23-2 突然来た留学生
「今日は、留学生を紹介します」
メリーダ様と学院にいくと。
いきなり、そんな紹介があった。
長身でかなりしっかりした体格の、20台半ばくらいの女性だ。
きっと、何かの運動を習慣にしているに違いありません。
……たとえば、剣を振るとか。
ちらりと隣の席のメリーダ様を見ると、何やら考えておられるみたいだ。
「はじめまして、リンザっていいます!
みんな、よろしくぴょん♪」
留学生の自己紹介に、一瞬でクラスメイト全員が引いたのがわかった。
いや、歳を考える前に、さらに考えることがあるんじゃないですかね!?
突然の転校生だけでも怪しいのに、その逞しいからだとか、そのキャラ付けとか、どこから突っ込んでいいのかわかりませんよ!
っていうか、むしろ突っ込んだら負けなんじゃ……
こうやって、追及をかわす、高度な戦術なんでしょうか?
呆れるを通り越して、感心してしまう私だった。
「あのぅ、学院を案内して欲しいぴょん!」
お昼休み。私はリンザ様にいきなり迫られていた。
「ねえねぇ。ぜひ、お願いするぴょん!」
絶句して固まる私に、リンザ様の追求が容赦ない。
「それでは、有志の皆でご案内しますわ。
案内に漏れなどあっては、申し訳ありませんし」
私が内心冷や汗を流しながら焦っていると。
アジィ様が立ち上がって、助け舟を出してくださった。
「ええ、ぜひご案内させていただくわ」
「よろしければ、わたくしも」
「はい、私も」
「私も」
いつの間にやら、10人弱が集まった。
あれ、ヒスイ様も案内役されるんですか?
メリーダ様は、教室に残るみたいですね。
「ここが教室棟。活動の基本になる通常教室と、特別な授業で使う特殊教室があります」
「ここが校庭。運動の他に、小路を散策もできるわ。
でも、あちらの方は男子部の敷地になるから、立ち入らないように」
「ここが、事務棟。
先生方の職員室や、販売部があるわ。
制服のクリーニングなんかのサービスも、ここね」
「あちらにみえるのが、剣術修練場や魔術試験場ね。
授業で使うこともあるし、申請して時間で借りて使うこともできるわ」
「こちらが……」
アジィ様の案内が、テキパキと続く。
意外と、私も知らずにいたことがありました。勉強になります。
でもこれなら、ヘンに隙を見せることもなさそう……
などと、一緒に歩いていたら。
ガサッ!
みんなが建物の角を曲がっていった直後。
最後尾をついて歩いていた私は、植え込みの奥に押し倒された。
驚いて叫ぼうとした私の口の中に、リンザ様の指が入ってきて、声が出せない。
「ふふ。油断し過ぎよ、お嬢さん?」
両手を持ち上げられ、リンザ様の右手で地面に固定される。
足は膝近くをリンザ様の足で押さえられて、身動きがとれない。
暴れようともがくけれど、身体はモゾモゾ動くものの、リンザ様の拘束から全然逃れられなくて。
「ふふ、そんなに可愛い顔で誘わないで。
ヘンな気分になっちゃうわ?」
リンザ様の指が、口の中で私の舌に絡んで、気持ち悪い。
私の足を抑えるリンザ様の足が、次第に上の方に上がってきて、いまは太股の上だ。
これで、どうして足が動かないんですか!
「へぇ。下着は、もう少しお洒落してもいいと思うわよ?」
なに、みてるんです!
一気に顔が熱くなる。
必死に身体をよじるけれど、手足はろくに動かず、リンザ様の身体は私の上に乗ったままだ。
「ふぅん。胸を揺らして誘うのは上手なのに、体を動かすのはそんなに得意じゃないの?
それじゃ、私が教えてあげようかしら」
耳元でそう囁かれ、そのまま耳たぶを軽くしゃぶられる。
背筋がゾクリとして、思わず身体が硬直した。
わ、私だって、人並み以上に体術は使えますよ!?
……もしかして、私すごくピンチなのでは?
「そんな目で、私を見ないで。
我慢できなくなっちゃうわ?」
私の前に来たリンザ様の眼が、じっと見つめてきている。
私の口の中に入れられていたリンザ様の右手は、いつの間にか私の胸の上でうごめいて。
リンザ様の顔が近づいてきて、これはマズいと思ったとき……
目の前のリンザ様の動きが止まり、世界がモノトーンに変わる。
「ご主人様、経口で毒を盛られました。
遅効性のもので、このままだと夜半頃に死亡します。
どのように処置しましょう?」
「毒、ですか!?
『ヤキトリ』、助かりました」
私は停止した時の中で、少し考えて。
「毒は、すぐに対処しなければマズいですか?」
「いえ、ご主人様が死ぬ前でしたら、如何様にも対応できます」
「それなら。
今は、あえて毒はそのままで。
とりあえず、この場を脱出しましょう。
『ヤキトリ』、力を貸してください。
そして、あとのことは『研究会』で、シリル様や皆様に相談したいと思います」
「承知いたしました」
私の言葉に、平服するヤキトリ。
そして再び時が動き出すと。
『ヤキトリ』の魔力も使った強化で、力ずくで押し返そうとしたのだけれど。
ガシャン!
その直前に、近くで何かの割れる音がして。
「レンガ様、リンザ様、なにをしてらっしゃるの!?」
アジィ様が建物の向こうから現れ、私達を見て詰問される。
「レンガ様が転んじゃったから、助けようとしてたぴょん♪」
リンザ様は元の雰囲気に戻って立ち上がり、私に手を伸ばすけれど。
「大丈夫です、1人で起きれます」
私は自分で起き上がると、制服を払う。
「まだ紹介をしていなかったのは、どこだったかしら?」
そのあと、私とリンザ様は案内役のクラスメイトに囲まれて、まるで護送されるような形で案内を終えて。
そして、もう一波乱あるんじゃないかと緊張していたのだけれど、午後の授業は何事もなく終わったのだった。
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