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【14万PV突破】魔王がポンコツだから私がやる。──バグってる異世界をぶん殴る女たち  作者: さくらんぼん
第10章:【サクラ】常闇のダンジョンを脱出しようー!!
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#041|桜021:お姉ちゃんね?ヒロイン判定、取り消されたの

「はぁはぁ……はぁ……

 やっと……やっと着いた……」


 大怪我をしたエスト様を背負った私は、

 ドラゴンの居る広間に到着した。


 エスト様を広間の端にそっと寝かせ、

 広間の中心に向かって歩く。


 エスト様の寝息が静かな広間に響く。

 ふと、かすかな声が漏れる。


「……お姉ちゃん……」


 振り返る私。


「ちょっと待っててね。

 お姉ちゃんは、今から……

 大きなトカゲを片付けて、

 怪我の治し方を聞いてくるからさ?」


 震える手を握り、拳を固めた。


 怖い。でも、止まれない。


 拳を握った手が、まだ少し震えている。

 でも──この震えごと、“力”に変えてやる。


 そして。


 すぅ──


 大きく息を吸い込み。


「ドラゴンッ! ドラゴンッ!

 聞こえる? ドラゴンッ!」


 精一杯の声を張り上げて叫んだ。


 静寂。

 どこかで、風が石をなでた。


 遠くから声が聞こえる。


「……また貴様か! 鬼の娘ーッ!

 またしても命乞いをする事になるぞーーーーーッ!」


 ドラゴンが叫びながら飛んできた。


 ズシンッ………!!


 ドラゴンが私の目の前に着地した。

 地面が激しく揺れる。


「くっ………」


 私は揺れる地面に手をついた。


「……エスト様が! 魔王様が……!

 大怪我をしてしまった!

 助ける方法を教えて!!」


 すがるような声でドラゴンに助けを求めた。


 声が震えているのは、怖いからではなく、

 エスト様を失うのが怖いからだと自分に言い聞かせる。


「うん? ……ふはははははッ!

 鬼の娘よ! なぜ我がお前達の手助けをするのだ?」


 ドラゴンは失笑した。当然だ。

 それでも私は話しを続ける。


「勝手なことを言っているのは分かってる!

 でも! でも! 私にはこの子が全てなの!

 どんなことをしてでも治し方を教えてもらう!」


「……ふはは!

 我も長い間のこの生活に飽いていたところだ!

 ちょうど刺激が欲しかったところよ!

 よかろう! 鬼の娘よ! 教えてやろう!」


 沈黙。


「……我を倒したらなーーーーーッ!」


 ドラゴンが大きな翼を広げると、凄まじい殺気が私を襲った。


「ッ……!!」


 私は覚悟を決め、キッとドラゴンを睨みつける。


「やはりそうなるのね……でもね……?」


「……今回はエスト様が見ていない……

 私も本気を出すよ? いきなり光魔法! フラッシュ!」


 ピカッ!!!!!


 不意をついた攻撃!

 手のひらから眩い光が放射された。


「ぐぁ!?」


 激しい閃光がドラゴンの視界を奪う。

 広間全体が一瞬にして真っ白に包まれる。


「な!? 光魔法?

 バ! バカな! ゆ、勇者か!?」


 ドラゴンは両目を覆い、首を激しく振る。

 その巨大な体が不安定に揺れている。


「奇襲大好き☆ 先手必勝の目くらましよ!」


 フラッシュの余韻で、

 私の周りがキラキラと輝いているように見える。


「しまった! 油断した……!」


 ドラゴンは完全に不意を突かれ、慌てている。


「ふははー! ……からのー!!!

 ライトアロー連打!!!」


 光魔法での追撃!!

 指先から無数の光の矢が放たれる。


 それぞれの矢は、まるで意志を持っているかのように、

 ドラゴンに向かって飛んでいく。


 スドドドドド!!!!!


 無数の光の矢がドラゴンに襲いかかった!

 ドラゴンの鱗に当たるたびに、小さな爆発を起こす。


「ぐッくっ……!やはり勇者か!!

 だが、それがいい。

 力に飢え、誇りを忘れぬ者よ、

 我を退屈から解放してみせろ!」


 ドラゴンは怯んでいる。

 その巨体が後ずさりし、壁に背中をぶつける。


 その瞬間を私は見逃さなかった!


「ぶぁーかぁーめええええーーーーー!

 怯みおったなあああああwww

 いくぜぇえええええええ!!!!!」

 

 超笑顔でダッシュ! 間合いを詰め──そして!


【スキル:《怪力──アイスのフタ舐め我慢したモード》発動】


 ピキィィィッ……!


 あの時──

 アイスのフタに残った白いバニラの宝石を舐めたかった。


 でも、視線を感じた。

 ……今やったら終わる──社会に殺される。


 その一瞬で、私は人生最大級の我慢をした。


 世界が静まり返っていた。

 スプーンだけが、私を見ていた。


 ……だから今はその分、暴れる。


「私に”我慢”を強いた代償……

 たっぷり払ってもらうからな?」


 全身の筋肉が膨れ、気合が空を揺らす。


 ズズズッ……

 

 ドオォォォン!!


