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【14万PV突破】魔王がポンコツだから私がやる。──バグってる異世界をぶん殴る女たち  作者: さくらんぼん
第01章:【サクラ】恥ずか死お姉ちゃんとポンコツ魔王の転生録
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#002|桜002:魔王の願い。──血のかわりにココアを。

挿絵(By みてみん)

*サクラさんは基本、ブレます。


 ──光の中で、ココアの香りがした。


 甘い。寂しい。──それでも、温かい。


(おじいちゃん、おばあちゃん……私、笑ってるよ)


 ……と、しみじみしたのは一瞬だった。


「……って、なんか……落ちてない?」


 ヒュォォォオオオオ……!


「いや、落下してるぅううう!?」


挿絵(By みてみん)


「第二の人生、いきなり落下スタート!? チュートリアルどこ!?」


「やばい! スカート!? 全空にパンツ晒してる!?」


「……いや、ジーンズだ!!セーフ!!」


「って、まずは受け身だッ!!」


「そうだ!! 漫画で読んだ五点着地思い出せェェェ!?」


「いや、五点着地ってどうやんだよぉおおお!?」


 私は叫びながら、異世界の空を落下した。


「五点って手足頭!? ……頭!?オデコか!?」


 私はオデコをさすった。


(完璧なプランだ……)


《天の声:それ死ぬぞ》



◇◇◇



 同じ匂いが、異世界にも漂っていた。


 常闇ダンジョンの最奥。

 近づくだけで肺が焼ける場所なのに、

 なぜかホットココアの匂いがする。


 魔法陣の足元にマグカップ。

 その前で、銀髪の少女が魔導書を広げていた。


 ──魔王家最後の末裔、エスト。


「もう、ひとりはいや……

 世界を征服しないと……!」


 世界を征服できたら、パパが褒めてくれる気がした。

 そうしたら、きっと誰かが帰ってきてくれる気がした。


「でも……ひとりじゃ戦えない。誰か……家族が欲しい!」


 震える手で、魔導書を開く。


「えと……術者の血を一滴、魔導書に垂らすこと……ひぇッ……」


 指先にナイフを近づけ──


「…………痛いのはいやっ!!」


 反射的に、バッとナイフを遠ざけた。


 視線が横のマグカップへ滑る。


「……いけるよね? ココアって血っぽいし……

 ミルク入ってるけど、なんか成分多い方が良いよね」


 小さな手でカップを胸に抱きしめる。


「血は痛いし……ココアは甘いし……

 寂しさ、ちょっとだけごまかせるし」


 すぅ……と、ひと呼吸。


「甘い方が、誰かと分けられるから」


 こてんと首を傾け、ふっと笑った。


「……よし、砂糖増やしとこ!」


 ざらっ、と砂糖を足した。


 たらり──。

 とろりとしたココアが、魔導書の上に落ちる。


「ほら! 全然バレない! セーフセーフ!!」


「あ、マシュマロ忘れた……ま、いっかぁ」


「……見ててね。私、ちゃんとできるから。」


 ──その直後。


 足元の魔法陣が、バチバチと明滅し始めた。


「ぎゃあ!? やっぱバレた!?」


 ココアの染みがみるみる広がり、不吉な紋様に変わっていく。


「や、やばっ! でももう止まらない! やるしかない!」


 エストは必死で呪文を唱え始める。


「異界より来たりし魂……我に忠誓を誓わん!」


挿絵(By みてみん)


「……あれ、ちょっと待って!!」


「忠誠と忠誓どっち!?」


 床に刻まれた魔法陣が、青白い光を強めた。

 空間に、ぱきん、と亀裂が走った。


「来て……お願い! 私のそばに……!」


 エストは両手を天に向けて広げる。


 ──バシュウゥゥンッ!!


 ……だが、次に訪れたのは沈黙だった。


「……え?……何も、出てこない?」


 首をかしげて身を乗り出した、その瞬間──



──【サクラ:落下中(吸い込まれ中)】──


(……なんかいい匂いする……?)


 落下しながら、私の鼻が何かを捉えた。


(てかココアじゃん。なんでココア?)


(なんか光ってる!? あれ穴!?

 吸い込まれてるぅうう!? ココアの匂いの方に!?)


「よ、よし!五点着地か!?」


「い、今なんだな!? 耐えてくれよぉ!! 私のオデコぉ!!」

 

(左足・右足・右手・左手・オデコ!)


