20-3 研究会に『ヤキトリ』をだしてみたこと
「……というわけで、『ヤキトリ』と仲良くなれました」
私は、揃っていた5人のみなさんに、昨日の経緯を報告する。
「随分強くなられたようでしたけれど、そういうわけですか」
ミズナ様が仰れば、
「つまり、レンガ様はとりあえず不死鳥を『扱える』ようになったわけね」
そうとも言えますか。ミイツ様の言葉に納得し。
「でも、魔力制御の練習は、続けるべきだわ」
シリル様が確認され、
「私は、いちどその『ヤキトリ』さんに会ってみたいな」
ラー様がそんなことを言い出して、
「じゃあ。レンガちゃん、いちどここに呼んでよ」
ユーリ様がそう指示をされたので。
「『ヤキトリ』、ここに出てこれますか?」
そう呼びかけてみると、
炎が巻き上がり渦を巻いたと思ったら、私の前に『ヤキトリ』の姿があった。
黒い髪を後ろで一本にくくり、朱い服を着ているのは、いつも私の頭の中で会う姿と同じだ。
「ご主人さま、お呼びですか?」
『ヤキトリ』は、私に向かって平伏する。
「こちらの皆さまが、いちど会いたいと仰るので。
みなさん、私がとてもお世話になっている方々です」
私は『ヤキトリ』に研究会の方々の方を示す。
立ち上がり、そちらに向き直る『ヤキトリ』に。
「はじめまして。
君が『ヤキトリ』さん?
私はラー。
よろしくね!」
ラー様が口火を切って挨拶。
ずいぶんと気安い感じだ。
「すごい魔力ですね。
私はミズナ。
以後、お見知りおき願います」
ミズナ様の挨拶は、丁寧でそつがない。
「ここが魔術試験場で、いろいろと良かったわね。
ミイツっていうわ。
仲良く、させてね?」
笑顔のミイツ様だけど、私はどこか落ち着かない感じがした。
「シリルよ」
シリル様は、名前を言うだけ。素っ気ない。
「私はユーリ。
『ヤキトリ』さんとは、初めてね?
運命神『オリヒメ』の友人をしてるわ」
『巫女』ということを仰りたいのだろう。
「『ヤキトリ』です。
ご主人さまがお世話になっております」
ヤキトリは、皆の前で平伏した。わずかに、身体が震えているように見える。
「私になにか御用でしょうか?」
「そんなに、畏まらなくても良いのよ?
どうぞ、立って」
ユーリ様の言葉に、『ヤキトリ』が立ち上がる。
でも、その足はガタガタ・フラフラとしており、いつもの様子ではない。
「大丈夫ですか?」
私はヤキトリを隣から支える。
「ユーリが、いけないのよ。
死と再生を本質とする不死鳥は、運命の輪の一鎖。
その名乗りでは、萎縮するなという方が無理ね」
シリル様の指摘に。なるほど、『ヤキトリ』は神殿の神様の影響下にあるのかと思った。
「ですが、不死鳥は私たちと異なる世界に住むといいます。
異界に生きるあなたが、どうして現世に現れたのですか?」
「実は。はっきりとした記憶が、ないのです。
ただ、なにかに呼ばれたような気がして、気がついたらこちらに。
そして偶然通りかかった泉で、ご主人さまと出会いました」
「そういえば、最近商路の途中で強力な魔物と遭遇する例を聞くね。
それも、大型魔獣や竜種みたいな、個体で強力なやつだ。
『ヤキトリ』さんの話じゃなけれど、もしかして『呼ばれた』のかな?」
「なるほど。聖都周辺でも、レンガ様の水竜と不死鳥で既に2件。
客観的に見れば、この頻度は異常ですね。
他の地域の状況もいちど確認してみます」
ミズナ様の問いにヤキトリが答え、ラー様とミイツ様が続いた。
「それで、ヤッキーの力は、どのくらい使えるのかな?」
ユーリ様、ヤッキーって『ヤキトリ』のことですか?
酷い呼び方ですよ。鳥の面影もないです。
ほら、『ヤキトリ』も、唖然としてますよ。
「ねえ、ねぇ。『死者再生』くらい、できるの?」
そんなことできるわけが……
「今のご主人さまと私では、不可能です」
ほら。
……ん?
『今の』ということは、できるようになれるってことですか?
「『ヤキトリ』が魔力制御を負担するのではなく、レンガ様が魔力を制御して不死鳥の力をきちんと『扱え』ば、充分可能。
というかんじなのでしょうか」
「不死鳥の姿で現れることは、できないのかな?
羽根の一枚でももらえるのなら、ものすごい商材になるんだけれども。
伝承では、それこそ死者再生もできると聞くしね」
「私本来の姿がどのような力を有するかは存じませんが。
いまはレンガ様のお身体を参考にこの身の姿となるか、魔力となってレンガ様の身体の周りに侍るか、くらいしか難しいのではないかと思います」
ミズナ様の発言にラー様が言うと、『ヤキトリ』はそう答えた。
「ま、いずれにせよ、レンガちゃんの魔力制御の訓練は、継続かな。
あと、みっちゃん?」
「はいはい。
この話は、『内緒話』ですね?」
ユーリ様の言葉にミイツ様は笑顔でうなずいたけれど、一瞬心の底が冷えた気がした。
それは、『ヤキトリ』の炎でも、温まらないように感じるほどに。
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