできませんでしょうか?」


サクラ「うーん……火竜……火のドラゴンか。良いですよ。」

「まぁ竜王の辰夫より強いという事はないでしょうし。」


村長「本当ですか!ありがとうございます!お礼はさせていただきますので!」


サクラ「はい。お任せくださいw」


私は村での信用度アップ、素材稼ぎ、お金稼ぎ、レベル上げの一石四鳥になると考え、この依頼を受けた。


村長「今のさわやかな人……本当にサクラさんだよな……?」


遠くなっていく私の後ろ姿を見つめながら村長はしばらく悩んだという。


──


宿に戻るとエスト様と辰夫がゴロゴロしていた。


エスト『お姉ちゃんおかえりー☆』


エスト様は寝転びながら読んでいた本を閉じて言った。


辰夫「さ、サクラ殿!我は夜のバイトまで休んでいるだけでして……」


辰夫は慌ててソファーから起き上がった。


そんな辰夫を横目で睨みつけながら私は2人に話をする。


(な、なんで……睨んでるのか……ガクブル)

辰夫の動悸が上がっていく。


ちなみに何か理由があるわけでもなく、なんとなく睨んでるだけである。



サクラ「エスト様。辰夫。決めました。」

「この村を世界征服した際の拠点で確定にします。」

「エスト様のホームである常闇のダンジョンにも近いし。」

「魔王軍の管理もしやすい。最適な場所となるでしょう。」


エスト『なるほど☆』


エスト様の紅い瞳が輝き出した。


辰夫「ふむ。良い考えですな。」


辰夫も乗り気のようだ。


私は辰夫の両肩を掴み、ジッと眼を見て言った。


サクラ「よし!辰夫ッ!まずは村に人を集める!」

「村を豊かにするような名物を作りますよ!」

「この村を大きな街にして、やがては大都市にするのです。」

「サクラ帝国のねッ!!!!!」


辰夫「はい!……は……い?」


エスト『サクラ帝国?……待って!!私が魔王だよ!?』


サクラ「だからね?辰夫!とても重要な任務を与えます!」

「今から言う任務は辰夫にしかできないの!」

「辰夫にだからお願いできるの!」(エスト無視)


辰夫「!?……お………ッ……は、はいッ!」


辰夫の眼に光が戻った。


そうだ。

忘れてたが辰夫はこんな精悍な表情(かお)が出来るのだ。



サクラ「よし……今すぐに温泉を掘り当ててこいッ!」


征服とは “恐怖で支配” することではない。

“便利と快楽” で依存させることだ。

温泉に浸かった者は、もう敵には戻れない


── サクラ哲学:湯けむり支配論より。


辰夫「……ん……?……はい?」


一瞬で辰夫の精悍な表情が曇った。


辰夫の両肩を掴んでいる手に力が入る。


サクラ「聞こえなかった?」

「……温泉を掘り当ててこい。掘り当てるまで帰って来るな!」


辰夫「ど、どのように……?」


私は辰夫の肩から手を離し、華麗に椅子に座ると、説明をする。


サクラ「ん?ドラゴンの姿になって天空まで上昇するじゃん?そこから超高速でキリモミ回転して地面に穴を穿つ……“辰夫スクリュー☆零式” で一発でしょ?」


辰夫「そ、その技……我のスキルセットにありません……」


エスト『つ!強そう☆』


サクラ「あぁ、私の言い方が悪かったのかな?ごめんなさい。まずね?ドラゴンの姿になるでしょ?そして天空まで上昇──高度1万メートルくらいがいいかな。そこまで高くなると凍るけど注意ね。そのままキリモミ回転で音速で落下すれば深い穴が掘れるし温泉も出る。稀に死ぬ。」