 拳が地を砕く!


 構えは低く、気配は殺気だけを残す。


「あのフタの裏のアイスを、

 私は一生忘れねぇ……これは供養だッ!!!」


 髪の毛が逆立つ。


「今の私は理性を超えた存在……そう、未練の塊ッ!!」


 岩盤が裂け、広場全体に重低音の衝撃波が広がる。


「社会が私に求めたのは理性だったが──今ここでぶち壊すッ!!!」



【システムログ】

 ・怪力補正:異常値

 ・出力倍率:推定1200%

 ・警告:ヒロイン判定を取り消しました

 ・女子力:測定不能(センサー破損)


「え」


 一瞬の沈黙。


「なんだ……? 世界が震えている……!?

 ……ヒロイン……判定……? なにを言っている……?」


 なんかドラゴンも固まってた。



「……」(私)

「……」(ドラゴン)



 そして──天井から小石が落ちてきた。


 コン……


 ドンッ!!!


 小石を合図に地面を思い切り蹴り、

 ドラゴンに向かって猛ダッシュする!


 ドラゴンの片脚を掴んだ。


「いくぞ! トカゲぇ?

 今の私は”最高に理不尽”だぜ?」


 重い!

 いや、この重さがいい。

 この抵抗が、「挑戦」の証だ。


 ……ムダ様……あの日、深夜のテレビであなたの言葉を聞いてから──


『ドラゴン・スクリューってな?

 倒す技じゃない。証明する技だ。

 マイナンバーカードのパスワードは回転数だ。

 忘れたら体で思い出せ』


 私もずっと、この技で「ここにいる」って証明させて欲しい。


【システムログ】

 ・補足:サクラは暗証番号を「1234」に設定しています(推奨されません)


「うっさい!!」


 ──そして。


 私は心の中で、かつての自分に問いかける。

 ねぇ、教えてあげたい。東京の頃の私。


 満員電車に潰されて、

 上司の顔色ばっかり見てたあの頃。


 “力のあるものが得をする世界”なんて、

 壊れてるって思ってたよね。


 ……でも今なら分かる。

 この世界だって壊れてる。

 でも──私が本気を出せる壊れ方だ。


 壊れてるからこそ、笑えるんだよ。

 今の私はね?

 巨大なドラゴンに、

 ドラゴン・スクリューをかけようとしてるの。


 息切れして、

 汗だくで、

 膝もガクガクで、

 怖くてたまらない……

 

 だけど──

 びっくりするくらい────生きてるッ!!!!!


「……ポンコツな妹のためにさぁあああああーーーせーーーのッ!!

 ドラゴンスクリュぅうううぁああああッーーー!!!」


 ドラゴンの足を掴んだまま倒れ込むように回転──そのまま体ごと振り抜く!


 ッぐるんッ!!!

 ドガァッッッ!!!!!!!!!!


 ドラゴンの巨体が地面にめり込む。


「ぐはぁッ……!」


 ドラゴンスクリュー炸裂。

 衝撃が広がる。

 この異世界が、確かに揺れた。


 私は立ち上がり、拳を振り下ろすように叫んだ。


「っは!! どうよ!!

 これが私の宣戦布告だァーッ!!

 待っとけよクソ世界!!

 今から征服しに行くからなぁああああッ!!!」


「まさか……この我が……!?

 鬼の娘よ……貴様、一体何者だ……?」


「はぁ?通りすがりのお姉ちゃんだよ!!美人のな!!」


「……な、長いこと生きてきたが……

 貴様ほど暴力的で──いや、理不尽な挑戦者は初めてだ……!!」


 静寂。

 広間に残るのは、埃と熱気だけ。


 私は周囲を見回し、拳を高々と突き上げた。


「……どやぁッ!!」


 私は勝者の誇りを噛みしめた。


「本物のドラゴンにドラゴン・スクリューをキメたったわー!」


 ピョンピョンしてダブルピース。


「異世界広しと言えども私が世界初なんじゃないのー!?」


 倒れてるドラゴンの元に駆け寄り、

 戦意を失ったドラゴンの肩に手を回してドヤ顔。


 沈黙。


「……うるさい……」


 エスト様の寝言が聞こえた。



(つづく)



◇◇◇



──【グレート・ムダ様語録:今週の心の支え】──


『ドラゴン・スクリューってな? 倒す技じゃない。証明する技だ。

 マイナンバーカードのパスワードは回転数だ。忘れたら体で思い出せ』


解説:


 ムダ様にとって「証明」とは、書類でもデータでもなく”回転”である。


 彼の世界では、個人情報とは筋肉の記憶、つまり肉体が刻むIDだ。

 ゆえに彼は言う──「マイナンバーカードのパスワードは回転数だ」と。


 それは精神論ではない。

 彼は本当に覚えていない。


 暗証番号を忘れたとき、彼は肉体に頼る。

 記憶装置としての脳ではなく、身体そのものを叩き起こすのだ。

 結果、毎回なぜかリング上で回転している。


 行政的には不正解だが、哲学的には正解。

 ムダ様にとって、“思い出す”とは、文字通り「再び回ること」だからだ。


 たった4桁の数字なのにな。

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