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22-2 一時避難

2023年1月22日-誤字修正。

 制服を着て、家を出、学院に着くと。


 授業の始まる前。

「一昨日、旧市街で暴漢が出たという事件があったそうです。

 計画性のある犯行で、魔法を使い、何者かと争った形跡もあるとか。

 各自十分気をつけて、日没後の外出などは極力控えてください」

 そんな連絡が回される。


 ああ、一昨日なら、あいつらのことでしょうね。

 聖都の旧市街は治安もいいですし、魔法を使った戦闘なんてそもそも滅多にあるものじゃありません。

 これで警備も強化されるでしょうし、再び襲われる心配はあまりないと思いますけれど。

 でも、私のことをヘンに探られたら嫌ですね。

 こちらも、厄介なことになってしまったかもしれません。


 ふと気がつくと、アジィ様とメリーダ様の視線を感じた。

 ?

 見返すと、いちどお2人は視線を交わしたあと、私に笑顔を向けてくださった。

 なんだろう?

 私の脳裏にはなぜか『蛇に睨まれた蛙』という言葉が浮かんでいた。


「レンガ様は、何をご存知なのですか?」

 お昼時間、私はアジィ様とメリーダ様に連れられて、食堂の『秘密の話ができる席』へと来ていた。

 私達の前には美味しそうなランチが置いてあるが、残念ながらそれを食べる雰囲気ではない。

 アジィ様がじっと私の目を見て問いかければ、メリーダ様も真剣な顔でこちらを見る。


 どうしてわかったんでしょう?

 でも、渡りに船ですね。

 だから、私は暴漢たちの風体と、襲われていた女性を助けたこと、そして助けた女性から聞いた話を伝えた。


「レクトの魔導騎士、ですね」

 メリーダ様が断言する。

「人ではない眼に口、3本目の腕。

 人間に動物や魔物のそれを混ぜたのでしょう」

 なるほど。

 あれがレクトの魔導騎士、そうなると助けた彼女はレクト貴族ですか。

 でも、前に話は聞いていたけれど、実際に見て戦ってみればその恐ろしさがわかりました。

 あれは、たしかに日輪騎士10人と渡り合えると言われて、納得ですよ。


「レンガ様は、大丈夫だったのですか?」

「おかげさまで。なんとか逃げることができました」

「お体に異常は?」

「もう、大丈夫ですよ」

 アジィ様がずいぶん私の身体を心配してくれている。

『ヤキトリ』がどうにかなってしまわないかと気にしてくれているのかもしれない。

 そういえば、まだきちんとお話していませんでした。

 近いうちに『ヤキトリ』と仲良くなったことを、お伝えしないといけませんね。


「こんなことをするのは、工作を担当する部署のはず。

 それなら、たぶんあちらは『なかったこと』にしたがるでしょうね」

「目撃者がいたら、狙われますね?」

「間違いなく」

 メリーダ様、アジィ様、メリーダ様と、顔を合わせながら順にそういえば、同時に私の方を向いて。

「レンガ様が、危ないわ」

「アルバイトは、少しお休みするべきね」

「その助けた女性と一緒に、どこかに避難する必要があるでしょう」

 こんどはアジィ様、メリーダ様、アジィ様の順でそう結論を出されて。


 そしてまた一瞬目線を交わすと。

「レンガ様、その女性を連れて私の屋敷にいらっしゃいませんか?」

 アジィ様がそういえば、

「そうですね」

 メリーダ様も頷いて、続ける。

「私の屋敷でも構いません。

 エビナーの家は1度訪ねていただいてますし、そのほうが気楽ではないかしら?」

「グリシーヌ家なら……」

「それに、サファイア様もお話したいと仰っていたし。

 お招きすることもできるわ」

「……」

 どうやら、私はメリーダ様のお屋敷に行くことになりそうな気配なのだけれど。


「えーと、私は今の家にいたいのですけれど……」

「それは、だめです」

「それは、危ないわ」

 いちおう希望を述べてみたけれど、お2人に取り付くシマもなく却下された。


「レンガ様は、今ご自身の置かれた立場をもう少し理解するべきね」

 メリーダ様はそう言うと、飲み物を一口される。

「他国の貴族を匿っているだけでも普通じゃないのよ。

 場合によってはレンガ様もその女性も、潜入工作の証言者だし」

 入れ替わるように、アジィ様が仰るには、

「ふつう外交上は知らぬ存ぜぬで表向き認められることはないでしょうけれど。

 ただでさえ交渉の上での影響力は少なくないうえに、今回は外交問題そのものになることだって考えられるわ。

 レンガ様やその女性がレクトの何者かに危害をくわえられなくても、身内の聖王国に証言者として囲い込まれないとも限らない」

 そして、小声になると、

「……レンガ様にも、いろいろ人に言いにくいこともあると思うし、それは良くないと思うの」

 アジィ様が、それとなく『ヤキトリ』のことを知られてはマズいと仄めかす。

「今度レクトの使節が来訪するの。

 それが去って一息つくくらいまでは、どうぞ我が家に滞在なさって」

 私達の安全だけではなく、国の外交の話にもなる。

 そういわれて、私はメリーダ様の言葉に頷くしかなかった。


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