辰夫「……い、言い方の問題ではありません。」


エスト『なるほど!辰夫!簡単だね☆』


サクラ「ようするに無理なんだな?何ならできるんだよ!お前は!竜王さんよー?えー?」


辰夫「……。」

私は辰夫を一括すると、一筋の涙が辰夫の頬を伝うのが見えた。


サクラ「……と……まぁ冗談はこの辺にして、村を発展させたいと思います。」


私は髪を掻き上げ、足を組みながら言った。


エスト『冗談だったんだ……』


辰夫「絶対に本気の顔でした……」


サクラ「まぁなんか出たらそれを名物にします。地獄の毒沼でも?溶岩でも?人間は案外なんでもありがたがるんですよ。」


エスト『凄い説得力!?』


辰夫「……納得してしまった……」


サクラ「っと……そ・の・前・にッ!北の山に火竜が棲みついたみたいです。これを退治してくれと村長さんから依頼を受けました。火竜を倒せば……依頼料も貰えるし、村に恩を売れますしね?」


──そう。

ムダ様は言っていた。

《恩を売って、暴力を合法化しろ。後で殴ったって「助けてくれた人だから」で許される。それが征服の第一歩だ。》


だから私はこの依頼を受けた。

征服の足がかりとして、実に都合が良い。


辰夫「む。火竜ですか。」


エスト『おぉー!クエストだね☆』


サクラ「火竜を倒せば、素材も出るかもだし……私の配下にできたらアツいわよね?」


エスト『あれ……お姉ちゃん?前も言ったけど私たちの関係性……ちゃんと整理しよう?』


サクラ「ちょっと辰夫と私で行ってきます。エスト様は留守番をお願いします。」


辰夫「ふむ。」


エスト『ええー……私も行きたい!』


サクラ「エスト様……良いですか?私はエスト様を守ると決めました。それは危険があると分かっているところにわざわざ連れて行かない、という事でもあるのです。」


エスト『じゃあお姉ちゃん!火竜倒したら世界征服しようね!?』


サクラ「それは私が決めることです。」


エスト『あれ?なんでだっけ?お姉ちゃん……?』


サクラ「……。」(無視)

エスト『……。』(困惑)


(沈黙)


サクラ「エスト様!良い機会なので、テレポートで常闇のダンジョンの配下の様子でも見てきてはいかがでしょうか。ワイトもサタンも喜ぶかと。」


エスト『あ!そうだね!?最近会ってないしね!』


サクラ「はい。配下のモチベ管理は大事です。」


辰夫「!?」

辰夫はモチベーション管理について深く深く考えた。


サクラ「では、辰夫。行きますか。夜のバイトまでには戻らないとね。」


辰夫「は……?い。」

辰夫はそれでもバイトには行かすのかと思った。


エスト『いってらっしゃーい☆』



辰夫「ドラゴンの姿になって飛んでいきますか?」


サクラ「せっかくなので、散策しがてら行きたいかな。」


サクラ「ふふ。頼りにしてますよ。辰夫。」


辰夫「………え?あ、はい!」


── こうして私と辰夫は北の山に向かった。



(つづく)


◇◇◇


《征服ログ》


【征服度】 :1.25%(村長からの信頼獲得+対火竜クエスト受注)

【支配地域】:リンド村(拠点化進行中)

【主な進捗】:

・村人との交流が日課になる

・火竜討伐クエストを村長より正式依頼

・今後の征服拠点としてリンド村を指定

・辰夫に“辰夫スクリュー☆零式”の温泉掘削任務を与えるも拒否される


【特記事項】:

・「征服=理不尽を殴る正義」──サクラ流ジャスティス、拳で拡大中。

・辰夫スクリュー☆零式:天空から音速キリモミ落下の土木技(物理)

・なお辰夫はモチベ管理されつつ殴られている


◇◇◇


──【今週のムダ様語録】──

『恩を売って、暴力を合法化しろ。後で殴ったって「助けてくれた人だから」で許される。それが征服の第一歩だ。』


解説:

*サクラはこの言葉を“正義の皮をかぶった暴力の免罪符”として心に刻んでいる。

ちなみにムダ様はこれをプロレス雑誌のインタビューで言ったらしいが、どこの誌面にも載らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