「確認よし!知らんけどいける!!」


 私はオデコをコツンと叩いた。


「頼むぞぉ!!」


《天の声:いけねーよ》


挿絵(By みてみん)


──【エスト:召喚中(混乱中)】──


 ピシ。ピシピシピシ……。


 頭上の天井に、細かなひびが走った。


 ドサァァァァン!!!


 轟音とともに天井が崩れ落ち、

 その中から何かが落下してきた。


 ……ポヨン。


 半透明の塊が床に着地して跳ねた。

 ゼリーみたいにぷるん、と震え、

 黒髪ロングの人型の影がぐにゃりと揺れる。


 掴もうとしてすり抜け、尻もちをついた。


「いたいっ!!

 魂!? なんで天井から!?コントかよぉ!?」


 魂は床でボヨーンと跳ねている。


 その時だった。


 床で跳ねていた魂が、急に方向を変えた。

 マグカップの方へ、猛スピードで突っ込んでいく。


「えっ!? そっちは──」


 ガシャン!!


 ドバァッ!!


 中身のココアが、魔法陣一面にぶちまけられた。

 そして魂は、満足げにココアの海へダイブした。


「うわぁああああ!? 飲んだ!?

 今ココア飲みに行ったよね!?

 なんで!? 喉乾いてたの!?」


 神聖な儀式が、ただのティータイムに堕ちた。


 *


 ココアまみれの魂は、ぴたりと止まった。

 ふわりと、甘い匂いだけが広がった。


「……止まった……?

 ココアで……くっついた……?」


 エストは目を瞬かせる。


 光の渦の中心で、

 黒髪の女性の魂がゆらゆらと浮かんでいた。


「わぁ……綺麗……」


 でも見ていると、胸が少し痛くなった。

 白い光と黒い影が、ぐるぐる混ざっている。


「……寂しそう」


 胸がきゅっと締め付けられた。


 そのとき、魂がぐらりと揺れた。

 ココアまみれで形が歪み始めている。


「ダメッ! 消えちゃう!」


 エストは慌てて両手を差し出し、

 自分の魔力を魂へと流し込んだ。


「わ、私の魔力をあげる! だから消えないで!」


 魔力を込めるたび、

 魂の輪郭が少しずつくっきりしていく。


 それでも足りない。足元がふらつく。


「も! もっと……もっと強くッ!」


 ──メキメキ……と音がして、立派なツノが生えた。


「あ、やば。魔力込めすぎた……」


「……なんか生えた……」


「……進化した?」


 冷や汗をかいた。でも止まらない。


「……ま、いっか! 強い方がいいよね! オシャレだし!」


 とうとう膝をついた。

 それでも両手だけは、まっすぐ魔法陣へ向けたまま離さない。


 ──バシュゥゥン!!


 ドサッ。


 長い黒髪の女性が、石床に倒れ込んだ。

 浅い呼吸が、かすかに胸を上下させる。


「……やった……」


 声が震えた。


 エストはふらつきながら近づき、そっとその手を取る。

 冷たい。

 けれど、指先の奥だけが、ほんの少しだけ生きている。


「……家族……」


 言った瞬間、喉がきゅっと痛くなった。


 召喚陣の上には、ココア色の染み。

 甘い匂いが、冷たい部屋の空気をやさしく塗り替えていく。


「……ココアで召喚とか……バカだよね」


 エストは少し笑った。


「……でも、誰かにバカって言われたら……

 ありがとう、って返すの」


「だって……私を見つけてくれたってことだから」


 サクラの手を、ぎゅっと握る。


「私、ちゃんと見つけたよ。あなたを」


 エストのまぶたが、重く落ちていく。

 魔力を使い切った体が、もう言うことを聞かない。


 眠りに落ちる直前、ひとことだけ呟いた。


「……家族に……なってね」


 ふたりはココアの匂いの中で、静かに倒れた。



 *



 ──しばらくして、サクラの寝言が響いた。


「……カルビ……タレで……」


「……あとココア……」


「……あ、ネギ塩も捨てがたい……」



《天の声:ココア召喚は前代未聞だな》



(つづく)



◇◇◇


──【エスト理論:バカの相対性】──


「バカって言われたら、ありがとうって返すの。

 だってそれ、私を見つけてくれた証拠だから」


解説:

世界は、気づかれた瞬間に輪郭を持つ。

「バカ」と呼ばれるのは、ちゃんと声が返ってきたということ。

ひとりの部屋では、バカも天才も同じ沈黙だ。


恥ずかしさは、生きている証明書。

ただし、魔導書にココアを垂らすのは本当にバカ。


◇◇◇


──


──あとがき(読み飛ばし可)──


★超おまけ★

サクラの見てる夢(*本編とは無関係)


──


《天の声》

“恥ずか死” の初ケースとして、特別に女子限定ガチャ許可!

