表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/170

#039 : サクラ哲学☆征服は布団から始まる


夜通しでの宴が終わると、私たちは宿屋に向かった。


サクラ「部屋は二部屋で、私の部屋とエスト様と辰夫の部屋で異論はありませんね?」


エスト『異論しかない☆』


辰夫「我は……屋根があれば……どこでも……良いです……」


私は辰夫のことをもう少しだけ優しくしようと思った。


──


案内された部屋に入るとベッドが2つあった。


サクラ「おおお……ベッド……久しぶりのベッドに布団……」


エスト『お姉ちゃん!これフカフカするよ!わーいわーい☆』


エスト様はベッドの上でぴょんぴょんと飛び跳ねている。

そうか。エスト様には初めての体験なんだな。


思えば……この子は魔王としての過酷な運命を背負って生まれたのに……とても優しいし純粋だ。


私が守らなければ。この子を。この笑顔を。

簡単にレベル上げできる大切な養分を。

そして埃が舞うから飛び跳ねるのはやめろ小娘が。と思った。


──


そして大浴場に向かった。

この異世界に転生してから初めてのお風呂である。


サクラ「おおおおお!お風呂ー!やったー!お風呂ー!」


エスト『おおおおお?お湯?なにこれ!お湯?わーい☆』


エスト様は湯船にソロっと指を入れたり出したりしてはしゃいでいる。


エスト『ぁ……ぺったん……じゃなくて……』

『お!お姉ちゃんッ!早く世界征服しよう……ね?』


サクラ「………。」


私の胸を見たエスト様が何故か決意を固くし、同時に私の殺意も固くなった。


──


その後、村の酒場で食事をする。


昨晩の宴で村人達の警戒心は和らいでいるように感じた。

エスト様も辰夫もまともな食事に感動していた。


サクラ「調味料で味の付いた料理ー♪…んーおーいしー♪」


エスト『うわぁー何これ!何これ!美味しい☆美味しい☆』


辰夫「我は……残飯を……いただきます……」


私は辰夫のことをもう少しだけ優しくしようと思った。


──


その晩、私たちは宿屋の部屋で今後の方針を話し合った。


エスト『しばらくはこの村を拠点にしようよ☆』


サクラ「賛成です。とても良い村ですしね。」


私は笑顔で頷いた。


辰夫「拠点にするためにも村人達と早く打ち解け合いたいですな。」

「何か仕事を手伝うとか良いかもしれませんな。」


(*ここから辰夫の壮絶なバイト人生が始まるのである)


エスト『じゃあ決まり☆拠点にするぞー☆』


サクラ「征服ってのは、力でねじ伏せるんじゃなくて、“ね、こっちのが楽でしょ?” って笑いながら囲うものなんですよ。なので、何か考えます。」


エスト『お、お姉ちゃん?』


辰夫「(今のサクラ殿の笑顔が一番こわい……)」



一度布団の味を知った民は、もう従うしかないのよ。

征服ってのは、朝に布団から出られなくすることから始まるの。


── サクラ哲学:布団征服論


◇◇◇


── それから数日後。


その日は辰夫が夜間の土木工事のバイトに行ったので、私とエスト様の2人で酒場で食事をしていた。


私たちが食事に舌鼓を打っていると、3人の男が絡んできた。


男1「おっとー?なんで魔物の女がこんなとこでメシ食ってんだ?あ?」

男2「へっへっへ」

男3「けへへへ」


私はビールの樽ジョッキを置くと溜め息をついた。


サクラ「はぁ……異世界転生のお決まりパターンが来ましたね……まったく……どこの世界でも男ってやつは……」


エスト『お姉ちゃん。暴れちゃダメだよ?』


エスト様が心配そうに私を見る。


サクラ「はい。大丈夫です。」


この平穏な生活を守るためにもここで暴れるという選択肢は無かった。


サクラ「何だお前たちは?私たちに何の用だ?」


会話をしつつ、スキル 神眼でステータスを確認する。


(ふむ。全員レベル30前後……ねぇ……)


男1「鬼の姉ちゃんよ!俺たちはな?クエストでこの村に来てる冒険者様さ。魔物が俺たち人間と同じメシを食ってんじゃねーよ!」


サクラ「楽しい食事の時間だというのに……邪魔をしないで欲しいわね。」


男2「ツノの生えた化物が!こんな不気味なガキまで酒場に連れてくるんじゃねーよ!酒が不味くなるんだよ!とっとと出てけよ!」


男のひとりが激しく机を叩く。


サクラ「ふふ……エスト様の悪口は……好きなだけ言って構わない。全く問題無い。どんどん言えば良い。良いこと教えてあげる。オネショするのよこの子。」

「でもね?この美しい私への悪口は許せない……んだがぁッ!?」(ブチギレ)


エスト『あれ?!……お姉ちゃん!今度さ!?私たちの関係をちゃんと整理しようね?』

『あと!オネショじゃないもん!汗だもん!多感な時期なんだもん!』(謎)


……場が一瞬、静まった。


その隙を縫うように、おばあちゃんの声が脳裏をよぎった。


──『たくあんはね?干して、締めて、塩で泣かすのよ。

     ああ、お爺ちゃんも良い声で泣いたわぁ……』──


……そうね、おばあちゃん。泣かせてあげるわ。

  こいつらも。っておじいちゃん!?


私は立ち上がり男たちを睨みつける。


サクラ「そして私の胸ばかり見るな!いやらしい!」


男達「「「ないだろ!」」」

エスト『ないだろ☆』


男達とエスト様はすかさずツッコミを入れた。


嗚呼……なんということでしょう。

身内であるエスト様も血祭りの対象となってしまったのです。


良いだろう。もう平穏な生活とかどうでもいい。


小娘も含めてコイツ等を埋める。


──そう決めた瞬間

店内がざわつき始め、他の客達の声が聞こえてきた。


ざわざわ……ざわざわ……


「ないない。」

「な……い……よな…?」

「あぁ……ないな……」

「え?どこにあるの?」

「ねーよwww」

「そういう種族なのかと思ってたw」

「お姉ちゃん、胸どこに落としてきたの?」

「拾ったら返してあげるね!」

「しっ!見ちゃいけません!」

「いつから胸があると錯覚していた?」

「わんわん!」(ないだろ!)

「にゃーにゃー!」(私のがあるわ!)

「シュッシュッ!」(カマキリが威嚇)

「ぱくぱく!」(金魚)

「……」グラスを持つ手が震えて酒こぼす客

「ひゅう!」窓際の客が口笛

「スカッ!!」奥の席でダーツやってた客が外す


ざわざわ……ざわざわ……



サクラ「……うわーーーーーん!この店にいるみんな!表に出ろーーーーー!」


(つづく)



\\次回予告!//


サクラ「次回は酒場での事件よ!」

エスト『え?事件?』

辰夫「我は……また残飯でしょうな……」


サクラ「違うわよ!男3人に絡まれて!」

エスト『でもお姉ちゃん、胸の話でブチギレただけじゃん☆』

サクラ「言うなぁああああああ!!」


辰夫「タイトルは……」

サクラ「『#040 : 酒場決戦☆ばーか連打で村が揺れる』だ!!」


エスト『次回も、ぜーったい見てね☆』

サクラ「見なさい!でないと “ばーか” って100万回囁きに行くからね!」


\\お楽しみに!//

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