#003 : お姉ちゃん☆魔王が妹な件
前回のあらすじ
→ 恥ずか死して、異世界転生ガチャ爆死。
◇◇◇
……転生ガチャで鬼を引いた(爆死)
それから “妙な力” に引きずられた ──
あとから思えば、あれがエスト様の召喚魔法だった。
でも、まずはその前の話から。
◇◇◇
夢を見ていた。
「家族なんて、いらない」
実際、両親は最初からいない。
おじいちゃんとおばあちゃんに育ててもらってた。
おじいちゃんは私が中学の時に亡くなり、高校卒業の朝──
冷たくなったおばあちゃんの手を握った時、心臓が ”ぐちゃ” っと潰れた。
遺品整理で見つけた家族写真。
私は全部、押入れに突っ込んだ。
「家族なんてクソ」って叫びながら。
でも夜中に、こっそり一枚だけ取り出してた。
三人で笑ってる写真。
バカみたい。でも捨てられなかった。
矛盾してる自分が一番ムカつく。
その日からずっと、“寂しさ”という呪いに取り憑かれている。
きっと、これは一生消えない。
──「家族なんてクソ」って、もう千回は叫んだ。
それなのに、また──誰かと笑ってご飯を食べたい自分がいる──。
……大嫌いだ。
でも──。
………
……
…
── 少女の声が、朦朧とした意識の中に滲み込んでくる。
『……ちゃん……お姉ちゃん!』
『お姉ちゃんッ!!起きてよー!?』
同時に、誰かの手が私の肩を揺さぶっている。
「ん……おばあちゃん……私ね……ずっとね……?」
「いや、違う……おばあちゃんはもう──」
違和感がビビッと走る。
私は一人暮らしのはずなのに、誰かに声をかけられている。
『あれー?起きないなぁ……」
『おかしいな……別世界に来た反動かなぁ?』
「えッ!? 別世界!?なに!?」
『あ!やっと起きたー!』
知らない女の子が私を見つめて嬉しそうにしている。
「なんでッ!?お嬢ちゃん!?だれッ?」
反射的に跳ね起きる ── そこは見知らぬ光景だった。
石壁、石の床、薄暗い。カビの臭いが鼻につく。
『やったー!召喚成功だッ!わーい⭐︎』
『私は魔王のエストだよ☆』
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『ここは"常闇のダンジョン"最深部の魔王の間!』
『お姉ちゃんの魂、私と同じ色してた!』
『寂しい色……だから呼んじゃった☆』
「…………?」
……この子の言葉が頭に入ってこない。
よく見たら、この子、顔色が青白い。
目は真っ赤。頭の横から、ツノ……!ツノ!?
『でね!でね!魔力でお姉ちゃんの体も作ったの!!』
『お姉ちゃんの “鬼の力” が強くて、調整難しくて盛り過ぎちゃったけど──』
「おにのちから……?」
『私の魔力が流れてるから!お姉ちゃんは私の家族!』
「かぞく……?」
『これから私と一緒に世界を征服しようね☆』
「せかいせいふく……?」
女の子は紅い瞳をキラキラさせている。
(脳内パニック中)
「情報過多ァーーッ!ちと待った!」
「召喚と魔王と鬼と家族と世界征服って単語で混乱してます!」
(必死に熟考中)
いや、待て。本気で言ってる?
(キラキラしてる女の子の目を見る)
うん。言ってる、目が。
マジで言ってる。
『あ、そうだ!お姉ちゃんのお名前、まだ聞いてなかった!』
「私の名前……サクラ……」
『うん!サクラって……えへへ、なんかいいね!』
ちょっと間を置いて、エストがぽつりと呟く。
『パパも、家臣のみんなも、みんな居なくなっちゃって……』
エストは持っていたボロボロの本をギュッと抱きしめた。
きっと何度も何度も読み返したものなのだろう。
『だから、家族が欲しかったの。』
『ずっと一人で、寂しくて……』
その声は、さっきまでの魔王の声じゃなく──小さな女の子の声だった。
(そうか、この子も……私と同じなのかもな)
私は思わず目を逸らして呟いた。
おばあちゃんが亡くなってから、誰も私を待ってくれる人はいなくなった。
帰る場所も、「おかえり」って言ってくれる人も。
この子の気持ちが痛いほど分かる。
── この子は私だった。
“家族”──
(求めてない!そんなもの求めてない!)
でも心の奥で、違う声がささやく。
(……)
(嘘つき)
家族という言葉に表情が緩む。
否定すればするほど、顔が笑ってしまう。
(あぁ、ダメだ)
(もう、嘘はつけない)
求めていたんだ。
誰よりも、強く。
それが今、分かった。
(つづく)
\\次回予告!//
サクラ、ついに己の新ボディを目撃!
だが、そこに待っていたのは──期待の☆巨乳ボーナスではなかった!?
燃え上がるツノ、沈むハート!
逆ギレ、暴論、そして伝説の「巨乳論争」が今、幕を開ける!
次回──
#004 : 鬼ボディ☆ツノは出たけど胸は出なかった件について
\\お楽しみに!//