24-2 学院のクラスメイト達と話したことは
「おはようございますぴょん、レンガ様。
今日もお元気そうぴょんね!」
学院について。メリーダ様と並んでクラスにはいると。
リンザ様が走り寄ってきて、そんなことを仰った。
意訳すると『なぜ死んでない?』といったところでしょうか?
「おかげさまで」
私はいくらかの皮肉を込めて、そんなふうにだけ返す。
「あ、レンガ様の髪の毛、後ろの方になにかついてるぴょん?」
リンザ様はお構いなしにそう言いながら、私の頭を抱くように手を伸ばす。
身体を下げて逃げようとした私より先に、耳元に迫った彼女の口が囁いた。
「貴女は大丈夫でも、他の人は大丈夫かしら?
たとえば、昨日学院を案内してくれたみんなや、いま貴女の隣りにいるその娘、とかね?」
私の動きは、止まる。
「今日、私と貴女は剣を交える。
理由は、適当に考えてほしいわ。
いいわね?」
そして、離れる彼女の身体。
「なーんだ、髪の毛を丸めてあっただけだった、ぴょん!」
恥ずかしそうに笑うリンザ様をみて、笑い顔を浮かべるクラスメイト。
私も笑顔を顔に貼り付けつつ、どうしていいか考えるけれど、全然考えがまとまらない。
でもその横で、こっそり視線を交わすいくつかの顔があった。
昼休み。
「レンガ様、ちょっといいかしら?」
アジィ様が有無を言わせずに私を連れ立って、教室を出る。
何人かがその後に続いた。
事務棟の中にある会議室。
どこからか鍵を取り出して扉を開けたアジィ様は、2人が扉の前に残ったほかは全員が中にはいったのを確認して、扉を閉め鍵をかける。
「さて。
皆様はもうお気づきかと思うけれど、レンガ様は今トラブルに巻き込まれ、危うい状況にあります。
詳細がお伝えできないのも理解をいただけると思うけれど、相手はかなり荒事が得意です。
いきなり大事にすることは避けているようだけれど、いま私達は潜在的な人質状態にあるといえるわ」
アジィ様はいきなりそんなことを言い出して、私はついていけずに眼を白黒するばかりだ。
でも、一緒にいる皆様は、そのとおりとばかりに首を縦に振っている。
「もちろん、レンガ様のために協力を惜しむような人はいないわよね?」
アジィ様はそういって皆様の顔を見回すと、最後に私を見て仰った。
「さあ、レンガ様。
『敵』の要求は、なんです?」
『敵』って。
実際間違ってないかも知れませんが、そんな言い方は良いんでしょうか?
戸惑いつつ私が周りを見回すと、みんながじっと私に注目していて。
むこうでメリーダ様が小さく頷いたから、私は朝のことを話すことにした。
「それは、手合わせ中の事故に見せかけて暗殺する気じゃないですか?」
「常套手段ですね」
「受けちゃ、ダメです!」
「でも、それなら私達は自分で身を守らないと」
「すぐに方法を考えましょう」
皆が話し始めたところで。
「でも、レンガ様ご本人だけではなく、アメジスト様やエメラルド様が脅迫を許す、一筋縄ではいかない『敵』です。
私達が精一杯挑んでも、隙があって食い破られれば、なによりもレンガ様のご迷惑になります。
ここは、為す術なく従っているように見せかけて、どこかで逆に『敵』を仕留め、後顧の憂いを断つべきではないでしょうか?」
思った以上に攻撃的な意見が出された。
え?ヒスイ様って、こんな方だったんですか?
「そうね。
手合わせの事故で命を失う恐れがあるのは『敵』も同じ。
では、どうやって『敵』を倒せばよいか、考えましょう」
アジィ様がそう仰ると、すこしメリーダ様と目を合わされて、あとをメリーダ様が続けられる。
「レンガ様の敵は、それこそ騎士数人では打ち取れない相手。
それを踏まえて、皆様の知恵をお借りしたいわ」
そして、忘れられない会議が始まった。
「まず、事前に服用できる解毒剤を全員で使っておきましょう。
授業が終わるまでに手配して配ることができると思います」
「アカデミーや神殿に騎士様も、それぞれ『然るべき』伝手を使ってご相談しましょう。
きっと、良い知恵をいただけるかと思います」
「それは、素敵ですわね。
では、当家の執事たちにも申し伝えましょう」
「良いお考えですわ。
わたくしも、宮中の知り合いに話してみましょう」
「とりあえず、皆で『加護』を受けて強化をしてもらってはどうでしょうか?」
「『敵』に迫るその時までは『為す術なく』振る舞って、少しでも油断をさせたほうが良いのでは。
『敵』の武力は既に私達の間近です。全面戦争になってしまうと、ますます私達がレンガ様の足を引っ張ってしまうんじゃないでしょうか」
「密かに行うのであれば、こちらから毒を用いては?
いま持参している秘伝のものを提供しても構いません」
「昨日回収しておいた『敵』の『毛』は、人のものではないようでした。
人が相手なら確実でも、この『敵』では仕留め損ねる恐れがあると思います。
手負いの『敵』がレンガ様に噛み付くようなことがあるのは、許されません」
「ああ、なるほど。
騎士数人分といえる力に、人ではない毛。
相手はあそこですか。
それでは、少し手を伸ばして、あちらの手で処分させてみませんか?」
「国王たちが来るのは、たしか明後日。
少し時間が足りませんね」
いろいろな意見が出て、いろいろな理由が並べられ、いろいろな案が却下されて。
私は、ただそれを見守るしかなく。
……学院生って、凄いですね。
そうしてまとまった策を持って、私はリンザ様の誘いに乗ったのだった。
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