さぁ引け!そして生まれ変われ!


════════════════════

▼転生対象の超・異種族祭り限定種族


☆UR:ヴァンパイア Hカップ (4.999%) ← 確率UP!!

SSR:人魚 / Gカップ (10%)

KS:鬼 / Aカップ(0.001%) ← NEW!!

 *KS=KUSA。引いたら草。以上。


もちろん!人魚/アラクネ/ラミア等の人気種族も多数排出!


挿絵(By みてみん)

[#鬼だけ異物感MAX #やべーの居る #右www]


《免責:転生後の苦情はAIが既読無視します》

《注意:読者の皆様も、ガチャは計画的に》

════════════════════


ガチャのバナー画像を見ると、優雅な美人種族たちの横で、ひときわ異質なマッスルな鬼が仁王立ちしている。


「……。」(一度見)


「は?」(二度見)


「女子キャラ限定……?」(三度見)


「マッスル鬼の存在感が異常!!」(四度見)



《天の声》

では、ガチャを回そう。


「待て!鬼がフラグにしか見えない!!」



《天の声》

レッツ!異世界ライフッ!!


\\ ♪ ぐるるるーん!どん ♪ //(*ガチャ開始)


「おい!私、引いてないぞ!?」



《ガチャ演出中……》


\\ドガァン!//【★★★★★確定演出★★★★★】

『天空に舞い踊る女神たち、黄金に輝く竜にまたがるヴァンパイア──!』

『選ばれし魂よ、新たなる運命の扉が今、開かれる!』(虹テロップ)


挿絵(By みてみん)

[#確定演出 #こんにちは巨乳]


「なんか凄い演出きたー!憧れの巨乳ライフ確定ィ!!」

(大当たりと見るや即ノリノリ。これが汚れた大人。)


──しかし。


パッ!


突然、背景が草原に変化


「あれ……草原?」


挿絵(By みてみん)

[#唐突な草原 #嫌な予感]





スゥ……(神々しいSE)


“段ボール箱” が神々しく降りてくる。


「神々しい段ボール!?」


挿絵(By みてみん)

[#神々しい段ボールというパワーワード]





“段ボール箱” が草原に静かに着地。


(……沈黙)


私は草原に佇む段ボール箱を見つめる。


「……。」(ゴクリ)


挿絵(By みてみん)

[#落ち着け #ここまではURある #諦めるな]





段ボール箱から──


……ツノが出た。


      \\ ニュッ。 //

挿絵(By みてみん)

[#ツノ出てんぞ #URはない #諦めろ]


…… 一瞬の静寂。


心臓が嫌なほど早く打つ。



段ボールから、マッスル鬼が生えた。


      \\マッスルッ!//

挿絵(By みてみん)

[#鬼引き #さようなら巨乳 #こんにちは筋肉]


「…………。」


視界の端で、さっきまでの虹色がゆっくり色を失っていく。


終わったの?

私の人生、二周目が始まる前に終わったの?



《天の声》

おめでとう!KS 鬼(Aカップ)0.001% を見事に引いたな!


「……へぇ?あの身体がどうやって段ボール箱に?」(天井の蜘蛛を見つめる私)


「…………」(震える手で髪の毛を一本つまみ、枝毛を発見)


「四つ葉の枝毛発見……ふふ……幸せの予感?」(現実逃避)


(深呼吸)


「……って鬼かよぉ!?私、あのマッスル鬼みたいになるの?」



《天の声》

文字通り “鬼引き” ワロタwww


「笑ってんじゃねぇぇぇ!!」

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ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
今回もめちゃくちゃ笑いました! 異世界転生の開幕が落下で、しかも五点着地にオデコを含めるサクラの発想がもう最高です(笑)でも、エストが血の代わりにココアを使う理由が「痛いのが嫌」だけじゃなくて、「甘い…
なぁ。サクラの前世って博多?
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